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アングル:トランプ氏の外交顧問、「ロシア通」は本当か

ロイター 8月27日(土)8時28分配信

Alexander Winning and Olga Popova

[モスクワ 24日 ロイター] - 米大統領選の共和党候補ドナルド・トランプ氏は、外交政策アドバイザーの1人として、ほぼ無名のエネルギー業界コンサルタントを任命した。だが、この人物のかつての上司は面食らっている――10年前にモスクワで知り合った彼は、どちらかと言えば経験の浅いバンカーだったのに、大統領候補のアドバイザーとして適任なのだろうか、と。

このアドバイザー、カーター・ペイジ氏は、かつて米投資銀行メリルリンチの社員としてロシアで働いていた。現在、同氏が経営する会社のウェブサイトには、ロシア国内の最大手エネルギー企業グループがいくつか絡む「重要な」取引についてアドバイスを提供したと書かれており、2004年から3年間にわたるロシア駐在時代を華々しく表現している。

だが、ペイジ氏のロシア駐在が終わろうとするころにメリルリンチのモスクワ事業を統括したセルゲイ・アレクサシェンコ氏は、難しい米ロ関係についてアドバイザーを務めるほどの経験がペイジ氏にあるのか疑わしいという。

「奇妙な人選のように私には思える」とアレクサシェンコ氏は言う。同氏は1990年代に財務次官、中央銀行副総裁を務めた後、2006年から2008年にかけてメリルリンチ・ロシアの経営にあたった。「カーターは外交政策や米ロ関係について議論するような人物ではなかった」

トランプ氏が3月にアドバイザーに任命したペイジ氏の業績は、彼がメリルリンチ退社後に立ち上げた企業、グローバル・エナジー・キャピタル社(本社ニューヨーク)のウェブサイトにまとめられている。ロイターがロシア駐在時代について同氏に問い合わせたところ、回答は得られず、またメリルリンチもコメントを拒否した。

ロイターがトランプ陣営の広報担当者ホープ・ヒックス氏に問い合わせたところ、選挙運動においてペイジ氏は大きな役割を担っていないとのことだった。「ペイジ氏は、数カ月前に、もっと大人数のグループの一員として指名された非公式アドバイザーだ。何か公式な立場で陣営を代弁、あるいは代表する人間ではない」とヒックス氏は語った。

すでに共和党から大統領候補指名を受けたトランプ氏は、3月21日付のワシントンポスト紙によると、5人の外交政策アドバイザーの1人としてペイジ氏の名前を挙げた。ロイターは、ペイジ氏がその後トランプ陣営のために行った仕事について、またトランプ氏が彼を選んだ理由について問い合わせたが、ヒックス氏からの回答は得られなかった。

ロシア政府に対して批判的なアレクサシェンコ氏は、2006年から2007年にかけてペイジ氏の上司だった。現在は、米シンクタンクのブルッキングス研究所で非常勤上級研究員を務めている。

この他にも、モスクワで勤務していたメリルリンチの元従業員3人がロイターに話したところによると、ペイジ氏はその職階からして、メリルリンチの取引で中心的な役割を果たしたはずがないし、当時は外交政策について真剣な関心や専門的知識を持っている様子はなかったという。

トランプ氏が外交担当チームを任命した後まもなくして、トランプ陣営の一員であるサム・クロービス氏は、陣営が目指しているのは、他候補のように元高官らに頼るのではなく、「実社会」や軍で経験を積んだ人材を集めることだと語った。

<ロシア政府寄りの姿勢>

対ロシア政策は今回の米大統領選において主要な争点となっており、トランプ氏はロシアのプーチン大統領を「力強い指導者」と呼んでいる。ロシアの国営メディアはトランプ氏について好意的に報道しており、民主党候補であるヒラリー・クリントン氏よりもトランプ氏の方がロシア政府にとって都合のいい候補者であることに疑いはない。

トランプ氏同様、ペイジ氏もオバマ政権の対ロ方針とは対立する意見を持っており、近年は、折に触れてロシア政府の姿勢におもねる見解を表明してきた。

2015年2月には「グローバル・ポリシー」への寄稿のなかで、米国の対ロ政策は「見当違いで挑発的」だったと述べ、ウクライナ紛争を引き起こした責任は米国務省にあるとした。

