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21世紀にBASICプログラミングを志す意義とは? 『プチコン』シリーズ開発者インタビュー(『プチコンBIG』最新情報もあるよ)

ファミ通.com 8/27(土) 0:01配信

文・取材・撮影:ライター 戸塚伎一

●スマイルブームを直撃
 独自開発のBASIC言語によるプログラミングを楽しめる、スマイルブーム開発のダウンロード専売ソフト『プチコン』シリーズ。現時点での最新作となるニンテンドー3DS用ソフト『プチコン3号SMILE BASIC』(以下『プチコン3号』)のこれまでとこれから、そして、2016年夏リリース予定のWii U用ソフト『プチコンBIG』の最新情報について、北海道札幌市のスマイルブーム本社で伺ってきた。

■『プチコンBIG』のリリースは、そう遠くない!?
――まずはWii U用ソフト『プチコンBIG』の進捗はいかがでしょうか?

小林 大枠はほぼでき上がっています。先週くらいまでは、ふわっと順調にいってたんですけど、別々に調整していた各環境が、最終的に作り込んでいったらどんどんぶつかりはじめて……。これ以上話すと、ただの開発環境の愚痴になるからやめますけど(笑)。

――そこはひとまず、クリアーして。

小林 なんとか。

細田 まあ、大変な機械ですね

小林 『プチコン3号』との互換性という意味では、従来のスクリーンモード(0~4)を使う範囲では、まったく問題ありません。作品の公開サーバーも共通なので、どちらで制作したものでもダウンロードできます。

――同一のプログラムで、Wii U、3DSでそれぞれ異なる挙動をさせることも可能でしょうか?

小林 機種判定をしてモード切替できるようにしているので、がんばれば作れます。共有できないのは、ローカル通信命令とマイク命令かな。命令のフォーマットが全然違うので。

細田 “XON WiiU”命令で起動させると、さまざまな拡張命令を使えるようになります。

小林 Wiiリモコンを4本接続できたりします。いまはリモコンの音声出力のところで苦労していますが、こういう周辺機器をどこまで対応させるかというのはキリがないですよね。『Wii Fit』はどうするんだとか。あと、最近やっと気づいたのが、Wii U GamePadのバイブレーション機能。これ、忘れていたねってなって、命令の名称を決めるのにやたらと時間がかかりました(笑)。

――総当たり的というか……ご苦労されているんですね。

小林 Wii U GamePadだけでも動くことがけっこう重要なので、単純にふたつぶんのゲーム機用に作っているがゆえの大変さもあります。ただ、こういう末節の部分に手をつけられるようになったという意味では、もう終わりが近いです。

細田 あまり延ばすと、新機種が出ちゃいますからね(笑)。

――ソフトの価格は?

小林 まだリリース日も発表していないので、いまのところは『プチコン3号』よりはお高くなります……ということで。

細田 お布施したいと言ってくださる大人の方が、けっこういるんです。「何でもいいから売ってくれ」と。

――BASIC保存委員会的な。それだけ、コンシューマハードのプログラミング環境は貴重なものだということですね。

小林 『プチコン』が好きな方が、5年ほどついてきてくれています。「この会社があるうちはこういうヘンなものが出る」という期待で買ってくれているところが、あるようです。

【『プチコンBIG』実機稼動画面(※2016年8月10日現在ver.)を公開!】
■『プチコン3号』成熟の方向性
――『プチコン3号』がリリースされてから、もうすぐで2周年を迎えようかというところですが、ここまで運営・展開してきての感想は?

小林 初代の『プチコン』(※2011年発売。ニンテンドーDSi用ソフト)は初っ端にばーっと売れて、そのあとは1日数本ペースで売れていきました。『プチコン3号』もしばらくはそんな感じだったのですが、オバマさん(アメリカ合衆国大統領)がプログラミング教育に関する発言をしてから急に持ち直して、いまもだらだらと売れて続けています。

――『プチコン』の企画の際には、プログラミング教育が注目される時代の流れを、ある程度意識されていたのでしょうか?

小林 ない……ですね。僕が作りたかったから作ったものです。プラットフォームをニンテンドーDS(3DS)にしたのは、子どもたちではやっている、売れていた環境だったから。おっさんユーザーよりも、子どもたちに触ってほしいという気持ちがありました。もともとが黒い画面に文字……という、表面をどんなに飾りつけても限界があるソフトなので、MiiverseやTwitterで発信された情報をキャッチし、あとはユーザーさんどうしの交流に任せるという形でフォローしていきましたね、

――ユーザーが作った作品で、これはすごいというものはありましたか?

