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幻の3DCG版『マッドマックス』の裏側とは!? 映画コンセプトデザインの前田真宏インタビュー

SENSORS 8月26日(金)15時29分配信

映画『シン・ゴジラ』でイメージデザインを手がけた前田真宏氏は、2015年の大ヒット映画『マッドマックス 怒りのデス・ロード』(ジョージ・ミラー監督)のコンセプトデザインを手がけている。その経緯には何と3DCG版の『マッドマックス』があったという。その裏側について前田氏にお話を伺った。

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--『マッドマックス』にはどういった経緯で参加することになったのでしょうか?

前田: 当時、GONZO(※前田氏が所属していたアニメスタジオ)の中でいよいよフル3Dで何かやってみようという話があって、そのパイロットを試作してみたりとかいろいろやってはいたんですけどどれも企画としては実らず、NHK用に作った『おんみつ☆姫』(2007年)という短編がそこで作った最後の作品となり、その直後にお声がけをいただいて。
ジョージ・ミラーさんが「アニメ面白いよね」って思っていたらしくて、当時マッドマックスをリブートしよう、いよいよやるぞっていう感じだったんです。ミラーさんは90年代末から用意していたんですけど、いろいろあってうまくいかなくって...... でもついに準備が整ったと。それで、ミラーさんは3本の柱を立てたんです。ミラーさんが作る実写の映画本編。僕らが作るアニメがあって、もう一つゲームがあって。この3本の柱でマッドマックスを知らないっていう若い人たちにも知ってもらおうっていうことだったと思うんですね。

--そこでアニメの監督として白羽の矢が立ったと。

前田: ミラーさんは日本のアニメのスタイルでやりたいと、日本のアニメの会社で一緒にやってくれるところはないのか?と何度か来日されて当たりをつけていたらしいんです。そこから話があったんですね。「これはどうか?向いてるんじゃないか」って。すごく難しそうだなって思ったんですけど......

--そうなんですか!?

前田: だって向いてないじゃないですか、どう考えても。アニメでやるっていうのは、もともとのマッドマックスのコンテンツの性格から考えると、どうしても失敗の匂いしかしないと思って......(笑) ただ心の半分では「すっごい難しいなぁ。コレ上手くいくのかなぁ」っていう懐疑的な自分と、でもそれでもやってみたい面白そうだっていう自分も両方いて、でも面白そうだっていう自分のいうことを聞いたんですね。

--当時、3Dアニメにする実験もしていたというお噂ですが、それまではフル3Dはまだ手がけてはいらっしゃらなかったと思いますが。

前田: いろいろ考えてその時の空気みたいなものも含めて、フル3Dでやりたいというのはこちら側からの要望でした。今から思うと「しまったなぁ」とか「失敗したなぁ」とか思います。例えば今国内で作って劇場1本だったら3億円、シリーズだったら1本1000~3000万円の間で通常の常識的な予算で手描きでやりますよって言ったら、企画が成立してただろうなと思うんですよね。だけどせっかくやれそうな状況があるので、まあ欲をかいたわけですよ。基本的なプロダクトは日本でやりたいって言って駄々をこねたんです。日本の優秀なクリエイターを使って作りたいと。

--日本でフル3Dのアニメをやろうとしていたんですね。

前田: ただ基本的なレンダリングパワーとか、テクニカルなことは向こうの方がもの凄いストックがあるんですよ。ミラーさんがオーストラリアで一番でかいキャプチャースタジオを持っていて、行ってもうびっくりしちゃって。『アバター』とか『300』を撮影したところなんですけど、すごいんです。そこの人たちは本当に優秀で。

--それを持っている側としては使えばいいじゃないかと思いますよね。

前田: ええ、本当にアクターもプロだし。例えばウォー・リグが爆走していてその上からウォー・ボーイズたちが車に飛び乗るとかそういうシーケンスをちょっと撮ろうと思うと、セッティングが難しいんです。どんなセッティングしてアクターを動かせばいいのかってすごく難しくて......

--それをやってみたのでしょうか?

前田: ええ、仮に演出させてもらってやってみました。今はゴジラで庵野さんも使っていますけど、ヴァーチャルカメラは当時新しくてそれを使ったのです。すごく面白かったのがミラーさんは全くデジタルの人ではないフィルムの人なんですよね。じゃあどうしているかっていうと鉄道用に作られた巨大な倉庫を改造したすっごい大きなモーキャプスタジオでキャプチャー用のアクターがアクションをするんです。それで、実写の映画と同じようにミラーさんがデジタルスタジオに向かって座っているんです。ミラーさんの前に巨大なモニターが置いてあって、モニターに35mmカメラと同じように回すチルトと首振りをやるようなアナログのハンドルが付いていて、それでアングルとフレームを直せるようになっているんです。

--モニターを動かすことによってカメラも動くっていうことでしょうか?

前田: そういうことです。仮のセッティングがあって「コレを車だと思ってください」というのが置いてあって、その上をアシスタントが飛び降りたり走ったりバーっとモーションをとる。それで、モーションをロケーションのセッティングに入れてしまうといくらでも後からアングルを変えられるので、その場で確認をしながらコレもうちょっと寄るか引くかとりあえず変えてみようとか、そういうことができる。ここはやっぱり後からハンドカメラで追っかけてみようとなっても、後追いでそれができるんです。役者さんはもう掃けているんですけどモーションのデータは残っているので、モニターの中でそれがローポリゴンの仮モデルが動くわけです。それを手持ちカメラの中で見ながら後から追っかけて撮影できる。
結構いろいろ面白い映像があって、こういうのを使って日本製のキャラクターデザインのラインで、日本の演出でうまくハイブリッドというか混ざったものが作れないかなっていう欲をかいたんですけど......

--3Dアニメはどれぐらいまでできていたんですか?

前田: 一応、アクションシーンのテストと日常の演技ですよね。キャラクターの雰囲気とかも。絵面もトゥーン調ではなくってイラストが動くような感じでやりたいっていうような話をしてて、イラスト調のペイントをしたものをテクスチャーとして使ったキャラというのを試作してみたんですね。日常的な芝居をテストでやっていて、『マッドマックス2』の音声のトラックを貰ってきて、それをリップシンクさせてちょっと芝居をさせてみたりだとか。
僕らが結構意地を張ったのが、アメリカの劇場で公開したいって言っていたんです。ミラーさんたちも「出来たら面白いよね」ってノッてくれていたんですけど、いわゆるレーティングで子どもの観る映画じゃない、大人だけが見る劇場作品としてのアニメーションっていうのはやっぱり向こうでは理解してもらえなくて、予算がつかなかったというのが最終的な結論でした。もうちょっとお金のかからないセルルックのやり方で、例えば深夜のケーブルで子どもの見れない時間帯にやるとかだったら成立したかもなって、まあ後の祭りというか。

--こういった実験を相当なされて、それが技術の蓄積にはなられたんじゃないでしょうか?

前田: 経験値としてはですね。その時にご一緒させてもらった日本人のスタッフたちは、もともとすごくできる人たちだったんです。当時モデルを作ってくれたのが今は東映でプリキュアのエンディングのCGを作っている宮本くん(※宮本浩史。『映画 Go!プリンセスプリキュア Go!Go!!豪華3本立て!!!』の監督の1人)というすごい本当に上手い人で、最近は監督とかもやられてますけど。みんな、あちこちで活躍されています。

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最終更新:8月26日(金)15時29分

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