ここから本文です

新入社員の“コミュ力”、どう鍛えればいい?

ITmedia エンタープライズ 8月26日(金)8時13分配信

●連載:女子ヘルプデスク今昔物語

今年もウチの会社に新入社員がやってきた。LINEで遅刻の連絡するなんて時代が変わったわね――なんて思っていたら、彼らの研修をすることになってしまったのだった……。実際に登壇してみると、いろいろなトラブルが……(エピソードは全て実話です)。若者とのジェネレーションギャップに耐えきれるのか? どうなるわたし!

==

わたし: 皆さん、おはようございます。今日からはコミュニケーション研修です。

 朝から張り切って新入社員たちにあいさつをする。なんせ、今日はコミュニケーション研修。私から率先して“良いコミュニケーション”の見本を見せなきゃ。新入社員たちは、講師や先輩社員たちを意外と(?)冷静に見ている。

 そして、指導された内容を講師や先輩たちが実践していないと、「なんだ、結局しなくてもいいんだ」と思ってしまう。先輩たちがやってないのだから、自分たちもやらなくていい、というロジックだ。

 「最近の若い連中は、ロクにあいさつもできない」とお嘆きの方々、あなたは元気で明るいあいさつができていますか? そんなの恥ずかしくてできっこない、と思っているなら、あなたの後輩や部下は、いつまでたっても元気で明るいあいさつなんてできるわけがないのよ……って、ああ脱線しちゃった。研修に集中しなくちゃ。“なんちゃって講師”はいつだって、ぎりぎりのスキルで何とか登壇しているんだから。

わたし: それでは、なぜコミュニケーションが必要なのか、ちょっとみんなで考えてみて。

 私は新入社員にこう問いかけてみた。「良好なコミュニケーション」についての自分なりの解釈はあるものの、それが本当に正しいのか、今一つ自信が持てないのよね。そんな状態で講師なんかしていいのか? まずは「なぜコミュニケーションをとる必要があるのか」をまとめて、その間に考えよう。ああ、綱渡り……。

●良好なコミュニケーションって?

 私の本業であるヘルプデスク業務にとって、一番必要とされるスキルは「顔が見えない電話口の相手との、良好なコミュニケーション」だ。ヘルプデスクに電話してくる人たちは、大抵トラブルや分からないことを目の前にして、不安だったり焦っていたりする。中にはどうしてこんなことになったのか、という怒りをぶつけてくる人もいる。

 そんな人たちを相手に、トラブル内容を具体的に聞き出し、満足な状態になるようにトラブルを解決しなければならない。こうしたテクニックは経験と慣れだけで身につくものではないから、私自身、何度かコミュニケーションに関する研修を受けているのだ。

 ただ、コミュニケーションはとっても奥が深い。講師の話を理解するのと、自分が講師として話すのとでは全く違うし、自分が実践できるからといって、そのテクニックを体系化して教えられるわけでもない。最近は就職活動でも、対人コミュニケーション能力、略して「コミュ力」なんて言われているようだけど、ちゃんとした説明って実はあんまりないのよね。実際。

●コミュニケーションの本質はどこにある?

新入社員A: 仕事をするために必要だから。

わたし: そうそう。そうだね。

 なぜコミュニケーションが必要なのか――新入社員から出てきた意見をホワイトボードに書き込んでいく。

わたし: 他には?

新入社員B: 報告とか情報を伝えるのが大切だから。

わたし: うんうん。それも大切ね。ほかには?

新入社員C: んー。分からないんですけど、情報共有以外に何かあるんですか?

わたし: どうだろう。情報共有以外にコミュニケーションが必要な理由があるかどうか、確認のためにもみんなに聞いてみています。もうちょっと考えてみて。

 このほかに新入社員からは、「問題があるかどうかを報告するため」とか「上司から的確な指示を仰ぐため」といった意見が出てきた。別に間違いではないのだけれど、何かこう……大事なことが抜けている気がする。

 でも、私自身も明確な答えを出せる状態ではなく、新入社員を良くも悪くも「誘導」することはできなかった。本当は「なぜ、コミュニケーションを取るのか」という本質をもっと考えて欲しかったんだけど、うまくヒントを出すこともできない。そうこうしているうちに、彼らから意見が出なくなった。

わたし: みんなが今、ここに出してくれた意見は「情報を伝える」あるいは「知ってもらう」ことが中心よね? これ以外に、相手が持っている情報を「知る」ということも大切だと思わない?。

新入社員C: 知ることですか?

わたし: そう。みんなが「知ってもらう」ためにコミュニケーションをとるということは、その相手は、みんなのことを「知る」ためにコミュニケーションをとっている、ということになるよね。

 お。口から出任せ(おいおい)だったけれど、何かうまくまとまるような気がする。いいこと言ってるぞ、私。

わたし: みんなが一生懸命相手に「知らせよう」としても、説明が曖昧だったり、相手がその話に興味を持てなかったり、共通の理解ができる言葉を使わなかったりして、みんなが出した情報を相手がうまく受け取ることができなければ、相手はみんなが言っていることを「知る」ことができないよね。

 だから、コミュニケーションの本質は「知ってもらうこと」と「知ること」なの。この2つがペアになって初めてうまくいく。知ってもらうためには相手に「知りたい」って思ってもらわないといけないから、どうしても知る側、つまり聞く側が主体になるの。「聞き手にとって知りたいことを知る」、これがコミュニケーションにとって最も大事なことね。そうなると伝えたい側は、相手に「知りたい」と思ってもらうところから始めないといけないの。円滑に仕事をするためにもこれは重要なんだよ。