小林 グラフィックをいじれる人たちの作品は、絵的にすごいものがたくさんあります。グラフィックはプリセットのキャラクターを使用していても、アイデアで“やられた感”があるものはいまだに出てくるので、そういう意味では楽しいです。

細田 技術面では「こんなことできるようには作ってないぞ」というものが、けっこうあります。

――そこはやはり、セミプロの犯行というか……。

細田 ずばり、プロですね(笑)。

小林 逆に、セオリーを知らないがゆえに、すごいものができているケースもあって。

細田 『プチコンmkII』(※2012年発売。ニンテンドーDSi用ソフト)以降は、「とりあえず速く動くようにしておけば、(最適化されていないプログラムも)力技で何とかなるだろう」という気持ちで作っています。それにしても、3Dモデルを使ったりとか、『DOOM』みたいな一人称視点アクションゲームを作ってみたりとか、ふつうはやらないよねというのが……。最近では、PC-8001(※NECが1979年にリリースした8ビットCPUパソコン)のエミュレータを作っている方もいましたね。

――はぁ!?

細田 BASICで作ったエミュレータにPC-8001用のプログラムデータを読ませると、実機の6割程度の速度で動くそうです。

――もうなんか、正気の沙汰ではないですね! というか、こういうのはアリなんですか?

小林 当時の市販ソフトのROMイメージが同梱されていたりするとさすがにまずいですが、これ自体はただのエミュレータなので、我々が関知するところではないかなと。

――これもまた、細田さんの設計思想が実を結んだ形である……と。

細田 ふつうやらないですけどね(笑)。あと『プチコン3号』は、絵作りの面で若干ハードルが高かったんですけど、グラフィック作成ツールを作るのが好きな何人かによって便利なツールが断続的に更新され、それらを使った優れたグラフィックのゲームが開発される……というサイクルができています。我々は、「キミたち、そこまでやるんだ」と思いながら、見守っています(笑)。

小林 『プチコンBIG』ではWii U GamePadが使えるので、お絵かきという点ではもっと環境がよくなると思います。ちょっとした商業ベースの2Dゲームくらいなら作れると思います。

――『プチコン』シリーズ以外にも、ゲームプログラムコンテンストの開催や、ユーザー投稿作品集『プチコンマガジン 創刊号』のリリース、プログラムリストページが延々と続くムックを監修されたりと、ゲーム会社としては独自の活動をされています。今後もそういった活動は?

[関連記事]3DSでゲームをプログラミングできる『プチコン3号 スマイルベーシック』の公式マガジンが6月27日に創刊決定

小林 もちろん、やっていきたいと思います。このあいだ任天堂さんが発表した個人クリエイター登録制度は、いざ開発機を買うとなると何十万円もしてなかなか手を出しづらいと思いますが、『プチコン』ならもっと安くお手軽に、任天堂ハードで動くゲームを作れるので、そういう需要には応えていきたいですね。

――『プチコン3号』で作った自作ゲームをニンテンドーeショップ(ニンテンドー3DS、Wii Uを対象としたオンラインストア)で販売できるようにする仕組み作りにも、多くのユーザーが期待を寄せていると思われます。

小林 『プチコンマガジン』を作るのにもそこそこ手間がかかるので、もうちょっとラクにユーザー作品を世に出せる方法を考えています。漠然と話している段階なんですけど、“◎◎さんの作品を遊べるプレイヤー”という形でショップでリリースして、作品ひとつひとつを“追加コンテンツ”として提供するのはどうだろうと考えています。プラットフォーム内プラットフォームという形にはなりますが、ショップの仕組み自体はすべて親のプラットフォームを使うから、問題ないんじゃないかと。仕組みとしては、『プチコン3号』と、バンダイナムコエンターテインメントのカタログIPコラボ素材との関係に近く、いろいろと柔軟にいけそうな気がします。

――それはかなり現実的なアイデアですね!

