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民法改正、「18歳成人」で相続・遺産分割が変わる?

ZUU online 8月28日(日)9時10分配信

「民法改正」をめぐるニュースが8月中旬に報じられた。ここ数年話題になっている債権法の改正の話ではない。「民法が定める成年年齢を20歳から18歳に引き下げる」という内容の民法改正案が、2017年の通常国会に提出されるというのだ。

「18歳成人」改正案の背景は何か。そして「18歳成人」で具体的に大きく変わる可能性のある場面のうち、相続における「遺産分割」について解説する。

■今なぜ「18歳成人」なのか

成年年齢が「18歳」になるのは、何も急に始まった話ではない。

始まりは2007年5月に成立した、いわゆる国民投票法(日本国憲法改正手続に関する法律)だ。この法律によると、国民投票の投票権を有するのは、「満18歳以上の国民」であるとされた。

これに続けと言わんばかりに2015年6月、公職選挙法が改正され、18歳でも選挙において投票できるようになったことは記憶に新しいのではないだろうか。

「18歳成人」が取り沙汰された理由の一つに、「諸外国の制度との適合性」がある点も忘れてはいけない。欧米諸国はもとより、中国やロシアといった主要国までもが私法上の成年年齢を「18歳」としている以上、日本も「18歳をもって成人とするべき論」が湧き上がってきた。まさに国際的潮流ともいえるのだ。

■「18歳成人」で変わる日常

成年年齢を18歳とすることで変わることは多々ある。代表的なものは、18歳・19歳の若者の「未成年者取消権」がなくなることだ。

たとえば19歳の若者がバイクを購入するとする。20歳を成年年齢としている現民法下であれば、バイクの購入には親権者(親)の同意を得て若者自身が契約するか、あるいは親権者が青年を代理して契約しなければいけなかった。

同意がない、もしくは代理による契約ではないのであれば、契約は取消すことができる。未成年者側が自身の都合で「売買契約を取消すので、バイクを返品します。お金を返してください」と主張をして、契約をなかったことにすることが可能なのだ。

「18歳成人」の民法改正が成立した場合、19歳の若者は契約を取消すことができなくなる。判断能力が乏しいであろう若年層を保護する民法の役割が、ここで機能しなくなるのだ。「未成年者取消権」は未成年者を保護するための制度であって、18歳・19歳の若者からこれを奪うことは許されないとして、「18歳成人」に反対する主張があるのはこのためだ。

■これまでの相続人が18歳・19歳である場合の「遺産分割」

10代の若者が購入するバイクであれば数十万円の範囲でおさまることが多いから、現実にはさほどの問題はないかもしれない。

しかしながら18歳を成年年齢とすることで、お金の面でどうしても影響が大きくなる問題がある。相続の「遺産分割協議」の場面がよい例であろう。

これまでの「20歳成人」の制度下においては、相続が開始し、遺産分割協議をする場合に未成年者のために「特別代理人」の選任が必要な場面があった。民法は次のように定めている。

民法826条
親権を行う父又は母とその子との利益が相反する行為については、親権を行う者は、その子のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければならない。

この規定に基づくとこうなる。たとえば父親が亡くなったとして、相続人は配偶者である妻と、その父母の間に生まれた子(19歳)であるとする。子は未成年者であって、親の親権に従う、つまり重要事は親が子どもを代理して行うことになる。

すると母が、子どもを代理して子どものために遺産分割協議をすることになるのだが、協議の相手は被相続人の配偶者、つまり母親自身になってしまうのだ。

これでは子どもの利益を守ることはできないから、家庭裁判所を通して特別代理人の選任をすることになる。多くのケースなら特別代理人は親族の中から選ばれるのであるが、特別代理人は家庭裁判所の監視下にあるため、現実的に子どもに不利な遺産分割協議になることはない。つまり19歳の子の利益が守られる形になるのだ。

■「18歳成人」で、18歳・19歳の「遺産分割」はどうなる?

民法が政府の改正案通りに変わると、親権年齢も引き下げになる。今は19歳であれば未成年者であり、親の親権下にある者も、今後は成人であって親権から離れることになるのだ。

ここで遺産分割協議の場面を想像して欲しい。前述の例で、父親を被相続人とする相続をめぐって母親と子が遺産分割協議をするならば、母親が有利に協議を進めることが考えられはしないか。

18歳や19歳は体こそ大きく、20歳以上の大人と何ら変わることはないが、多くはまだ学生であり、現実的に親の保護下にあるといっていい。親の保護下といえば聞こえはいいが、裏返せば「コントロール下」とも言い換えることもできる。

そんな18歳・19歳の子が民法上の成人だからといって、特別代理人なしに親と遺産分割協議をすることになれば、協議の内容は子どもにとって不利になる可能性があるのだ。

民法は私法の一般法、いってみたら多くの法律の土台であって我々国民の生活に直結する。民法改正からは、当分目が離せそうにない。

碓井孝介(司法書士)

最終更新:8月28日(日)9時10分

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