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「口は災いの元」失言を反省するトランプ氏、「後悔先に立たず」

ZUU online 8月29日(月)12時10分配信

「口は災いの元」という言葉は、英語圏でも「Out of mouth comes evil」として共通の考え方である。だが、どうやら共和党の米大統領候補のドナルド・トランプ氏は、このことわざを軽視ししすぎたようだ。人気の源泉だった歯に衣着せぬ過激な発言が、ここ数週間は転じて「許容できない失言」とみなされて、支持率は急激に落ち始めている。ライバルの民主党、ヒラリー・クリントン候補に各種世論調査で、7~8ポイントほどの大きな差をつけらた。

■クリントン陣営は新型「トロイの木馬」戦術?

一方のクリントン候補は、「ここぞ」とばかりに「オルタナ右翼」なる造語を多用している。意味は、「穏健な共和党主流派政策に満足せず、過激な代替思想に走る一部の者」だという。トランプ氏に不満を持つ共和党員を「オルタナ右翼」のトランプ陣営と敵対させることで内部分裂を誘い、トランプ氏を孤立させる作戦に打って出た。トランプ候補の選挙戦は、すでに崩壊寸前とする論客もいる。

こうしたなか、トランプ候補が自身の発言を後悔しているという。失言が原因で総スカンを食らった米国政治家の発言を振り返り、彼らの発言後の運命などを踏まえて、トランプ氏の今後を予想してみよう。

■歴史は繰り返す?過去から学べない政治家たち

クリントン・トランプ両候補が気をつけないといけないのは、秋口に行われる一騎打ちの討論会や、単独インタビューでの失言だ。

民主党本部が盗聴された1972年のウォーターゲート事件で、後に大統領を辞職した共和党のリチャード・ニクソン氏。「大統領なら、違法行為を犯してもよいのか」と執拗な追及を続ける取材者に苛立ち、「大統領なら、違法行為も許される」と本音で言い返してしまい、自らの墓穴を掘った話はあまりに有名だ。

翻って、1976年のジェラルド・フォード現職大統領(共和党)対ジミー・カーター候補(民主党)の討論会では、フォード氏が「ソ連による東欧支配はない」と、冷戦下の米大統領らしからぬ発言をし、選挙の敗北につながった。

1988年のマイケル・デュカキス候補(民主党)対ジョージ・ブッシュ(父)候補(共和党)の討論会では、死刑反対論者のデュカキス氏に対し、「妻のキティ氏が性的暴行をされ、殺害されても、犯人の死刑に反対するのか」との、回答が極めて難しい問いが投げかけられた。だが、デュカキス候補は、「それでも死刑には反対する」と平然と答えたため、冷血で冷酷な人間と見なされ、大統領選に敗れた。

2012年の共和党大統領候補に名が挙がっていた、サラ・ペイリン元アラスカ州知事。2010年のテレビ番組で、「米国は同盟国である北朝鮮を当然、支持すべきだ」と発言し、候補としての知性や資質を疑われてしまった。

これらの発言は、ただちに失言者が政治的に敗北する結果を生んだ。その後の歴史的評価も、数十年単位で失言が否定的な尾を引いているのが現実だ。

■過激な発言と、人を傷つけ貶める暴言は違うはず

一方のトランプ候補は、こうした「失言=敗北」の歴史的常識を逆手に取り、反移民・女性蔑視・反イスラムなど、過激発言で人気を集めてきた。既存の政治家に不満を持つ中流白人大衆の心を、ガッチリつかんだからだ。だが、大統領選が人気コンテストの段階を過ぎ、実務面での資質や包容力、そして何より実力が問われるフェーズに入った夏頃から、過激発言が逆に支持率を落とし始める。

最たる例はイラクで米兵の息子を亡くした、イスラム教徒のカーン夫妻に対する侮辱的な発言や、オバマ大統領を「イスラム国(ISIS)の創設者」呼ばわりしたことだ。ピュー・リサーチの8月中旬の世論調査では、トランプ氏の支持率が一気に、4ポイントも低下している。また、接戦州(スウィング・ステート)の世論調査でも、敗色が濃くなってきた。

米実業家のグレン・フクシマ氏はトランプ氏の言動を評して、「大統領として必要な気質や成熟、他者の気持ちに対する理解が欠けている、ということを示す結果となった」とまとめている。世間に許されなかったデュカキス氏やフォード氏、ニクソン氏の失敗をまとめて犯し、結果を一気に身に受けている形だ。

■どっちつかずのコウモリは居場所をなくすもの

潮目が変わって、挽回の言い訳を迫られたトランプ氏は、「人を傷つけた発言を後悔している」と告白した。しかし、保守・リベラル双方の米メディアの反応は懐疑的で冷淡だ。そもそもトランプ氏は、発言が二転三転することで知られているため、一時的におとなしくなっても、また本音レベルの過激発言が飛び出すのではないか、と見られているようだ。

また、挽回策として大票田であるヒスパニック系や、黒人の歓心を買うために立場を翻し、「不法移民の強制送還に関する見解を見直す」「私は、ずっと黒人の友人だった」というメッセージをしきりに発信している。この方針転換についても、「何を今さら」という論調で伝えるメディアが多い。「失言=敗北」の歴史的常識は、それを初期の選挙戦で覆したトランプ氏に逆襲している。

■イソップ物語の教訓を活かすのは?

では、トランプ候補の今後巻き返しはありそうか。保守派サイト『ナショナル・レビュー』は、「『英国のEU離脱はない』と予言して外した専門家たちが、『トランプは勝てない』と言っている」と論評し、「ヒラリー圧勝」のシナリオを描く主流派メディアが、11月の本選で冷や汗をかく可能性に言及している。

ここで想定されるのは、圧勝を確信する「うさぎ」のクリントン候補支持者が投票をさぼり、「かめ」のトランプ候補支持者の投票率が伸びるケースだ。

事実、政治評論サイト『ポリティコ』も、「クリントン陣営は、トランプ候補に対して依然、1桁台のリードしか保てないことに焦りを感じている」と伝え、勝負は最後まで分からないとの見方を示した。

現時点でトランプ候補は、巻き返しの切り札を欠いている。しかし、9月と10月の2カ月間に、クリントン候補を窮地に追い込む「ブラックスワン」的な出来事が起こるかもしれず、予断を許さない状況は続きそうだ。(ZUU online編集部)

最終更新:8月29日(月)12時10分

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