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ビール臭い歴史上の偉人は人間臭い

ニュースイッチ 8月25日(木)14時50分配信

端田晶サッポロビールエビスビール記念館館長に聞く

 ―本を書いたきっかけは。
 「サッポロビールで広報を担当するかたわら、エビスビール記念館の館長を約10年勤め、ビール愛好家からいろんな質問を受けた。そこで感じたのが『ビールのことを分かっているようで、実は分かっていない』ことだった。2013年からサッポロが始めたビール検定の仕事もするようになり、本格的にビールの歴史を調べた。本書でビールに興味を持ち、おいしく飲んでもらえたら幸いだ」

 ―日本麦酒社長の馬越恭平をはじめ、渋沢栄一や大倉喜八郎、三菱財閥の岩崎久弥ら経済界の偉人が続々と登場します。
 「歴史上の偉人も“酒”がからむと妙に人間臭い。それがまた、ビールの歴史の面白さでもある。ビールはあくまで商品であり飲料だが、設備投資など業界を動かすのは“人間”だ。ビール会社の社長たちは総じてバイタリティーにあふれ、夢があった。時代のなせる業かも知れないが、今の日本企業の経営者には彼らのようなタイプは少ない」

 ―馬越社長が、現在の世界トップ企業の前身であるアンハイザー・ブッシュの社長と会話する場面も出てきますね。
 「麦芽、ホップだけが原料のドイツビールと違い、日本がビールにコメを入れたのは、やはり原料安定調達の問題があったと思う。敗戦によりすべて白紙になったが、戦前の大日本麦酒は海外に約20カ所の工場があった。第1次大戦時、ドイツ領だった中国の青島ビール、韓国のハイトビールなどはこの流れをくむものだ」

 ―一方で、ビール会社が設備投資を競ったのは、ほぼ全部が淡色のピルスナータイプビール。最近はエールなど個性的な味のクラフトビールが若者に人気ですが、国内ビールの競争がピルスナーの競争だけで“味”や“製法”の競争に進まなかったのは、やや違和感もあります。
 「それも確かにあるが、ビールの世界は基本的に装置産業。同じものを大量に作り、スケールメリットで価格を下げれば消費者がさらに増える。その意味で戦前の設備投資競争は高嶺の花だったビールの価格を下げ、大衆商品に育てた功績面もあるのではないか。価格が下がらなければ、ビールがこのように日本人に普及することもなかっただろう」

 ―ビールの消費量はここ20年近く、減少トレンドが続いています。若者や女性が甘口の缶チューハイやワインに流れているとの指摘もありますが、海外では1人当たりの消費量が伸びている国も多い。これをどう考えますか。
 「最近のクラフトビール人気で、流れに多少、変化が出始めたと感じる。一般商品のビールは中高年ユーザーに偏っており、消費量が年々減少しているのは事実だが、クラフトビールはいろいろな年代の人が飲んでいる。若者ばかりではない。ビールについて、いろいろな品種や味があるんだということを熱心に勉強し、海外にも出かけて学ぶという人も増えてきた。これらの結果や成果はこの先、必ず出てこよう。その意味では国内ビール市場の将来に、悲観はしていない」
(聞き手=嶋田歩)
※著書『大日本麦酒の誕生』(雷鳥社)
 
【略歴】
端田晶氏(はしだ・あきら)サッポロビール エビスビール記念館館長。80年(昭55)慶大法学部卒、サッポロビール入社。本社ビール営業部、宣伝部などを経て96年広報部担当部長、00年広報・IR室長、04年恵比寿麦酒記念館館長、13年日本ビール文化研究会理事、14年エビスビール記念館館長。東京都出身、60歳。

最終更新:8月25日(木)14時50分

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