 ……おお、うまくまとまった。なんか自己陶酔。インストラクターズ・ハイ、という言葉があるとしたら、きっとこういうことを言うんだろう。

新入社員A: それってまとめて“仕事のため”って言った僕は正解ってことですよね。

 え!? 一気に自己陶酔から目覚める。ダメじゃない。「知ることが大事だ」と言っている私自身が、うまく喋れている自分に酔ってどうする。反省、反省。

 私を現実に引き戻したのは、新入社員の“正解”ということば。長年ヘルプデスクをやって分かったのは「コミュニケーションの世界に、常に通用する正解はない」ということ。時と場合、そして相手によって「正解のようなもの」は全て違う。だからこそ「正解」という言葉に違和感があった。

 結局、コミュニケーション研修の1日目は消化不良気味に終わった。今日は反省点が多い。そんな私の「危ないオーラ」が見えたのか、席に戻ると上司Aさんがすかさず声をかけてきた。この人、上司としては「デキる人」だよね、多分。オタクスイッチとムチャ振りスイッチさえ入らなきゃいい人なんだ。多分。

●新入社員は“コミュ力”がないのか?

Aさん: 今日の研修、どうだった? 確か……。

わたし: コミュニケーション研修の1日目です。

Aさん: 新人たちの報告書は後で見るけれど、手応えとしてはどう?

わたし: んー。どうなんでしょう?

Aさん: 報告になってないなぁ。コミュニケーションの研修をしてきたところなんじゃないの?

 痛いところを突かれた。

わたし: すみません。何でしょうかね……。

Aさん: では、質問を変えよう。新入社員は、コミュニケーションが下手なんだろうか。

わたし: そうは思いません。新入社員同士はうまくコミュニケーションがとれているようです。でも、ビジネスの現場におけるコミュニケーションに慣れてないって感じなんです。

Aさん: そりゃそうだろう。しかし、彼らの中のコミュニケーションと、ビジネスの世界とのコミュニケーションとは、何か違いがあると思う?

わたし: 多分……彼らの中のコミュニケーションは、同世代、同じ学校とか同じサークル、同じSNSを使っている仲間内でのコミュニケーションに限られているような気がします。一回りも二回りも年上の人とか、立場や価値観がまるで異なる人とのコミュニケーションはあまり経験がないような……。

Aさん: そう。共通の価値観、共通の文化の中でのコミュニケーションは、彼らは実にうまくとっていると思うよ。LINEを代表とするような新しいツールもふんだんに使ってね。

わたし: あ、そうですね。

Aさん: でも、年齢層や価値観、文化、経験などが大きく異なる人とのコミュニケーションは、確かに慣れてないかもね。それに、電話やメールによるコミュニケーションや、敬語を適切に使ったコミュニケーションにも慣れてない。

わたし: 確かに。

Aさん: ポイントは2つあると思うよ。

●コミュニケーションに“正解”はある?

Aさん: 1つは、立場や価値観が大きく異なる人とコミュニケーションをとらないといけない、というビジネスの世界の現実に早く慣れてもらうこと。もう1つは、大多数のビジネスパーソンたちが「これが正解」と思い込んでいるコミュニケーションのとりかたを、彼らにマスターしてもらうことだ。

わたし: 正解、ですか? 私は「正解」という言葉があまり好きではないというか……。

Aさん: 実際には、コミュニケーションの世界に正解なんてものはない。でも、円滑にコミュニケーションをとるための“無難なやり方”というのはある。それを「これがビジネスの世界のコミュニケーションの正解だ」と思っている人が少なからずいることは確かだね。

わたし: なるほど、その「無難なやり方」を早く覚えてもらわないといけないってことなんですね。その「無難なやりかた」に対して感じている、抵抗感みたいなものを払拭してあげることも重要なのかもしれません。

Aさん: そうだね。ツールはしょせんツールでしかない。本来は、どんなツールを使ったって、相手に確実に伝えたいことが伝わればいいはずなんだけどね。でもツールって目立つんだよ。今のところは、会社に遅刻しそうな連絡を電話でするのはいいけど、LINEでするのは望ましくない、ということになってる。でも、LINEを日常的に使っている新入社員は、頭ごなしに「LINEはダメ、電話ならいい」と言われたら、古いやり方を押し付けられている、と思うだろうね。なぜ、LINEは良くないといわれているのかというところまで、ちゃんと説明して理解を得てもらわないとね。

わたし: 確かに、そうですね。

Aさん: キーボードもさ、最近、LEDバックライトを装備したものが流行っているんだよ。光ってどうする、ということではなく、そうやって新しいものを受け入れていくという器が先輩諸氏に求められているかもしれんなぁ。

 ……ん? なにげなく今、さらっとキーボードの話が出たような……。このスイッチは入れたほうがいいの? 流したほうがいいの? コミュニケーション的には、どっちが正解?

最終更新:8月26日(金)8時13分

ITmedia エンタープライズ

TEDカンファレンスのプレゼンテーション動画

暗闇で光るサメと驚くほど美しい海洋生物たち
波のほんの数メートル下で、海洋生物学者であり、ナショナルジオグラフィックのエクスプローラーかつ写真家のデビッド・グルーバーは、素晴らしいものを発見しました。海の薄暗い青い光の中で様々な色の蛍光を発する驚くべき新しい海洋生物たちです。彼と一緒に生体蛍光のサメ、タツノオトシゴ、ウミガメ、その他の海洋生物を探し求める旅に出て、この光る生物たちがどのように私たちの脳への新たな理解を明らかにしたのかを探りましょう。[new]