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“少年以外全部CG”の偉業に挑んだ日本人 松野洋祐さんインタビュー

オリコン 8月28日(日)18時0分配信

 ありえない世界をリアルに見せたり、現実離れしたキャラクターに命を吹き込んだり、映画では欠かせないものになっているVFX(視覚効果)技術は日進月歩。その技術を駆使して、よりクオリティーの高い作品が次々と生まれている中で、「主人公以外全部CG」をうたった作品が現れた。ディズニーの映画『ジャングル・ブック』(公開中)。動物も大自然もすべてCGで表現され、実写もアニメーションも凌駕した映像で世界中を驚かせた作品の制作チームに、日本人アーティストの松野洋祐さんが参加している。

松野洋祐さんが担当した巨大なニシキヘビのシーン

 この映画の大部分の制作を手がけたのは、英ロンドン・ソーホーのほか、世界中に制作拠点を持つVFXスタジオ「MPC(Moving Pictures Company)」。米ハリウッドのメジャースタジオからの依頼がひっきりなしに舞い込み、手がけた作品は枚挙にいとまがない。

 『ジャングル・ブック』のほかにも、今年公開の作品では『インデペンデンス・デイ:リサージェンス』『ターザン:REBORN』『ゴーストバスターズ』『スーサイド・スクワッド』『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』などに関わっている。

 松野さんは2001年に日本大学建築工学部を卒業後、CADセンターに入社。05年にオムニバス・ジャパンに移り、ビジュアルエフェクトアーティストとしてCMや映画『THE LAST MESSAGE 海猿』(10年)で実績を残した。30歳の節目に渡英し、11年にMPCロンドンの広告チームにコンポジターとして入社。14年に映画部門に異動し、火星が舞台のSF映画『オデッセイ』やカーアクション映画『ワイルド・スピードSKY MISSION』にも参加している。

 「日本では全ての工程を任せられるジェネラリストが重宝されますが、こちらは各工程が完全に分業化されていて、それぞれのスペシャリストを集めてチームを作っていく。働き方と求められるスキルのレベルが日本とは違うので、はじめは順応するまでに時間がかかりました」。

 松野さんがスペシャリストになるべく、目指した「コンポジター」とは、いろいろな素材を組み合わせて、最終的な画作りをするポジション。最終的な映像のクオリティーを左右するため、技術はもちろんのこと、芸術的センスも問われる。「多くの人が携わって、苦労して作った努力の結晶を託されるので、良い画を作って納品しないと申し訳ない。そのプレッシャーがある分、良いものができるので、充実感があります」。

 しかも、MPCで働き続けるには「こちらはプロジェクトごとに契約していくので、仕事ぶりが認められないと次のプロジェクトに呼んでもらえない」とかなりシビア。そこで5年、生き残ってきた松野さん。「世界中から腕自慢が集まってくるんです。良いものを作ろうと思う人たちと、それを実現するスキルを持った人たちがいて、相乗効果のようなものが生まれている気がします」。

 『ジャングル・ブック』では、モーグリ(主人公の少年)がカー(巨大なニシキヘビ)と最初に森で出会うシーンや、シア・カーン(残忍なトラ)との決闘シーンを担当した。「一般的な実写合成であれば、実写という担保があるので、そこにCGが違和感なく合成できればある程度のレベルに達することができるのですが、本作のように完全にフルCGだとまずシーンとして魅力的に見せるために素材を足したり、引いたり試行錯誤しましたが、良い経験になりました」。

 「海外で働いてみたい」と思っている人へのアドバイスを求めると、「偉そうなことは言えませんが、行動したいと思ったときに行動するのが一番良いと思います。英語がしゃべれるようになったら、実績を上げてから、と言っているうちはいつまでたっても来られないと思います」。松野さんも渡英してから英語とCGのダブルスクールで学んでMPCに就職するチャンスを掴んでいる。そんな松野さんだが、「やはり日本人なので、最終的には帰国して日本の映像業界を盛り上げたい」と話していた。

最終更新:8月28日(日)18時0分

オリコン