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[特派員コラム]東アジアの安保揺さぶる軍事力増強の逆説

ハンギョレ新聞 8/26(金) 7:03配信

 韓米両国による高高度防衛ミサイル(THAAD)の星州(ソンジュ)への配備決定発表後、米国のミサイル防衛システム(MD)の専門家である米国マサチューセッツ工科大学(MIT)のセオドア・ボストル名誉教授に、「中国が星州を軍事攻撃の目標に据える可能性はあるか」という質問をしたことがある。

 同教授は「中国軍が星州に配備されたTHAADレーダーに対する攻撃計画を立てるのはほぼ確実だ」と断言した。同教授は「これは感情の問題ではない。中国はTHAADレーダーを自国の対米核抑止力に対する重要な脅威と見ているため、選択の余地がない」と説明した。

 さらに、「中国が星州を攻撃するとしたらどのような被害が予想されるか」も訊いてみた。最初に同教授は、「中国は『核先制不使用の原則』を宣言したと紹介した。中国が「核先制不使用の原則」を固守する理由は「(道徳的な理由ではなく)先制攻撃をすれば、米国の大量報復を招きかねないため」と付け加えた。だが、米国が中国に対して先制攻撃をした場合には、中国側からもすぐに報復攻撃を行わざるを得ず、このとき星州が攻撃対象になるだろうと見通した。

 同教授は、中国が保有する大半の中短距離核ミサイルの爆発力は200~300キロトンに及び、中国が星州を攻撃する場合、200キロトン程度の爆発力を持つ核兵器を搭載した地対地短距離ミサイルを使用するだろうと予想した。1キロトンはトリニトロトルエン(TNT)1000トンが一気に爆発した時の爆発力をいう。広島で爆発した原爆の爆発力は12.5キロトンだった。

 200キロトンの爆発力であれば1秒も経たないうちに、半径3分の1キロメートル大の「火球」(きのこ雲)が生成されるという(フォーストール教授はグラフィックを直接送ってくれた)。火球の最も熱い部分は摂氏約7726度で、太陽の表面温度1726度より4倍以上熱い。火球から出る莫大な光と熱は半径5キロメートル内を「火の海」にする。火球に近い地域は鉄筋の建物を溶かし、花崗岩を壊して塵にしてしまう。

 また同教授は、初期の爆発の数秒以内に20平方キロの地域がすべて燃えると予測した。これは約600万坪であり、汝矣島(ヨイド)の10倍に相当する。何より恐ろしいことは、気象条件によって変わるが致命的なレベルの放射能を含む塵が5~15キロメートルの幅で100~150キロメートル移動し降り積もる。

 同教授から送られた分析資料があまりにも衝撃的だという返信を送った。彼は「数十年間、核兵器の(恐ろしい)効果について話してきたが、そのたびに必ず誰もが衝撃を受ける」と、まったく驚いたようすはなかった。同教授は「このような状況が発生する可能性は極めて低いが、起きたとすれば東アジアにとって災いになるだろう」とし、「米国、中国、ロシア間の緊張を軽減することがなぜ現実的な問題なのかを示している」と語った。

 さらに、「緊張が高まれば、文明の終末をもたらしかねない偶発的事件が起こる可能性も高まる」とし、「災害のような悲劇の危険を防ぐため、思慮深い人間が持ち得る唯一の目標は、政治的緊張の高まりを抑制できる政策を追求すること」と話した。

 朴槿恵(パク・クネ)大統領は15日、光復節の記念式でTHAAD配備反対に対して「国民の生命がかかっている問題は、政争の対象には決してなり得ない」と主張した。しかし、軍事力を増強するほど安保は一層不安になるという逆説が生まれる。1914年第1次世界大戦前夜がまさにそうだった。欧州各国の軍備競争は安保を保障したのではなく、相互間の不信と恐怖、過剰な対応を呼び、人類の災いに帰結された。

イ・ヨンインワシントン特派員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr)

最終更新:8/26(金) 7:03

ハンギョレ新聞