細田 この間思いついたばかりなんですけどね(笑)。

小林 一番大きいのは、ユーザーさんが何か出す際にも必要になる、CEROの審査費用をユーザーに負担してもらうわけにはいかない、という点です。うちががんばってプレイヤーの審査を通して、そこに乗るコンテンツをうちで管理・チェックすれば、審査基準に見合ったものだけが流通する、『プチコン』を持っていないユーザーも『プチコン』製のゲームを遊べる……というわけです。

――感覚的にはSteam(米Valve社が運営する、PCゲームダウンロード販売サイト)に近いですね。

小林 ニンテンドー3DSの中に入っているSteam……そう言われてみるとそういう感じですね。いま、こういった位置づけのゲーム制作環境はこれしかないので、何とか維持して、ゲームを作りたい子たちを支援していきたいですね。

――支援しなくても勝手に作っちゃうような人たちも含めて。

小林 おじさんたちも結構いますね(笑)。

''――おじさんと言えば(笑)、バンダイナムコエンターテインメントのカタログIPのコラボ素材の続報はいかがでしょうか? 『ギャラクシアン』と『パックマン』のデータがリリースされてから(※各100円)しばらく経ちますが。

[関連記事]※Wii U版『プチコンBIG(仮)』の開発が決定! 3DS版『プチコン3号 SmileBASIC』との上位互換を実現

細田 いま僕が、データを作成しています。

――え?

小林 オリジナルと同じものを入れようということで、これがけっこう大変なんです。

細田 もともとカタログIPオープン化プロジェクトは「二次創作していいよ」というもので、オリジナルの完コピで作れとはひと言も言われていないのですが、昔遊んだ世代からすると、そのままの状態で出したいじゃないですか。

――たしかに、オリジナルのグラフィックデータがバンダイナムコさんからもらえる、という仕組みではありませんが……。

細田 『ギャラクシアン』、『パックマン』までは順調だったんですけど、つぎは『ギャラガ』、『ゼビウス』、『マッピー』だなとなったときに、「これは大変だぞ」と。決して手を止めているわけではなく、毎日1~2時間、泣きながらドットを打っています。

――ええと……ドット絵を作成しているのは細田さんおひとりなんですか。

細田 はい。

――『プチコン』のメイン開発者がみずからコラボ素材も作っているって、おかしいでしょう!

細田 『プチコン』本体ですらそんなに利益を出していないのに、その追加素材となると売り上げがさらに落ちるので、ほかの人に発注できないんですよ。

――そのような生々しい事情が。

細田 とは言え、『ギャラガ』と『マッピー』はリリースの準備ができつつあるので、そろそろつぎのタイトルに取りかかろうかなと思っています。

■プログラミング学習の潮流に際し、スマイルブームの舵取りは?
――昨年、大阪府立泉尾高等学校でのバソコン演習の教材に『プチコン3号』が導入されて以降、プログラミング学習関連の活動も精力的に行っているようです。こうした分野は今後も意識的に関わっていくのでしょうか。

[関連記事『プチコン3号 スマイル ベーシック』がプログラミングの実習教材として学校教育に導入決定

小林 意識しているようでしていないところがあるんですけど、できる範囲でやっていっているところはあります。我々は別に先生ではないので、「けっきょく、プログラミング学習で何ができるの?」って言われると何とも言えないのですが。やれることをやっていこう……という意味では、先日も愛別(北海道上川郡愛別町)の教育委員会の要請を受けて、小学生向けプログラミング体験のワークショップを行いました。

――少し前に小林さんのSNSアカウントで、ニンテンドー3DS本体を大量に購入したとの投稿がありましたが、今回のイベント合わせだったんですね。

小林 そうなんです。今回初めて、低学年の参加者が多いイベントだったんですけど、アルファベットは読めない、ニンテンドー3DS本体を触ったことがないという子がけっこう多くて、何をしようかと悩んだ結果、はじめにコンピュータの仕組みに関する話を軽くして、残りの時間で4~5行程度のプログラム10個をできるだけ入力してもらうことにしました。案の定、4個くらいが精いっぱいだったんですけど、低学年の子たちも文字を記号として認識しながらがんばって入力して、おのおの実行結果を確かめることができたようです。

――そこにはちゃんと、感動体験があったと。

小林 入力した文字がそのまま表示されるというプログラムは、実行してもピンとこない子たちがいたのですが、音が出たりスプライトのキャラクターが表示されるプログラムの反応はよかったですね。おもしろさを感じるのはこのへんかな、ということがよくわかりました。

細田 それまでのワークショップは、いきなり200行くらいのプログラムを打ちましょう、みたいな苦行を強いる内容だったので、今回でやっと(小林氏が)気づいてくれたようです。

――細田さんはワークショップ活動はされていないんですか?

