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【漢字トリビア】「土」の成り立ち物語

TOKYO FM+ 8月26日(金)12時0分配信

「漢字」、一文字一文字には、先人たちのどんな想いが込められているのか。時空を超えて、その成り立ちを探るTOKYO FMの「感じて、漢字の世界」。今回の漢字は「土」。涙も汗も流れるままに、甲子園の土を集めて持ち帰る高校球児たち。この時期目にする、青春のひとこまです。今回は「土」に込められた物語を紹介します。

「土」という字は、まるめた土を台の上に置いた形を描いた象形文字。
いにしえの人は土を縦長にまるめ、饅頭形にして台の上に置き、これを土地の神さまとして祀っていました。
甲骨文字を見ると、この台に清めの酒をふりかけ、霊の力を強めている様子も描かれています。
つまり「土」という文字はもともとは土地の神を示した漢字。
そこから「つち、つちくれ、大地」を意味するようになりました。

敗戦からちょうど一年を数える、一九四六年八月十五日。
この日、夏の全国高等学校野球選手権大会の前身となる、全国中等学校優勝野球大会が戦後初めて、再開されました。
七百四十五校の中から勝ち抜いた十九校の生徒たちが、会場となった西宮球場の土を踏みしめたのです。
復興の象徴としての役割を果たした大会は世間の注目を集め、中でも、準決勝で負けたチームの球児たちの行動が、翌日の新聞報道により、多くの人々に印象を残します。
彼らは、負けた悔しさをにじませながら、甲子園の土を手ぬぐいに包んで持ち帰ったのです。
実はそのとき、監督は最上級生を除いた選手たちにだけ、土を取ってくるよう、声をかけたといいます。
―来年、またここへ土を返しに来ようじゃないか。
球場の土を持ち帰るというその行為は、感傷にひたるためや、記念のためでなく、再び研鑽を積んで戻ってこようという決意と希望の表れだったのです。

ではここで、もう一度「土」という字を感じてみてください。

養分や水分を蓄えていのちに与える。
根をはったいのちを守り、育てる。
朽ち果てたいのちは、やがて土へと還ってゆく。
いにしえの人々は、暮らしを支える土への感謝を胸に、その神を祀る様子を「土」という文字に残しました。
夢やぶれた高校球児たちが捲土重来を期するのもまた、土の上。
熱い大地でふんばったその分だけ、豊かな実りの季節がやってきます。

漢字は、三千年以上前の人々からのメッセージ。
その想いを受けとって、感じてみたら……、
ほら、今日一日が違って見えるはず。


*参考文献
『常用字解 第二版』(白川静/著 平凡社)
『学びやぶっく 16 「甲子園の土」ものがたり』(三浦馨/著 竹田晃/監修 明治書院)

(TOKYO FMの番組「感じて、漢字の世界」2016年8月20日放送より)

最終更新:8月26日(金)12時0分

TOKYO FM+