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壁や家具にはかかりません! 床ふきロボット「ブラーバ ジェット240」の地味だけどスゴイ技術

ITmedia LifeStyle 8月29日(月)22時7分配信

 水を「プシャ!」と噴出して、床にこびりついた汚れを、洗剤入りのパッドをこすりつけてきれいにする床ふきロボット「ブラーバ ジェット240」。既存の「ブラーバ380j」よりも本体はコンパクトになったが、洗浄力は格段に上がったという。ここでは開発責任者である米iRobotのCOOクリスチャン・セルダ氏に、本体の内部構造や動作の仕組み、パッドの秘密まで細かく聞いた。

ブラーバジェットが水を噴射した瞬間

――今回発表された「ルンバ960」と「ブラーバ ジェット240」は、ともにマッピングを行いながら掃除をしますが、前者がカメラを搭載しているのに対し、後者は非搭載です。その仕組みにどのような差があるのでしょうか?

セルダ氏:ルンバ960とブラーバ ジェット240は同じアルゴリズムは使ってますが、ルンバ960の方がマッピング性能は高くなってます。それはルンバ960の方が、移動時に対応しなければならない条件が厳しいからです。ブラーバは床ふきロボットであり、基本的には固い床しか走行することがありません。1回の動作範囲も狭く、解決すべきシチュエーションも比較的シンプルです。一方、ルンバ960はロボット掃除機であり、固い床だけでなく、カーペット、畳、段差など、あらゆる床面に対応できなければなりません。それだけ取り組まなければならないシチュエーションも複雑です。だからこそ、ルンバにはより高いマッピング精度が必要であり、そのためにカメラを搭載しています。

――既存製品のブラーバ380jはルンバシリーズとは異なる「ノーススター・ナビゲーションシステム」を採用していましたが、なぜブラーバ ジェット240はルンバと同じアルゴリズムを採用したのでしょうか?

セルダ氏:それは発表会でCEOのコリン・アングルがスマートホームについてプレゼンしていたことと関係があります。将来的にルンバもブラーバも、スマートホームの移動式センサープラットフォームにすぎなくなり、そのためには今よりもさらに精度の高いマッピングナビゲーション技術が必要となるからです。ノーススターナビゲーションシステムではそれが実現できません。

――とはいえ、ブラーバ380jが最大100畳以上の掃除(乾ぶき)に対応しているのに対し、ブラーバ ジェット240は最大15畳と、これまでのブラーバユーザーからするとやや狭い感じが否めません。このあたりについてはどうでしょうか?

セルダ氏:ブラーバ ジェット240は、日本や中国といったアジア地域を一番のターゲットに据えた商品として開発されました。アジア地域の比較的狭い住環境であれば、その対応畳数でも十分だと考えております。実際、何人ものそういった住居に住むモニターの声を集めて、開発に取り入れてます。確かにアメリカなどの広い家で使うにはやや対応畳数が足りないかもしれませんが、例えば都市部のアパートなどであれば、ブラーバ ジェット240はピッタリだと思います。ブラーバ380jとブラーバ ジェット240は、使う住環境の広さによって使い分けてもらえると思います。

――しかし、技術的には新しいものですし、ルンバ960などは最大112畳を網羅できるのですから、ノーススターナビゲーションシステムと同様か、それ以上の広範囲をカバーすることもできたのではないでしょうか?

セルダ氏:カバーするエリアに合わせ、実はブラーバ ジェット240では、ありとあらゆるシステムを変えています。バッテリーも交換式でコンパクト化しましたし、水タンクも小さくしています。実はナビゲーションシステムだけではないんです。

――ターゲットとする市場に合わせて作ろうとした結果、このサイズ感が最適だったということですか?

セルダ氏:その通りです。例えばアメリカの場合、洗面台とトイレの間はブラーバ ジェット240よりちょっと大きいくらいのスペースがあるようです。日本の場合は、ソファとテーブルの間が、このブラーバジェットと比べると一回り大きいくらいとなっていることが多いというリサーチ結果もあります。このような住環境のサイズに合わせて最適化しました。

●使い捨てパッドの秘密

――ブラーバ ジェット240では、使い捨ての3つの専用パッドと洗濯可能なクリーニングパッドがありますが、それぞれ装着するだけで、最適なモードで動きます。この仕組みはどうなっているのでしょうか?

