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大ヒット『シン・ゴジラ』 ゴジラ襲来による日本の被害額はどれくらい? 試算してみた

ITmedia ビジネスオンライン 8月29日(月)6時40分配信

●新人記者が行く:

 7月29日に公開された映画『シン・ゴジラ』。ゴジラシリーズの29作目にして、日本製作としては12年ぶりの新作。興行収入は8月現在で46億円を突破し、大ヒットとなっている。

【ゴジラによる被害額の合計は……?】

 舞台は日本。東京湾に突如出現した巨大不明生物。謎の生物は街を破壊しながら東京の中心に突き進んでいく。未曽有の危機に、官僚たちは、政治家は、どのように立ち向かうのか……?

 巨大不明生物によって甚大なダメージを受ける日本。果たしてその被害額はどれくらいになるのか。「シン・ゴジラ」にハマり4回鑑賞したという、外資系戦略コンサルティングファームでマネジャーを務めるコンさんに話を聞いた。ちなみに完全ネタバレのため、見ていない人は要注意!

●編集部より

以下、『シン・ゴジラ』についての重大なネタバレが含まれるため、未鑑賞の方はご注意ください。

●まずは第1次上陸から考えてみよう

コンさん(以下、コン): まず試算の前提を整理していきますね。舞台設定・年代設定は諸説ありますが、東京駅の常盤橋ビルが完成しているので、2027年以降と考えます。また「円谷英二が存在しないため、怪獣という概念が一般化していない」という設定になっていますが、それ以外は現実の日本に準拠していると思われます。

青柳: ということは、劇中の日本でも東日本大震災や福島第1原発事故は起こっているということでしょうか。そういえば作中のSNSでも、やけに放射線量への意識が高まっていましたね。

コン: 作中には直接的な言及がないため、断言はできませんが、今回はそのような前提で試算します。

青柳: よろしくお願いします! まずは第1次上陸の被害からお願いします。巨大不明生物(のちにゴジラと呼ばれる)は東京湾に突如出現し、東京湾アクアラインと首都高多摩川トンネルを破壊。姿を変えながら呑川を遡上していきます。さぞ大被害かと思うのですが……。

コン: 第1次上陸の被害は、(A)東京湾アクアライン・多摩川トンネルの損壊による被害、(B)東京湾封鎖(船舶・航空機)による経済被害、(C)大田区蒲田・品川区上陸による建物・インフラの損壊と復旧に分類されます。ここの算定は少しややこしくなるので、次に起こった甚大な被害、第2次上陸と一緒に考えることにします。

青柳: 第2次……。巨大不明生物は身体を冷やすため、一度海に戻っていくんでした。訪れるつかの間の平和な日常風景。しかし巨大不明生物は再び、神奈川県由比ガ浜から上陸し、「なんでまたこっちに来るんだよ!?」と叫んでしまうほどの方向感覚で東京都に向かってきます。

コン: 東京都と神奈川県の県境である多摩川を絶対防衛線に定め、展開されたのは自衛隊による「タバ作戦」ですが、巨大不明生物には通用せず、部隊は戦闘継続不能に。作戦では見たところ10式戦車が7台ほど損壊していたので、10億円×7の70億円の被害が出ました。

青柳: 70億円……。

コン: 絶対防衛線を超えて霞が関に向かってくる巨大不明生物。米軍による「B-2空爆作戦」が展開されます。米軍の攻撃はダメージを与えることができましたが、巨大不明生物による攻撃と背中からの熱線で3機とも撃墜。世界一高い軍用機といわれるB-2ステルス爆撃機は1機2000億円なので、6000億円の被害ですね。まあこちらは米国の被害ですが……。

