ここから本文です

トヨタ、下期の支給鋼材価格を据え置き-系列部品メーカー「無難な着地点」

日刊工業新聞電子版 8月29日(月)15時30分配信

 トヨタ自動車が、部品メーカー向けに卸す2016年度下期(10月-17年3月)の自動車用支給鋼材価格を据え置いた。この判断に、鋼材を使う系列部品メーカーは「無難な着地点だった」との受け止めだ。鉄鋼メーカーの値上げにより価格是正を目指す鋼板流通業者からも、「デフレ懸念が払拭(ふっしょく)される」と歓迎する声が多い。ただ、「値下げ」という判断も考えられただけに、次回の価格改正で調整される可能性もあり、手放しでは喜べない。(山下哲二)

■販価を維持

 市中の鉄鋼流通業者は、鉄鋼メーカーが製品値上げを進める中、トヨタが決める支給材価格の行方を固唾(かたず)をのんで見守っていた。

 これに先駆けて、非公開で行われたトヨタと新日鉄住金による鋼材価格交渉(チャンピオン交渉)では、引き下げられた可能性があるからだ。交渉の判断基準となる原材料価格は、直近では上昇傾向にあるが、16年度上期(16年4-9月)は下落。円高も進んだ。

 千葉の鋼板流通業者は支給材価格が据え置かれたことに、「今回はトン当たり3000円程度の下げ幅を予想していたが、販価が維持できそうだ」と歓迎する。

■デフレ回避へ

 また、都内の鋼板流通業者は、「煩雑な価格改定作業が省けるため、トヨタにもメリットがある」とみる。

 さらに、ある商社幹部は、「価格に影響力を持つトヨタが支給材価格を下げれば、デフレ進行を後押しすることになり、鉄鋼だけでなく産業界全体に与える影響が大きい」と指摘する。

 13年10月、豊田章男トヨタ社長は、閣僚と経済、労働界のトップが意見交換する「政労使会議」に出席し、「経済の好循環」を目指す政府側の賃上げ要請などに協力した経緯がある。安倍晋三政権の経済政策「アベノミクス」を後押しする格好だ。「今回も政府への配慮が働いた」(商社幹部)とみる。

 今回の支給材価格の据え置きは、国内鋼材価格の立て直しに動き始めていた鉄鋼大手にとって歓迎すべき判断だが、依然楽観できない状況だ。

■厳しい交渉

 今後、電機、造船など大口需要家との価格交渉が残されている。円高が進んでおり、厳しい交渉が予想される。

 さらに、円高で収益悪化が見込まれる自動車メーカーが、コスト削減に向けた本格的な取り組みを始めた。今後の焦点は、タイヤ、ガラスなどの主要部材メーカーに加え、関連産業との価格交渉に移りそうだ。

最終更新:8月29日(月)15時30分

日刊工業新聞電子版