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反則スレスレの手口で店舗に新製品をねじ込むメーカー営業マン

ITmedia PC USER 8月27日(土)6時25分配信

連載:牧ノブユキのワークアラウンド(PC周辺機器やアクセサリー業界の裏話をお届けします)

【画像】店頭に製品を送り届けてしまえば、コッチのもの……?

 家電量販店には、メーカーが発売する全ての新製品が並ぶわけではない。どの製品を仕入れるかを判断するのは、基本的にその量販店の本部にいるバイヤーだ。メーカーの営業マンは、過去の類似製品との売上比較など、必要な数量を判断できるデータをそろえて本部のバイヤーのもとに出向き、交渉することにより、ようやく自社の新製品を仕入れてもらえる。

 しかしメーカーが売りたい新製品の中には、全く新しいカテゴリーの製品など、売上を比較できる類似製品が存在しないケースもあり、メーカーの思惑通りに商談がまとまらないこともしばしばだ。もっとも、断られたからといってすごすごと引き下がっていては、営業マンの立場はない。店頭に並べて売れなければ、それは製品に魅力がなかった見なされるが、店頭に並べることができなければ、それは営業マンの力量不足と見なされてしまう。

 こうしたことから、メーカーの営業マンはさまざまな策をろうして、店舗に新製品を送り込み、会社に対して責任を果たしたことをアピールしようとする。その中には発覚すれば取引停止につながりかねない、明らかにルール違反と思える手口も少なくない。今回は、現在では使えなくなっている手法も含め、メーカーの営業マンが繰り出す「あの手この手」を紹介しよう。

●バイヤーを経由せず店舗から発注させるため手口

 1つ目は、客を装った在庫のリクエストだ。店舗に設置されているアンケート箱などに客を偽って「こういう製品を置いてください」と投稿し、真に受けた店舗スタッフが発注するのを待つという手口である。

 要するに、バイヤーを説得するのは諦め、店舗から直接発注してもらうという作戦だ。量販店によっては、バイヤーに加えて店舗スタッフも独自の仕入れ権限を持っている場合があり、そうした場合に有効だ。店舗スタッフが他の売り場から移ってきたばかりでそのカテゴリーの知識があまりなく、なおかつ発注権限がある場合は、「これはお客さまの生の声として貴重だ」とばかりに、あっさり引っ掛かってしまうことがある。

 もし、実際に発注にまで至らなくとも、メーカーの営業マンが訪問した際に「そういえばお客さんからこんな要望があったんだけど、この製品って売れるの?」などと聞かれればしめたもので、うまく言いくるめて発注書をもらえば、他の店舗にも「あちらのお店でお客さんからこんなリクエストがあって、在庫を置くことになったんですが、こちらのお店でもいかがですか」と売り込みに回れるので、一石二鳥というわけである。

 これと類似した方法として、客を装って店に在庫確認の電話をする方法がある。声色がばれないよう、2人の営業マンが交代でお互いの担当店舗に電話をかけ、製品の在庫があるかどうかを質問し、ないと分かれば(もちろんないことを知って電話しているのだが)、「在庫があればすぐ買いに行ったんだけどなあ」とつぶやいて電話を切る。

 こうしたやりとりの後で店舗を訪問し、おもむろに「実はご紹介したい製品がありまして……」などとその製品を提案すれば、在庫分を発注してもらえる確率が高くなるというわけだ。

 さらに過激な手口としては、店舗で架空の氏名と連絡先を使って製品を取り寄せるというワザもある。注文を受けた店舗がメーカーに発注し、製品が店舗に届いたところで客に連絡するも、もともとダミーの連絡先なので電話が通じることはなく、「多分、客が電話番号を書き間違えたのだろう」と思って保管するが、いつまでたっても受け取りに来ず、最終的には店頭に並べて処分せざるを得なくなるという流れだ。俗にいう「客注キャンセル」を意図的に発生させるわけである。

 この方法、客からの連絡が来るのを店舗が諦めた頃には既に納品から日が経過していることから、いまさらメーカーに返品しづらく、店舗の責任で売り切らなくてはいけない空気になっているのにつけ込む、かなりあくどい手口である。

 ただしこの方法は、注文できる数量がせいぜい1個までで、また店舗が代金前払いを必須とするようになったことで、今では事実上不可能になっている。業界によってはまだ現役で通用するかもしれないが、家電量販店を舞台に行われるケースはもうないだろう。

●店頭に並ばず送り返されても構わない、その理由とは?