●壊滅した東京3区。その被害額はいかに

青柳: ここからがその攻撃を契機にして、巨大不明生物がいわば“覚醒”。すさまじい熱線で、東京3区を壊滅状態に追い込みました……。こちらの被害額は大きそうです。

コン: 建物・インフラの損壊と復旧の直接被害額は、2005年に算出されている首都直下地震における想定を元にします。その試算では直接被害は67兆円と出ているんですね。これをもとに、東京区部の直接被害額を42兆円とみなします。このうち、23区中の3区分が全壊したと考え、約5.5兆円。正確には資本ストックの量で重み付けすべきですが、今回は区数で単純に案分しました。

青柳: 3区というと、港区(芝公園・新橋・虎ノ門)と千代田区(霞が関・東京)と……後は中央区(銀座)でしょうか。

コン: そうだと思いますね。巨大不明生物が上陸後通過した品川区、大田区、世田谷区と目黒区を「半壊4区」と捉えて、42÷23×4÷2で3.6兆円。神奈川県の被害はそこまで大きくないとみられるので、ここにその数字を含みます。

青柳: 合わせて約9兆円。

コン: そして大きいのが、多国籍軍の熱核攻撃に伴う避難による、生産額の低下と交通の寸断での間接被害。こちらは首都直下地震と同じく、23区全域と神奈川県・千葉県の一部地域を想定し、約45兆円になります。

青柳: つまり、第二次上陸時の被害総額は、9兆円+45兆円の約54兆円。数字が大きくてクラクラしてきました。

コン: まだまだいきますよ! 映画のクライマックスである「ヤシオリ作戦」。こちらを箇条書きでまとめますと……

・N700系新幹線(無人運転) 50億円×2本=100億円
・無人在来線爆弾(E231系・E233系電車流用) 10億円×10本=100億円
・無人攻撃機(MQ-9リーパー) 17億円×25機=425億円
・特殊建機第1小隊 コンクリートポンプ車 2億円×5台=10億円
・特殊建機第1小隊 タンクローリー 2500万円×10台=2.5億円
・東京駅付近ビル 1000億円弱×7棟=7000億円

 計7638億円ですね。

青柳: 作戦自体は意外とお安い!

●日本経済、どうなっちゃうの?

青柳: ここまでは、巨大不明生物の上陸に関する被害について聞いてきました。でも、それ以外のダメージもかなり大きいですよね。劇中で言われていたのが経済面の打撃。巨大不明生物の襲撃に遭った日本の経済はどうなるんでしょうか。

コン: 為替の動きは、阪神淡路大震災・東日本大震災時でそうだったように、投機筋の動きで第1次上陸後は円高に見舞われると思われます。第2次上陸後は、被害の大きさが明らかになるにつれ、円安や国債の格下げが起こりそうですね。一方で、巨大不明生物の冷温停止、新元素の半減期の短さ、元素変換細胞膜の活用可能性が報道されれば、復興への期待感から円安が収まり、巨大不明生物上陸前の水準に収束すると思われます。

青柳: なるほど。阪神大震災にならうのなら、為替介入などもあるかもしれませんね……。株価はどうなりそうでしょうか。

コン: サプライチェーン被害による操業停止と円高の影響で、製造業の輸出銘柄を中心に大きく値を下げそうです。ただ、第2次上陸後は、円安が進んだ結果、直接被害のない東海地区の製造業を中心に、値を回復すると思われます。また、巨大不明生物に関連して、化学関連銘柄、エネルギー関連銘柄、建設関連銘柄は値を上げる可能性があります。

青柳: あの世界の投資家、毎日大変そう。

●“ポストゴジラ”の日本はどうなる?

