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妻も北朝鮮の特権階級出身 駐英国公使の亡命

ニュースソクラ 8月26日(金)16時0分配信

北朝鮮外交官、外貨稼ぎで四苦八苦

 英国駐在のテ・ヨンホ北朝鮮公使が最近、妻子と共に韓国に亡命した。

 北朝鮮を脱出した外交官としては最高位クラスで波紋が広がっている。北朝鮮の海外駐在外交官は、十分な給与をもらえず、違法行為に手を染めるケースが相次いでいる。テ氏も、そんな生活の中で、北朝鮮の将来を悲観したのだろう。

 韓国統一省の報道官は亡命を発表した17日の会見で、亡命の動機について「金正恩体制への嫌気、韓国の自由民主主義体制への憧れ、子供の将来などを挙げている」と説明した。

 テ氏は、大使に次ぐナンバー2。金正恩氏の兄・正哲氏が、ロンドンで世界的ギタリストのエリック・クラプトンの公演を見に来た時、正哲氏の案内役を務めており、本国の信頼も厚かったようだ。

 韓国での報道によれば、テ氏は、豊かな家庭で育ち、高校時代に中国で英語と中国語を習った。帰国後、外交官の登竜門である平壌国際関係大学を卒業、外務省入りした根っからの外交官だ。

 2001年ベルギーのブリュッセルで開かれた北朝鮮とヨーロッパ連合(EU)の人権対話に、北朝鮮代表団の団長として参加し、外交舞台にデビューした。その後、デンマーク、スウェーデンを経て、英国に駐在しており、あちこちで講演し、北朝鮮の体制宣伝を行っていた。その映像は、Youtubeで見ることができる。
http://u0u1.net/xOho

 テ氏の妻は、金日成と抗日パルチザン活動をしたオ・ベクリョンという軍人の家庭出身であり、北朝鮮最高クラスの特権階級の末裔だった。それだけに、韓国国内では亡命の背景に関心が集まっている。

 韓国統一省の報道官は17日、「北朝鮮の核心層の中で、金正恩体制にはもはや希望が持てず、体制が限界にあるという認識が広がっており、内部結束も悪化していると判断している」と述べているが、実は外交官も、体制の犠牲者になっている。

 米国の対北朝鮮放送である「自由アジア放送(RFA)」によれば、2015年3月、バングラデシュ ダッカ空港から入国した北朝鮮外交官たちが現地税関に捕まった。27kgの金塊を密搬入しようとした罪で、金塊は全て押収された。

 昨年10月にはブラジル政府が北朝鮮外交官を強制追放した。パナマからブラジル、サンパウロ空港で入国するさいキューバ産葉巻3800本の密輸を図ったためだった。

 昨年12月、南アフリカ共和国が、北朝鮮外交官を強制追放した。全世界的に売買が禁止されているサイの角を秘密取引きして摘発されたという。

 関係者によれば、外交官といえども北朝鮮からの給料はわずかしかない。そのうえに外貨稼ぎのノルマもある。違法行為に手を染めるのは、やむにやまれずのことだ。

 北朝鮮は海外に駐在する外交官への監視を強めるだろうから、今回のような亡命が相次ぐことは考えにくい。ただ、海外で生活する外交官は、核開発を優先し、経済再建が進まない祖国の矛盾を強く感じ、心理的にも追い詰められているに違いない。

■五味洋治 ジャーナリスト
1958年7月26日生まれ。長野県茅野市出身。実家は、標高700メートルの場所にある。現在は埼玉県さいたま市在住。早大卒業後、新聞社から韓国と中国に派遣され、万年情報不足の北朝鮮情勢の取材にのめりこんだ。2012年には、北朝鮮の故金正日総書記の長男正男氏とのインタビューやメールをまとめて本にしたが、現在は連絡が途絶えている。最近は、中国、台湾、香港と関心を広げ、現地にたびたび足を運んでいる。

最終更新:8月26日(金)16時0分

ニュースソクラ