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データ活用に本腰のセゾン、なぜ「Tableau」と「Azure」を採用したのか

ITmedia エンタープライズ 8月29日(月)11時22分配信

 今まで生かしきれていなかった自社のデータをどうビジネスに活用すればいいのか――。データ活用を進めようとする企業が、最初に悩むポイントだろう。

【画像:セゾンDMPの構成図。セゾンDMPはクラウド上にあり、個人情報を抜いた形で各データベースからデータを送信しているという】

 ここ数年、特にWebを活用したマーケティングに積極的な企業の間で、関心が高まっているのが「プライベートDMP(Data Management Platform)」だ。自社サイトへのアクセス履歴からPOS、販売データ、顧客データなど、自社独自のマーケティング関連データを集約する基盤として、導入する企業が増えてきている。

 「セゾンカード」と「UCカード」を展開するクレディセゾンも、そんな企業の1つだ。同社はデジタルガレージと協力し、約1年かけてカード会員の各種情報を統合管理する大規模なデータ基盤「セゾンDMP」を構築。2016年6月に稼働を開始した。

●データは豊富、でも所在がバラバラ……

 クレディセゾンがプライベートDMPの導入を決めたのは、同社がカード会社ならではの有用な情報を豊富に持っていながら、それを活用しきれていなかったという背景がある。セゾンDMPの開発と運用を担当する、同社ネット事業部 インキュベーション部 部長の吉田慎一さんは次のように話す。

 「クレジットカードの会員になる際には必ず本人確認が必要なので、カード会社は他の業種に比べて正確な個人属性情報を持っています。顧客の購買履歴のほか、10年ほど前からWeb会員向けに『永久不滅.com』というポイントサイトを中心にWebでのカード利用の促進施策を行っており、Web上の購買や行動履歴もあります。しかし、それらの情報は社内でバラバラに存在していたため、活用しきれていませんでした。これを一元管理して活用しようというのが、セゾンDMPです」(吉田さん)

 全社横断的なデータ活用のソリューションとして、プライベートDMPを選んだクレディセゾン。新しいことへのチャレンジに対しては、前向きな社風なのだという。

 「インキュベーション部は、ベンチャー企業と連携して自社を成長させていくというオープン・イノベーションに取り組む部門でもあります。他社との交流の中でDMPの情報に触れ、これは取り組むべきだと決まったのです」(吉田さん)

●データを活用し、広告事業やFinTechにも乗り出す

 クレディセゾンがDMPの構築で目指すものは「CRM(顧客関係管理)の強化」「広告事業の強化」、そして「Fintechへの対応」の3つだ。直近では、特にCRMの強化に注力するという。

 同社はこれまでも会員属性や購買履歴などのデータは持っていたが、カード情報とWebの行動履歴といった複数のデータベースを横断する分析はできていなかったそうだ。

 各データを統合することで、例えば「“ハワイ旅行”というキーワードで検索をした」というWeb上の行動履歴があるAさんに対し、カードの会員情報として持っている年代、性別、直近のカード利用状況なども加味し、旅行前の利用限度額増額の案内をしたり、旅行関連用品の広告を表示したりといったことができるようになる。

 さらに、「検索をする」といった目に見える行動をしない会員であっても、カードの利用履歴などからAさんと似た属性を持っていると分かれば、「海外旅行に対する潜在的ニーズを持つ会員」として需要喚起の対象に加えるといったことまで見据えているという。

 このほか、オーソリゼーションデータを使って、クレジットカード利用時にプッシュ配信で別の商品を勧めるといった展開も考えているようだ。こうしたターゲティングは広告事業の強化にも生かされる。今後は機械学習や人工知能を使い、広告の価値向上を目指すそうだ。FinTechについては、クレジットカードを作る際の与信にデータを活用する予定という。

●現場がデータを活用する風土を“セルフサービスBI”で加速

 セゾンDMPの構築と並行して、同社ではセルフサービスBIツールの導入も進めていた。クレディセゾンでは従来、顧客情報や購買情報を分析するツールとして、テラデータのほかSASを導入しているが、さらに多くの現場に近いメンバーも分析に参加することで、新たな知見を得られるのではないかと考え、セルフサービスBIの導入を検討し始めたという。