セルダ氏:それぞれのパッドの裏側には形状の異なる穴が空いています。その形状を本体のライトセンサーが読み取ることで、どのパッドが装着されたかをブラーバ ジェット240が認識します。使い捨ての専用パッドと洗濯可能なクリーニングパッドでは同じモードが使えますが、穴の形状は異なります。それは、使い捨て専用パッドには洗剤が含まれているのに対し、洗濯可能なクリーニングパッドにはそれが含まれていないほか、実は水の噴射量もわずかに差があるからです。

――水の噴射量を変えたのは、あえて洗浄力も変えているということですか?

セルダ氏:いえ、パッド自体の吸収量に差があるから変えているのです。どちらを使っても、同じだけのパッド内に湿度を保とうとするからです。

――どちらの方がより吸い取るのでしょうか?

セルダ氏:使い捨ての専用パッドの方が吸い取ります。このパッド自体が実は非常に洗練された技術なのです。この青い「使い捨てウェットモップパッド」で説明しますが、床面に接する青いファイバーが振動により汚れを擦り落とし、その内側にある白い素材には小さな穴が空いていて、擦り落とした汚れを内側へと取り込みます。さらにその内側には“おむつ”のような超吸収素材を配することで、一度キャッチした汚れを再び床面に広げるようなことがないのです。

――超吸収素材がないと擦った時に広がってしまうのでしょうか?

セルダ氏:そうですね。このため、使い捨ての専用パッドは実は洗濯可能なクリーニングパッドよりも優れていると個人的には思います。ただ、使い捨てのパッドはランニングコストがどうしても掛かるので、そういうのに抵抗があるという消費者のために、洗濯可能なクリーニングパッドも用意しているのです。でも、間違いなく一番床面をキレイにできるのは、青い「使い捨てウェットモップパッド」です。しかも白い素材の中には洗剤も含まれています。

――それは一般的な中性洗剤ですか?

セルダ氏:はい、成分自体は通常の中性洗剤です。ただ、こういったパッド用のものではありますが。シンプルに見えるパッドにも、実は多くの技術が含まれています。

――オレンジ色の「使い捨てダンプスウィープパッド」も同じように洗剤が含まれているのでしょうか?

セルダ氏:カラーが異なるだけでパッド自体は同じです(洗剤も含まれている)。ただ、実はロボットの動きが変わります。青い「使い捨てウェットモップパッド」を装着すれば、同じ場所を3回丁寧に、念入りに水ぶきしますが、オレンジ色の「使い捨てダンプスウィープパッド」では2度になります。当然、青いパッドの方が床に振りまく水の量は多いですし、オレンジのパッドの方がふき動作自体は速いです。

――乾ぶき用の「使い捨てドライスウィープパッド」は、他のパッドと違って、内側が立体形状になってますが、これはどうしてでしょうか?

セルダ氏:乾ぶき用のパッドに吸収剤の役割ではありません。構造上、ピラミッドのようになっているのは、ふき掃除する時に、髪の毛をたくさん絡めとるようにするためです。が単純に平たいと、髪の毛などを押してしまって絡めとることができません。段差があることで、乾いた床面で髪の毛などを拾い上げながら取り去ることができるのです。

――なるほど。パッドの開発にも時間がかかったのではないですか?

セルダ氏:パッドの開発チームとロボットの開発チームが平行して作業を行っていました。同じくらい期間をかけて開発しています。

――パッドを装着することで動作モードが自動的に切り替わる仕組みは分かりやすい反面、パッドは必ず専用のものを購入しなければなりません。ボタンなどで切り替える方法のほうが汎用性が高かったのではありませんか?

セルダ氏:実は使いやすさのほかに、今後、ほかの利用方法を提案する時に、専用のパッドを使うことが最適だと考えました。例えば、固い木の床などにブラーバ ジェット240が“ワックスがけ”をするといった用途を拡張するといったことも考えられます。つまり用途が増えたとき、自動モード切り替えのほうが分かりやすいという判断です。もっとも、ワックスがけについてはアイデアレベルの話で、このモードが将来的に拡張するかは分かりません。

●壁や家具にはかからない、正確に水を噴射する技術

――水を噴射する目的は、洗浄力のアップが一番の目的ですよね

セルダ氏:そうですね。実はこのノズルも特許技術でして、ノズル自体はBMWのワイパー部やライト部のウォッシャーノズルを設計した会社と共同で設計しました。

――それはなぜですか?