コン: 東京都の中心地が深刻なダメージを受け、しかもその原因がいつ再始動するかも分からない状態で存在し続けている。そのような状況下では、首都移転の議論が起こることは必須でしょう。

青柳: 当面は立川でなんとかしのぐにせよ、いつかは立て直さなければいけない。「スクラップ&ビルド」のビルドのターンですね。……でも、どこに移転するんでしょうか。

コン: 過去に検討されたのは、栃木・福島地域、岐阜・愛知地域。可能性があるとされたのは三重・畿央地域です。ただし福島や三重、また大阪などは、いずれも沿岸部なので、第2、第3の巨大不明生物が上陸する可能性を考慮すると、沿岸部への首都移転は世論が受け入れない可能性が高いと思います。

青柳: なるほど。あの世界では「巨大不明生物は海から来る!」というイメージが強いですもんね。そうなると……。

コン: 沿岸から離れた東濃地方への移転が落としどころではないかと。リニア開業後なので、リニア中央新幹線の岐阜県駅付近になるのが現実的です。ちなみに、企業は名古屋・大阪、次いで新首都への移転が進むはずです。

青柳: ちなみに、東京3区の除染はどうなると思いますか?

コン: 我らが尾頭ヒロミさんが言っていたように、新元素の半減期は20日間とみられるので、除染費用は発生しないと考えます。ただし、国から被災者への支援金はかなり大きなものとなるかと。東日本大震災における被災者生活再建支援法に基づいて考えてみますね。今回の長期避難世帯は、熱核兵器による攻撃対象地域の世帯なので、適用されるのは東京23区ほぼ全域。長期避難による基礎支援金が100万円、加算支援金が新たな住宅の建設・購入費で200万円。合わせて1世帯当たり300万円が、23区内の総470万世帯に支払われる場合、最大で14兆円です。

青柳: 14兆円……!

コン: 東日本大震災で拠出された被災者支援金は約4400億円なので、過去最大規模です。こんな風に金額が大きくなる原因の1つが、矢口たちが巨大不明生物の第1次上陸時に成立させた被災者支援法案。第1次上陸時には被災世帯が少なかったので問題なかったのですが、第2次上陸時には被災世帯が飛躍的に増加するので、国庫をゴリゴリに圧迫する可能性があります。

青柳: まさかあんなことになるとは、誰も予想できなかったでしょうから、責められない!

コン: 「予想できなかった」といえば、大河内・里見内閣の初動ミス。各地で損害賠償を求める集団訴訟が起きる可能性もあります。ただし「予見可能性がなかった」として、裁判所は国の過失を認めない可能性が高いです。

●総計80兆円!

コン: これまで上げてきた被害額をまとめましょう。

・第2次上陸時 54兆円(直接被害9兆円、間接被害45兆円)
・各作戦費用 1.4兆円
・首都移転費用 12兆円
・被災者への支援金 14兆円

 合わせて、81.4兆円です。建物・インフラ損壊による直接被害よりも、生産額の低下による間接被害のほうが5倍近く大きいのがポイントです。この間接被害額の大きさは巨大不明生物による被害と関係なく、熱核攻撃の対象地域の範囲によって規定されます。まさに、ゴジラより怖いのは……私たち人間!

青柳: 80兆円って……何円ですか!?(混乱)

コン: 阪神大震災が10兆円、東日本大震災が17兆円、熊本地震が4兆円の被害だったので、比べてみるとその被害のレベルが分かるかもしれません。ちなみに、日本における食品産業が80兆円ほどだといわれています。

青柳: ゴジラ=食品産業。

コン: しかもこの数字には、企業業績の悪化や、「買い控え」から来る家計消費支出減は含んでいません。また、間接被害は、巨大不明生物が東京駅付近にとどまり、熱核兵器の照準から外れない限り、継続・累積します。ゴジラが1年とどまるごとに、90兆円ずつ被害額が累積していく……。90兆円というと、日本の国家予算(一般会計)と同額です。

青柳: ゴジラが東京駅にいるかぎり、日本の国家予算が毎年吹っ飛ぶんですね……。

コン: ただし! 巨大不明生物上陸による被害額は80兆円規模ですが、この試算の下敷きとなった首都直下地震の被害想定額は、これを上回る112兆円です。日本人は、「ゴジラという“虚構”」よりも恐ろしい、「首都直下地震という“現実”」に向き合わなければなりません。

青柳: 現実 対 虚構……! ありがとうございました!

コン: 礼はいりません。仕事ですから。

最終更新:8月29日(月)6時40分

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