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北方領土は今 佐賀県内の中学生視察、元島民の思い聞く

佐賀新聞 8月29日(月)11時30分配信

 北海道の納沙布(のさっぷ)岬から目と鼻の先にあるはずの歯舞群島は、濃い霧に覆われていた。県内の中学生15人が18~21日、北方四島と近い根室市や羅臼町を訪れた。戦後71年が過ぎても解決していない北方領土問題。生徒たちは元島民から話を聞いたり施設を見学したりして、歴史と現状を学んだ。同行し、現地の今を伝える。

 視察は、子どもたちに北方領土問題を考えてもらおうと、北方領土返還要求運動佐賀県民会議が企画した。県内の中学6校から生徒15人が参加した。

 「終戦後、突然ソ連兵が島に押し寄せてきてパニックになった」。国後島から24キロ離れた標津(しべつ)郡標津町で話を聞いた元島民の福沢英雄さん(76)は、混乱した当時を振り返った。

 福沢さんは歯舞群島の一つ、多楽(たらく)島で5歳まで暮らした。「銃を突きつけられ、脅されながら島を追い出された」。一家は命の危険を感じながら、自家用船で本土への脱出を決断したという。海を渡る途中、嵐に遭い「父と母は船が沈まないよう、積んだ食料を海に投げ捨てた。今でも忘れない」と声を震わせた。

 それでも「今、島で暮らしているロシア人は何も悪くない」と福沢さん。ビザなし交流を通してロシア人と触れ合い「返還されたときのため、いがみ合うのではなく互いを理解することが重要」と説いた。

 根室市の北方館では、戦前の四島に関わる資料や地図などを見学した。同館の清水幸一副館長は「島では3世代、4世代目のロシア人が生活しており、『領土を返せ』と簡単に言えない状況になっている」と語ると、生徒たちは問題の根深さに黙り込んだ。

 「私たちの世代は北方領土問題について知らない人が多いので、もっと学校で学ぶ機会を増やした方がいい」。北方領土問題がなぜ解決しないのかを知りたくて参加した鬼塚中1年の中野蒼子さん(12)は、国全体で問題と向き合うことの大切さを感じていた。

 三根中校長の石橋節二団長は「現地で聞いたこと、感じたことを親や友達に伝えてほしい。中学生が、返還に向けて何ができるかを考えて」と呼び掛けた。

最終更新:8月29日(月)11時30分

佐賀新聞