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ソフトバンクが壱岐島の「仮想発電所」で生み出す価値とは

ニュースイッチ 8月29日(月)12時10分配信

EVは走行目的だけでく、家庭などの蓄電池として共有

 ソフトバンクグループのSBエナジーは、壱岐島(長崎県壱岐市)で小さな電源を束ねて発電所のように機能させる「仮想発電所」の実証事業を始めた。2017年1月から家庭と工場にある蓄電池や電気自動車(EV)を遠隔制御し、大規模太陽光発電所(メガソーラー)の発電量を調整する。メガソーラーからの送電を一時停止する出力抑制を回避できるシステムを構築し、再生可能エネルギーと蓄電池の普及を目指す。

 SBエナジーの実証は、電力需要を上回るほどメガソーラーの発電量の増大すると、通信回線を使って蓄電池やEV電池に充電を指示する。増えすぎた発電量を充電によって消費させ、島内の電力需給を安定化する。経済産業省のバーチャルパワープラント構築実証事業に採択された。

 実証ではICTをフル活用する。前日に九州電力から要請があると、SBエナジーが蓄電池の充電残量を遠隔から確認。メガソーラーの発電した電力をできるだけ多く充電できる残量を確保して蓄電池を待機させる。

 実証には出力1960キロワットのメガソーラーを運用する壱岐開発(壱岐市)が協力する。蓄電池やEVの所有者にも参加も呼びかけ、17年1月から3月まで充電制御を実施する。

 SBエナジー経営戦略部の衣笠正徳部長は「実際に出力抑制が行われている壱岐島で技術を確認し、本土で始まった時に備えたい」と、壱岐を選んだ狙いを話す。

 現状の出力抑制は電力会社から要請があると、メガソーラーが発電していても送電を止める。需要を超える電力が電力網に流れ込まないようにするためだ。実証システムが機能すると蓄電池の充電分は送電ができるので、発電しても無駄になる電力が減る。発電事業者も売電収入の減少を抑えられる。

 蓄電池の台数が多いほど出力抑制を回避できるようになり、再生エネの導入量も増やせる。家庭などで日常的に使っている蓄電池を一時的に活用するので、高額な蓄電池の設置負担を抑制できる。これらが仮想発電所の効果だ。

 実証では充電制御の確認にとどまるが、「蓄電池の充電残量、充電に協力してもらいたい時間に駐車しているEVの台数など、データを集めて知見をためたい」(衣笠部長)と意気込む。

 事業化は19-20年以降の見込み。同社は充電の協力者に利用料を支払うビジネス形態を検討している。蓄電池の所有者には節電以外にも経済的メリットが生まれる。「利用目的を増やし、稼働率を上がることが蓄電池のコスト低減や普及につながる」(同)と期待する。

<解説>
 仮想発電所は何パターンかある。以下、蓄電池を活用する2パターン。

(1)電力不足が起きた時、家庭・工場にある蓄電池が放電し、不足分を補う。
 普通なら火力発電所が緊急稼働し、供給力を増やすことで電力不足を解消します。家庭・工場にある蓄電池、EVを仮想発電所に使えば、緊急時に備えて火力発電所を待機させておく必要がなくなります。火力発電所の維持コスト・燃料費の削減に貢献し、電力料金の抑制になる。

(2)再生エネが作りすぎた電力を、家庭・工場にある蓄電池に充電する。(SBエナジーの壱岐島のパターン)
 再生エネが電力を作りすぎると、使い切れない電力が供給されている。電力があふれると電力網はパンク(停電など)する。そこで今は作りすぎそうだと送電を停止する「出力抑制」が実施されている。発電のタイミングで蓄電池・EVを充電するれば、作りすぎた電力を消費でき、送電網の需給がバランスする。

 EVは走行目的で購入するが、仮想発電所の協力金をもらえれば走行以外の価値が生まれる。家庭の蓄電池も自宅の節電以外に価値が生まれる。メガソーラーも、発電しても送電できずに無駄になる電力が減る。

 再生エネの利用量が増えると、火力発電所の燃料費も抑制でききる。蓄電池・EVを「シェード・エコノミー」する仮想発電所は、社会的メリットが多く、実用化が楽しみだ。

最終更新:8月29日(月)12時10分

ニュースイッチ