細田 僕はしていないです。後ろから文句言うだけです(笑)。

小林 これまでの子ども向けワークショップは、親がいっしょについて参加する形で、それで何とかなっていたこともあって、(方針転換する)踏んぎりがつかなかったんです。ただ今回はそうではないということで、思いきってシンプルな内容にしてみました。

――ふつうの子どもたちにとってのプログラミングのハードルは、小林さんが想定していたよりもだいぶ高かったと。

小林 そうですね、ふつうに考えて。ただ、こういったイベントを経験することで、素養はまったくのゼロではない子どもたちになったはずです。大人がきっかけを与えない限り、触れることは一生ないかもしれない分野なので、今後何か気づくきっかけにはなっていると思います。そういう意味では、愛別町の教育委員会の考えかたはおもしろいなと思います。

――ひょっとしたら、BASICに理解のある第一次パソコン世代が、活動方針の決定権を持つ役職についている影響もありそうですね(笑)。

小林 たしかに、教育委員会の方が、1980年代にBASICをやっていたと仰っていました。担当者も昔『ベーマガ』(※電波新聞社が発行していたプログラム投稿雑誌『月刊マイコンBASICマガジン』の略称)読者で……みたいな話をしましたね(笑)。

――2020年度からの、公立小学校でのプログラミング学習の必修化に際し、スマイルブームさんでアクションを起こされたりはするのでしょうか?

小林 『プチコン』はメインの仕事の片手間で作っている商品なので、本格的に何かできるかと言われたら難しいですが、求められればできる限りやっていきたいと思います。

――個人または団体で『プチコン』を広めたい、教材にしたいという動きにたいしては?

小林 けっこう自主的にやられているところが、ぽつぽつできているようです。先日も広島県のPC教室の方から「『プチコン』を教室で使うには許可が必要ですか?」という連絡がありましたが、まったく問題ありません。むしろ、わからないことがあれば説明しますし、必要とあれば、うちで作った講義用資料を送ったりもできます。

──AI、人工知能によるディープラーニングの流れに関して、何か思うところはあるのでしょうか?

細田 先進的なことやろうとすると、どうしてもやっぱりやることが高度になっちゃうので、あくまでも初心者向けの環境を考えた時に、そのあたりの要素は、盛り込みづらいですね。ディープラーニングをやろうとすると、まずその説明が必要になりますし、数学的な話も前提として避けられなくなるので、小学生には絶対無理だなと。

――スマイルブームの基本姿勢としては、そういう高度な話題に興味を持つ前段階を今後も担っていきたい……ということでしょうか。

小林 初っ端としての手軽な環境を提供したいですね。

細田 その環境であえて無茶をしたい人は、してもらえばと(笑)。

――少し気が早いですが、『プチコンBIG』以降の展開についてどのようにお考えか、教えてください。

小林 BASIC作りは僕らの趣味なので(笑)、これからも続けていくと思いますが、これまでと同じコンセプト・方向性でそのまま次世代機にいくか、より初心者に寄るか……悩みどころではあります。

――BASICよりもさらに初心者向けとなると、Scratchのようなブロック言語などもありますが。

小林 Scratchのような仕組みは、『プチコン3号』上でも全然作れると思います。わりとふたりとも「作っちゃえばいいじゃん」という考えかたが、根底にあるんです。何かを作るための環境を快適な状態で用意すれば、リッチなコンテンツは誰かが作ってくれるだろう……という期待はありますね。

――理論学習に特化させるよりも、UGC(ユーザー生成コンテンツ)の土台としての特性を維持する方向になりそうですね。

細田 当初考えていたことは『プチコン3号』と『プチコンBIG』でほぼほぼ実装できたので、さあつぎは何やろうかなというのはあります。

小林 つぎは3Dだって話も、あるにはあります。

――おおっ!

細田 グラフィックが3Dになると、ハードルがいきなりがくんと上がるので、そこのフォローが難しいですね。いざ手をつけるまでに準備しなければならないものが増えるんです。

小林 『SmileGameBuilder』(スマイルブームが2016年9月8日にリリース予定の、PC用RPG作成ソフト)のグラフィックが、2Dと3Dの境界をいい感じで橋渡ししているので、あの仕組みがもしかしたら使えるかもしれななぁと思っています。

――実現化、気長に期待しています!

最終更新:8/27(土) 9:40

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