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日銀、次の一手はマイナス金利拡大か

ニュースソクラ 8月29日(月)12時0分配信

金融政策は限界 早く規制緩和、構造改革を

 安倍内閣が2012年末の成立以来、幾度かの選挙に勝利しながら一貫して高支持率を維持してきた背景には経済の好パフォーマンスがある。消費者物価が4か月連続でマイナスといっても不動産、株式の資産デフレは大きな目で見れば改まった。

 雇用情勢を見ても有効求人倍率は1.3倍とバブル期並みの労働需給逼迫となっている。日銀の黒田総裁が導入した異次元緩和は相応の実績を残したといえよう。

 日銀は9月にこれまでの金融政策の「総括的な検証」を実施する、と発表した。一方で安倍内閣は総事業費28兆円の総合経済対策を打ち出し、9月下旬の臨時国会で補正予算等の法的手当てを目指している。

 日銀が「総括的な検証」を打ち出すのは次回9月21日の決定会合であり、時期的に見ても政府との一体的な政策運営をプレイアップしなくてはいけない。従って追加緩和は必至、と市場関係者はみているようだ。

 市場関係者は、新たな金融緩和手段を導入する、あるいは国債の買い入れを80兆円から引き上げる、マイナス金利を深堀りする、といった施策が打ち出されるものとみている。
 
 筆者は後述のようにマイナス金利政策を中心に据えて日銀のバランスシートをこれ以上拡大させるような政策は見送るべきだと思う。そもそもインフレ目標の2%を17年度後半にも達成する、という目標が過大ではないか。そのために14年10月のバズーカ2とか、16年1月のマイナス金利導入といった大胆な措置に動かざるを得なかったわけである。

 インフレ目標の2%を引っ込める必要はないが、無理に時期を区切る必要もない。中期的に達成すればよし、としてはどうか。

 日銀の国債、ETF,REITの買い入れ額はもう目一杯まで達している。マネタリーベース(日銀が供給する通貨)が200兆円を超えてもマネーストック(世の中に出回るお金の総量)は大きく増えていない。多額の国債買い入れ代金を振り込まれて金融機関の日銀当座預金が増えただけである。ETFの買い入れでファーストリテーリングなど日経平均採用銘柄では日銀が筆頭株主に躍り出ているところもある。

 これ以上の買い入れは市場メカニズムを劣化させるだけだ。日銀の保有する国債の残高はあと2年で300兆円に達しよう。仮に日銀がその時にインフレ目標を達成していれば、長期国債の利回りは2~3%になるのが自然である。その時の日銀の国債評価損は50兆円程度に達していよう。もちろん日銀は大幅な債務超過に陥り、国民の税金で埋めるか会計基準を変更して損失を認識しないようにすることくらいしか手立てはない。

 これまで日銀は、国債買い入れ額を年間50兆円、さらには同80兆円に増やしたうえ、平均残存期間も白川総裁時代の3年から7年さらに10年と伸ばしてきた。しかし、これ以上の買い入れ増額や残存期間の延長は金融正常化を狙った「出口」を円滑にすることを考えれば限界であろう。

 巷ではヘリコプターマネーの導入が叫ばれている。バーナンキ前連邦準備理事会(FRB)議長が来日して安倍総理と面会したのを機にその憶測が広まっている。ヘリコプターマネーとはヘリコプターに乗って空からお金をばらまくという究極の景気刺激策である。

 現実的には日銀が国債を直接引き受け、さらに償還負担を生じない(永久債形式)ように工夫したうえ、公共事業や補助金でお金をばらまくことだ。賛成論者は一回限りで実施すればよいと簡単に言うが、いくらでも使える財布を手に入れた政治家がどう行動するかは自明である。結果的に太平洋戦争後と同様の悪性インフレを招く公算が強い。

 日銀では現在の金融緩和を「マイナス金利付き量的・質的緩和」と名付けている。しかし、当座預金にマイナス金利を付ける一方で当座預金を積み上げさせる(ベースマネーの拡大)のは論理矛盾である。

 マイナス金利を導入したスイス、スウェーデン、ECB(欧州中央銀行)などでもマネタリーベース目標と併存させているところはない。マイナス金利をECBのようにマイナス0.4%程度まで拡大する選択肢はあろう。

 一方でマイナス金利は金融機関の収益を悪化させ、資産運用の機会を潰すなどの弊害も大きい。ただ金融機関の収益悪化を生んでいるのはマイナス金利を預金者に転嫁できないことが大きい。

 個人預金に対してマイナス金利適用とか口座管理手数料徴求などは社会政策上も困難であろう。しかし、法人預金については、設備投資にも賃上げにも向かわない眠れるキャッシュフローを取り崩させる狙いからも法制面の手当ては要するであろうが、マイナス金利適用を考えてもよいのではないか。ただマイナス金利政策に動いてもあと数回が限度であろう。

 すでに金融政策でできることは限界にきているというのが日本だけでなく、先進国全般における共通認識である。もともと金融政策は時間選好(将来の所得を前借りする)を利用したに過ぎない。生産性の低下、人口減少をバックにした潜在成長力の低下がさえない景気展開の根本にある。一刻も早く、規制緩和、構造改革を実施して潜在成長率を引き上げることが望まれる。

俵 一郎 (国際金融専門家)

最終更新:8月29日(月)12時0分

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