 上記は店舗側に自発的に注文してもらうパターンだが、これとは正反対の方法も存在する。つまり、店舗から発注を受けずに、メーカーの側から一方的に製品を送りつけてしまうパターンである。

 もっとも、承諾なく製品を送りつけたとなると、取引停止などシャレにならない事態に発展しかねないので、「誤発送」を装って行われることがほとんどだ。「他の店舗から受けた注文分をうっかり誤送してしまった」もしくは「注文書の数量を一桁間違えてしまった」という理由を挙げて謝罪し、「追って引き取りに伺いますのでしばらくバックヤードで保管しておいていただけますか」という形で、一時的なストックを促す。

 この方法は先の手口と異なり、店頭に製品が陳列されることはなく、荷解きすらされずにそのまま引き取られることも多い。つまり送料や手間のぶんマイナスになるわけだが、にもかかわらずなぜ行われるかというと、冒頭でも述べたように、営業マンにとってはその店舗に対して伝票上で出荷実績を作れば、それで目的を果たせてしまうからだ。

 中でもよく用いられるのが、末日で出荷し、翌月1日に店舗に到着するという手口だ。仮にメーカーが8月31日付で製品を発送し、販売店が9月1日付で検収した場合、メーカーにとっての売上は8月に立ち、販売店の仕入れは9月分扱いとなる。こうした出荷と検収のズレは業界を問わず至るところで発生しているが、月をずらすと、たとえ店舗からすぐに返品されても、出荷実績だけ見ると8月にはいったん数字が上がったことになる。

 もしこれが同じ月内に返品を受けるとプラスマイナスゼロになるが、月をまたいだ返品であれば、さも1カ月間は店頭に陳列し、売れないことが分かったので返品を受けた……というふうに(月次の出荷実績表では)見えてしまうのだ。

 実際には店頭に並ばずバックヤードに放置されていただけなのだが、店舗に製品を送り込むのがメーカーの営業マンの目的であれば、この方法で最低限のノルマがクリアできてしまう。製品を回収するタイミングを粘って10月1日以降まで引き伸ばせば、見た目は2カ月間陳列してもらったように見えるので、さらに効果は大きくなる。

 また、家電量販店のバイヤーの中には、店舗に対する連絡を小まめに行わないズボラな人も少なくなく、その場合はメーカーにとってつけ込む隙がある。というのも、そうした店舗は、自分達が注文していない在庫が届いた際、「きっとまたバイヤーが連絡もなく商談をまとめたのだろう」と勝手に誤解し、店頭に陳列するという癖が付いてしまっているので、無許可で製品を送りつけてもうやむやにできる可能性が高いからだ。

 後から発覚しても「荷解きして陳列しちゃったのであれば、せめて半分だけでもそのまま置いてもらえませんか」などと、交渉できる余地が生まれるわけである。

●本当に売れてしまうことも?

 以上のように、とにかく会社に対して面子を保ちたいメーカーの営業マンは、実際に客に売れるかどうかはあまり気にしていなかったりする。

 出荷の実績だけ作れば「無理を言って置いてもらいましたが、売れなかったので返品伝票を切りました。私のせいではなく製品のせいです」と抗弁できるからだ。安易に返品を受けることを責められる可能性はあるが、店舗に製品を陳列すらしてもらえず無能の烙印(らくいん)を押されるのに比べると、責任問題は大幅に軽減できる。ノルマが多ければ多いほど、この傾向は顕著になる。

 しかし、こうした方法で店舗に無理やりねじ込むことで、多少なりとも客の目に止まり、売れることもなくはない。たとえ店頭に陳列されずバックヤードで眠っていても、端末で在庫数を検索すると「あり」と表示されたことがきっかけで在庫の存在が知れ、たまたま問い合わせてきた客の手に渡る場合もある。

 今回紹介した手法は決して褒められたやり方ではないが、ネット通販の発達により「在庫があって今すぐ持ち帰れること」が店舗の1つの価値になりつつある現在、メーカー営業マンのあくどい手口が、店舗スタッフすら気付かぬところで、売上の微増につながるケースもあったりするのだ。

最終更新:8月27日(土)6時25分

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