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リーマンショック以降、最高の求人倍率 米中産階級

ZUU online 8月29日(月)9時10分配信

米国における中産階級の求人倍率が、2008年のリーマンショック以来初めて、上位階級と低位階級を上回ったことが、ニューヨーク連邦準備銀行の調査から明らかになった。

以前から問題視されていた「所得格差の縮小」に向けた動きとしては期待が持てる反面、実際は上位階級とほかの階級の「技術格差」に大きな差が開いたままであり、適切な人材不足に苦戦する企業の現状を反映している。

■企業が求める技術や資格をもった中産階級職は人材不足

階級の定義は分析を行う機関によって微差がでるようだ。CNN Moneyが今年6月に掲載した定義では、年収35万ドル(約3504万円)以上を上位、それ以下10万ドル(約1010万円)以上を上位中産階級、それ以下5万ドル(約501万円)以上を中位中産階級、それ以下3万ドル(約300万円)以上を低位中産下級、それ以下を低位階級と定義している。

ニューヨーク連邦準備銀行も3万ドルから5万ドル(約300万から501万円)を中流としていることから、ここでは「低位中産階級」という想定にする。

リーマンショックが引き金となった経済危機から、素早く回復傾向に転じた米国。しかし2010年から2013年にかけて、上位階級と下位階級には210万件の雇用口が解放されたのに対し、新規雇用となった中産階級はその6割にも満たない120万件と、所得格差を押し広げることなった。

2013年に突入してからようやく中産階級職に回復の兆しが見え、2015年までの2年間で220万件の雇用口を記録。上位階級職の150万件、下位階級職の160万件を、はるかに引き離す快挙である。

しかし多くの企業が本当に求めているのは技術や経験のある従業員であり、本当の意味での所得格差が埋まりつつあるわけではない。雇用の拡大は景気回復だけではなく、適切な人材確保に苦戦する企業の焦りを表しているからだ。

階級間の技術の差を埋めない限り、米国の経済回復は不安定性を払拭しきれないだろう。

■中産階級職の応募者の8割が条件に満たず

米国の雇用の一例を挙げると、エクゼクティブ専属秘書の求人の65%が応募条件に大学の学位を要求しているにも関わらず、実際に学位を取得しているエクゼクティブ専属秘書はわずか19%だという。

ハーバード・ビジネス・スクールのジョセフ・フラー教授は、現実と理想のギャップを指摘する一方で、「企業はすぐに戦力となる人材を求めている」と分析。

リサーチ機関、コーポレーション・エクゼクティブ・ボードの調べでは、1件の雇用口に対する応募者は平均30人だが、そのうち8割は応募条件を満たしていないこともわかっている。

その結果、職の埋まらない求人数が増える一方で、パート雇用者が増加。600万人が正規雇用口を求めているにも関わらず、パート勤務を余儀なくされている状況だ。このように「複数のパート職をかけもちして生計を立てなければならない」人々が、過去10年間で170万人も増えた。

中産階級に代表される職業は、ソフト開発などのIT専門家、警察官、看護婦、教師、会計士など、何らかの技術や知識、そして高卒以上の学歴が必要となるものばかり。近年は輸送や建設関連の職も中産階級職に仲間入りしているが、やはり経験や技術が採用基準となる。

中産階級職の求人を埋めるには、通常の求人の2倍の期間である40日を要するそうだ。つまり中産階級の雇用が拡大傾向にある背景には、「企業がより多くの人材を採用している」のではなく、「それだけ適切な人材を見つけにくい」といった事情が色濃く潜んでいる。

米国の雇用市場最大の弱点である、育成プログラムの欠落にどれほど焦点が当てられるかが、米国雇用市場の行く末を大きく左右するだろう。(ZUU online 編集部)

最終更新:8月29日(月)9時10分

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