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【相模原事件】脳性まひの医師が感じた恐怖と決意「それでも他者とつながり生きる」

BuzzFeed Japan 8月27日(土)6時0分配信

「当事者」の語りを聴く

「追悼とは、祈ること。祈るとは自分の内なる声を聴き、自分と異なる他者の声を聴くこと。津久井やまゆり園の事件から、何を考えたのか。声を聴きたいと思いました」。脳性まひの医師、熊谷晋一郎さん(39歳)はそっと語りかけるように、言葉を紡いだ。【石戸諭 / BuzzFeed Japan】

熊谷さんは東京大先端科学技術研究センター准教授として、障害がある当事者が自分の障害を、自分の言葉で語り合い、困難を解決していく「当事者研究」をリードしてきた研究者でもある。

2016年8月6日、それは暑い夏の1日だった。休日の東京大。身体障害者、知的障害者やその介助者……。熊谷さんたちが呼びかけ、当事者たちが集い、相模原事件の被害者を静かに追悼した。

彼らの祈りは、そのまま社会への問いかけに転じる。事件が起きても、障害を、障害者を見えないことにしていないか、と。
いま、「当事者」の語りを聴いてみたい。私は熊谷さんの研究室を訪ねた。

「介助者の圧倒的な暴力によって、障害者が犠牲になる。過去のものだと思っていた恐怖が、また蘇ってきたのです」

事件を知って、私は動揺しました。

介助者の圧倒的な暴力によって、障害者が犠牲になる。過去のものだと思っていた恐怖が、また蘇ってきたのです。

事件を知ってからというもの、数日間、どうにも体調が優れないのです。何か、身体が重く、風邪をひいたときのようなだるさがある。脱力感と一緒に、怒りのような感覚も起こるけど、どこかで諦めているような感情がある。

そのうち、映像が見えてきました。私の幼少期の経験です。映像の中の私は、治療の一環として、リハビリをやらされているんですね。私の意思とは関係なく、トレーナーが私の身体を曲げて、伸ばし、ねじ伏せる。

自分が健常者になれる、という目標におよそ、リアリティーが持てないまま、なぜか健常者になるためのリハビリを強要される。そんな映像でした。

このとき感じた恐怖は、こういうものです。

「もし、介助者に悪意があったら、このまま死んでしまうかもしれない」「うまくいかなかったら、彼の気持ちを損ねてしまうかものしれない」

「リハビリがうまくいかなかったら、社会から隔離されて、一生を終えるのではないか」

私はうまくリハビリをすることができなかったから、自分は無力だと思っていました。そして、自分のことを、自分で決めることができない現実に恐怖を覚えたのです。

私たちは1人で生きることができません、食事も、トイレ、排泄も1人でできない。だから、他者と交渉を重ね、つながることで生きることを選んできました。もし、他者が私を拒絶し、暴力でねじ伏せようとしてきたら……。

事件の一報を知って、そのとき感じていた、無力感が久しぶりに蘇ってきたんですね。外に出るのが急に怖くなりました。私の障害はとても、わかりやすいものです。車椅子に乗って外に出歩くと、急に殴られたりしないか、暴力で押さえ込まれたりしないか。

電車のなかで、舌打ちをされると、それが私に向けられたものではないかとひるむんですね。舌打ちなんて、何年も気にしたことすらないのに。自分のなかで、積み上げてきた何かが、壊れていく。そんな感覚にとらわれました。

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最終更新:8月27日(土)7時29分

BuzzFeed Japan

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