 SAPやPower BIなど、さまざまなツールを約半年ほど比較検討した結果、クレディセゾンでは「Tableau」を採用することに決めた。その理由について、同社ネット事業部 インキュベーション部の井上洋平さんは次のように話す。

 「Tableauを選択した理由は主に2つあります。1つはUIやUXが優れており、社内で広く使ってもらえそうだと思ったことです。やはり、SQLを意識せずに使える点はセルフBI全般のメリットですね。もう1つはセキュリティの観点です。DBを開放したくなかったため、TableauがセゾンDMPと同じく、Microsoft Azure上にインストールできることが決め手になりました」(井上さん)

 現在は部内の数人で使用しており、分析を行っているところだという。効果が表れれば、導入の範囲を広げていく構えだ。

 「例えばカード事業部のリボルビング払いの利用促進を担当しているメンバーが、これを使ってカードの利用促進をする新しいクラスタを発見するとか、そんな形になっていくのが理想ですね。そのためには、使いやすいツールが身近にある環境が大事です。

 これまでクレディセゾンでは、顧客情報や購買情報などデータベースは分かれていたものの、それぞれのデータベースに対して皆が使える分析ツールが用意されていて、それがノウハウとして伝授されてきていました。だから、マーケティングが強い会社になったのだと思うのです。そんな取り組みがセゾンDMPでもできるようにしていきたいですね」(井上氏)

●コンプライアンス部門も巻き込み、クラウド導入に踏み切る

 プライベートDMPの導入と聞くと、各種データ統合に耐えうる形に整備するという点で苦労しそうだが、クレディセゾンではその点はあまり問題がなかったそうだ。一方で、苦労したのは、いかにセキュリティを担保するかだった。

 2015年に経済産業省は「クレジットカード産業とビッグデータに関するスタディグループ」を設置し、ビッグデータの利活用に関する報告書をとりまとめた。スタディグループには吉田氏らと同じネット事業部の磯部泰之データマーケティング部長がメンバーとして参加しており、そこからの情報も得ながら、今後の法制度の改正等も想定し、セゾンDMPでは、会員データを特定の個人を識別できないように加工して利用している。

 さらに、同社としては初めてクラウドサーバを導入するという決断も大変なポイントだったという。今後増大していくデータ量を想定して自社サーバを立てるのは非効率。スケーラビリティやコストの観点からはクラウドサーバは有効な選択肢ではある。

 「セゾンDMPに個人情報は一切入っていないのですが、やはりわれわれは信用第一の業態なので、万が一のときの影響は計り知れません。情報をしっかり守っていくということが大前提です。そのため、データを社外に預けるという選択には、最初は抵抗があり、さまざまな社内調整が必要になりました」(吉田氏)

 クレディセゾンの場合、カードの会員情報やWeb行動履歴といったデータは、オンプレミスで管理しているが、セゾンDMPのプラットフォームはMicrosoft Azureを採用した。

 導入の際はAWSも検討したとのことで、「どちらも機能や価格の面では、大きな差はなかったが、今回はセキュリティ担保のために必要なコミュニケーションが取りやすかったのがAzureだった」(吉田氏)という。

 例えばデータセンターの見学を行い、井上氏は「ここまでやっているのか」と、そのセキュリティ強度にあらためて信頼感を抱いたそう。そして、見学の際にはコンプライアンス部門のメンバーにも同行してもらい、その感覚を共有した。ステークホルダーを巻き込むことで、社内の理解を得てクラウド導入に踏み切ることができたのだ。今回はAzureを選択したが、今後はAWSなどの他ベンダーのクラウド導入も含めて、さまざまな可能性を検討しているという。

 近年、クレジットカード業界は年会費やポイントの還元率、加盟店の規模だけではなく、「サービス」で差別化を図る方向に切り替えつつある。DMPを構築し、データ活用で付加価値を狙う――これがこれからのクレジットカードビジネスのスタンダードになるのかもしれない。

最終更新:8月29日(月)11時22分

ITmedia エンタープライズ

TEDカンファレンスのプレゼンテーション動画

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