セルダ氏:とても正確に水の噴射量と噴射するエリアを調節できるノズルを探したからです。ノズルから噴射される水は、ブラーバ ジェットの前方に四角い形でまくようになっています。ただ、ムラがあったり、水の量が少なすぎたりすると洗浄力が落ちてしまいます。一方で水が多すぎたり、方向や噴射の強さを間違えると、壁や家具、そのほか水を掛けてはいけない場所に掛けてしまう危険性もあります。水を使うロボットだからこそ、このノズルには特に正確さが必要なのです。

――四角い形に水をまく、というのは本体の横幅に合わせているということですか?

セルダ氏:そうです。まったく同じ幅に水をまきます。その前にロボットは前方へ進み、そのエリアに水が掛かってはいけないもの(壁や家具など)が存在しないことを確認し、バックしてから、そのスペースにぴったり合うように水をまきます。例えばそこに物があったり、ラグマットが存在する場合は絶対に水を噴射することはありません。

――壁や家具に水がかかることはない、ということですね

セルダ氏:その通りです。壁があるときは、一度壁まで進み、バックしてから水を正確にまきます。決して壁に水がかかることはありません。家具も同じです。一見とてもシンプルに見える水の噴射ですが、すごく考えられています。

――その正確に水を噴射するノズルというのは、どういう仕組みになっているのでしょうか?

セルダ氏:内側は四角ではなく、台形になっています。水が入ってきて、通り抜ける流れの間に、無数の柱のようにピンが立っていて、水の流れる量を微妙に調整することで、必要なだけの水がピッタリと出てくる仕組みです。

――本体が細かく振動することも洗浄力を発揮するのに重要な要素の1つですが、振動の仕方はどういう感じなのでしょうか?

セルダ氏:左右に細かく振動します。小さなモーターが内蔵されていて、モーターが細かく静かに振動させるのです。携帯電話のバイブレーションに近いイメージですね。

――どんな汚れにもっとも強い効力があるのでしょうか?

セルダ氏:油汚れは得意ですね。通常、油が多いほど汚れは落ちにくくなりますが、ブラーバ ジェット240ならかなり落とせます。例えば1週間放っておいて、こびりついてしまった汚れでもしっかりと落とせますよ。

――特定の場所を掃除するスポットクリーニングモードも付いていますか?

セルダ氏:あります。スポットクリーニングモードはもっとも汚れが取れるモードで、およそ1×0.5mというエリアを何度もきれいにします。これがもっとも洗浄力の高いモードです。

――ブラーバは静音性が高いことも満足度を押し上げる要因だと思われますが、振動することで駆動音は大きくなってしまったのではないですか?

セルダ氏:いえ。振動はしますが、音はほとんどしません。床に置いて使っていると音はほとんど分かりません。相当耳を近づけないと聞こえません。夜中に使っても大丈夫だと思います。

――バッテリーを交換式にした意図は?

セルダ氏:複数のバッテリーを持つことができ、しかも交換して掃除をし続けることができます。スピーディーに掃除できます。

――おそらくルンバとブラーバを同じフロアで使い分けるユーザーも多くいると思います。ブラーバでもルンバの「バーチャルウォール」が使えたら便利だと思うのですが、いかがでしょう。

セルダ氏:残念ながらそれはできません。その代わり、ブラーバ ジェット240は“バーチャルなバーチャルウォール”を備えています。

――“バーチャル・バーチャルウォール”ですか?

セルダ氏:正確には、スタートさせる位置より後ろのエリアには行かない「バーチャルウォールモード」です。「CLEAN」ボタンを長押しすると起動し、天面が左右に線を描くように光ります。このラインより後方には行かない、という意味です。これもマッピングナビゲーションだからこそ実現できた機能なのです。

 一見、コンパクトでかわいい「ブラーバ ジェット240」だが、その中には効果的にふき掃除を行うための技術がたくさん詰め込まれていた。しかも壁や家具に水をかけないように作られたノズルや「バーチャルウォールモード」など、使い勝手を左右する部分にも手抜かりはない。最新の床ふきロボット掃除機の実力がお分かりいただけただろうか。

最終更新:8月29日(月)22時7分

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TEDカンファレンスのプレゼンテーション動画

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