ロシア国際問題評議会のアンドレイ・コルトゥノフ所長によれば、トランプ氏は、民主党が推進する外交政策が機能不全で脆弱(ぜいじゃく)であることを示したいと考えているという。コルトゥノフ氏はまた、ペイジ氏と個人的な面識はないが、そうしたトランプ氏の狙いにかなった意見を持つ人材は役に立つと指摘する。

「米国には、ウクライナ問題にウンザリしている人々がいる。ウクライナは米国にとっての問題ではなく、米国政府が関与すべきではないと考えているのだ」とコルトゥノフ氏は言う。ロシア国際問題評議会はロシア外務省と関係が深いが、同氏は独自の見解も表明してきた。

ヒックス氏の上述のようなコメントとは裏腹に、トランプ陣営の元幹部であるコーリー・ルワンドウスキー氏はロイターに対し、6月末に陣営を離れた時点では、すでにペイジ氏はトランプ氏にとって「正真正銘の」アドバイザーになっていたと話す。

総勢5人で構成される外交政策チームのメンバーであるワリド・ファレス氏は、8月19日にロイターの取材に応え、ペイジ氏がトランプ氏へのアドバイスを続けていると話した。

<中堅バンカー>

グローバル・エナジー・キャピタル社のウェブサイトには、ペイジ氏はメリルリンチのモスクワ支社開設の責任者であり、世界最大の天然ガス生産企業であるガスプロム<GAZP.MM>や、すでに消滅した電力会社「RAO UES」などのロシア企業が絡む「重要な取引に関するアドバイザー」であったと書かれている。

ロイターは、モスクワで勤務していたメリルリンチの元従業員4人(そのうち3人はモスクワ勤務の時期がペイジ氏と重なる)、さらに業務上メリルリンチと競合するモスクワの銀行関係者3人に取材した。

いずれも、ペイジ氏の主張と異なる記憶について、公表を前提に話してくれることに同意してくれなかったが、例外が前述のアレクサシェンコ氏である。

「ペイジはメリルでバイスプレジデントの立場にあり、ディールの起案に携わることのない中堅どころのバンカーだった」とアレクサシェンコ氏は言う。「ガスプロムはVIP級のクライアントで、そうしたクライアントとの取引では、バイスプレジデントが決定的な役割を果たすことなどできなかった」

ペイジ氏は3月、ブルームバーグとのインタビューのなかで、ロシア極東地域サハリンにおけるエネルギー関連プロジェクトの権益をシェル<RDSa.L>から買い取る件について、ガスプロムにアドバイスを提供したと語っている。

しかしアレクサシェンコ氏によれば、この案件においてメリルリンチが関与したのは、他の銀行と共に、本ディールの価格は適正であることを告げる簡潔な文書をガスプロムの株主に提供しただけだという。

ガスプロムはコメントを差し控えた。

別のメリルリンチ出身者は、「ペイジは、たいていの会議に出席して資料を作成する雑用係だった」と述べた。

<ガスプロムとの縁は薄いのか>

ペイジ氏のモスクワ勤務時代に競合他社で働いていたバンカーたちによれば、メリルリンチはガスプロムの投資家対応を担当していたものの、資金調達が必要になった場合にガスプロムが頼りにするようなメインバンクではなかったという。

ペイジ氏のモスクワ時代、メルリリンチはガスプロムのユーロ債2件について幹事会社を務めていた。だが、ロシアで外国人投資家を支援するコンサルタント会社マルコ・アドバイザリー(モスクワ)のトム・アズヘッド氏によれば、ガスプロムとの取引において、メリルリンチは大きな役割を果たしていなかったという。

モスクワでのペイジ氏の業務について、メリルリンチからは回答が得られなかった。

(翻訳:エァクレーレン)

最終更新:8月27日(土)8時28分

ロイター

TEDカンファレンスのプレゼンテーション動画

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昔は街の広場で、現代はYouTubeで。歴史を通じ、公開処刑には必ず人だかりがつきものでした。人が処刑というものを、恐ろしく不快に感じながらも、つい気になって見てしまうのはなぜか。フランシス・ラーソンが人間と公開処刑の歴史、中でも斬首刑に焦点を当てて解説したこのトークは、気分の良い内容ばかりではありませんが、同時に興味をそそること間違いないでしょう。