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プリンターをぶっ壊せ-会社員のストレス解消に

ウォール・ストリート・ジャーナル 8月29日(月)10時37分配信

 ライアン・ショックリー氏はどれほど職場のプリンターを憎んでいたのか? その感情がどれほど強かったのか、彼自身に説明してもらおう。ショックリー氏は米ミズーリ州セントジェームズのフォード車販売店、ハチソン・フォードで働いている。

 プリンターは、まだ用紙が残っているのに用紙切れのエラーメッセージを出した。誰かがトナーを交換する時、黒い煙が舞い上がり、シャツやズボンを汚した。紙詰まりを取り除こうとしてカバーを開け、手にやけどをしてしまった。

 ショックリー氏は最後にはうんざりし、最近人気のある儀式を同僚と一緒に行った。「打ち壊しの儀式」だ。販売店の裏にある野原にプリンターを持ち出し、鉄パイプ2本を使って粉々に壊した。その様子は動画にも収めた。「この機械は、決してわれわれに協力的ではなかった」

 オフィスで働く人々にとって長年怒りの対象となってきた性能の良くないプリンターだが、今では存亡の危機に直面している。

 その理由の一つは、ペーパーレス(紙のない)オフィスの台頭だ。一方で、業界の奇妙な経済学(古いプリンターを修理するよりも、新しいものを買ったほうが安くつくという論理)によって、調子の悪いプリンターは、怒れるオフィスワーカーによる打ち壊しの的になってしまった。

 オフィスワーカーたちは、災いのもとになっているプリンターを公の場で破壊することで、きずなを深めている。これは、1999年の犯罪コメディ映画「オフィス・スペース」(訳注:日本では劇場未公開だが「リストラ・マン」のタイトルでテレビ放送)がきっかけになっている。

 マイク・ジャッジ脚本・監督の同作品は興行的に失敗作だったが、その後、一部に熱狂的ファンがいるカルトクラシック映画になった。人気になった理由の1つに、作中で3人のエンジニアが野球のバットを使い、オフィスにあるプリンターをたたき壊す場面がある。スローモーションで映されるこのシーンは、ラップ・グループ「ゲトー・ボーイズ」の曲「Still」の心地よい旋律がバックに流れる。

プリンター破壊してストレス解消

 無機質な米企業文化を描いた映画「オフィス・スペース」だが、その背景にあるメッセージが現在、あらためて企業の中で支持されつつある。プリンター破壊を通じて従業員のストレス解消を計画している企業が少なくないのだ。

 全米各地のアラモ・ドラフトハウス系列の劇場では、「オフィス・スペース」観賞パーティーを予約しようと各企業が競っている。従業員たちは職場をテーマにした小道具を手にしながら、この映画を見る。観賞後、プリンターを持ち出し、それを破壊するのだ。その際、「仕事をさぼる最良の口実コンテスト」で優勝した者が野球のバットなどで最初の一撃を加えることができる。

 テキサス州ダラスでアンガー・ルーム(怒りの部屋)という会社を経営するドナ・アレクサンダー氏は、顧客にモノを破壊させて稼ぐのをビジネスにしているが、破壊対象となるプリンターの在庫が不足気味だ。全米各地では「怒りの部屋」が各地に登場しており、顧客たちは皿や古い家具などをぶちこわすことで怒りを発散させている。中でもプリンターは最も需要の大きいアイテムだという。

 アレクサンダー氏は1カ月に一度、粗大ごみ収集日に車を運転してあちこちに行く。家主が歩道の脇に粗大ごみを出すからだ。他の人たちはリサイクル可能なモノを求めているのかもしれないが、同氏の獲物は捨てられたプリンターだ。

機能の拡充で一層のストレスに

 カナダのトロントで「打ち壊し」サービスを提供しているバトル・スポーツでは、顧客は45分間で45カナダ・ドルを払い、プリンターなどを思うままに壊す。共同創業者スティーブ・シュー氏によれば、同社は1週間にプリンターを少なくとも15台使う。廃品として収集できた最も大きな機械は、企業パーティーの顧客のためにとっておくという。

 プリンター専門の市場調査会社アクショナブル・インテリジェンスのチャールズ・ブリュワー氏によると、映画「オフィス・スペース」のプリンター破壊の場面をめぐる議論は、プリンター業界のカンファレンス(会議)でも話題になったという。

 同氏は「メーカーはプリンターを改良して使い勝手を良くしようと懸命になって努力している。だが、それによって機械はより複雑になっている」と指摘。「それが一層のフラストレーションの原因になり、人々は無力感を覚える。野球のバットが登場する時だ」と語った。

 過去何十年にもわたって修理ビジネスを運営してきたIOTソリューションズ(ミネソタ州イーガン)のボブ・ブレナン最高経営責任者(CEO)は、プリンターがかくも憎悪の対象になるのは、それが通常、報告書作成ないしプレゼンテーションのための最終段階にあるからだと推測。

 「人々は仕事を終えたいと願っているのに、プリンターが壊れているのを知る。あたかも自分たちを嘲笑しているように感じる。そこであらゆるフラストレーションの矢面に立たされるのだ」と述べた。

By BRADLEY OLSON and SARA RANDAZZO

最終更新:8月29日(月)10時37分

ウォール・ストリート・ジャーナル

TEDカンファレンスのプレゼンテーション動画

斬首動画が何百万回も再生されてしまう理由
昔は街の広場で、現代はYouTubeで。歴史を通じ、公開処刑には必ず人だかりがつきものでした。人が処刑というものを、恐ろしく不快に感じながらも、つい気になって見てしまうのはなぜか。フランシス・ラーソンが人間と公開処刑の歴史、中でも斬首刑に焦点を当てて解説したこのトークは、気分の良い内容ばかりではありませんが、同時に興味をそそること間違いないでしょう。