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米国ではSNSに背を向ける10代も

ウォール・ストリート・ジャーナル 8月29日(月)13時37分配信

 米首都ワシントンに住むブライアン・オニール君(14)は、交流サイト(SNS)を利用していない。先日、友人らがどんな夏休みを過ごしたのか気になった際には、直接彼らに聞いてみたという。同年代の友人のほとんどがSNS利用者である中で、今や珍しい行為だ。しかしブライアン君は友達のインスタグラムをのぞくこともなければ、自分が撮った写真を公開することもないし、フェイスブックもやらなければ、スナップチャットも使わない。「友達とつながるためにはSNSが必要ってわけじゃないんだ」と彼は説明する。

 SNSに依存しないブライアン君は、彼の世代では少数派だ。2015年に調査機関のピュー・リサーチ・センターが発表したところによると、米国に住む13歳から17歳の10代のうち92%が毎日インターネットを利用し、そのうち24%が「ほぼ常に」携帯電話などを通してネットにつながっているという。この年齢層の71%がフェイスブックを使い、約半分がインスタグラムを利用し、41%がスナップチャットでメッセージのやりとりを行う。そして75%が2つ以上のSNSサービスを利用しているという。

 この調査によると、典型的な米国の10代はフェイスブックで145人の友達とつながり、インスタグラムには150人のフォロワーがいるという。

 そんな状況にもかかわらず、SNSを利用したくないティーンがいたらどうなるのだろうか。他人との交流の多くがネットで行われる今、その輪に参加しないことは非社交的だとされる可能性すらある。それでもあえてSNSを利用しない子供たちは、何を得て何を失っているのだろか。

 インターネットとSNSの時代が到来する以前、夏休みの間に友人と連絡を取りたい場合はキャンプ先などから手紙を書くか、あるいは友人に直接電話をするしか手段がなかった。「私が彼の年齢だった頃は、夏休み中ずっと電話を片手に持っていた」とブライアン君の母レベッカさんは話す。「でも息子が誰かと会いたい時は、まずメッセージかメールを送って、その後に直接会うようにしている」

 筆者が取材したSNSを利用しない10代の多くが、最新技術に対して苦手意識を持っているわけではなかった。実際はその逆で、SNSを利用しない10代でもその多くは携帯電話を所有し、メッセージ機能を使って友達と連絡を取っていた。彼らはネット事情にも詳しく、流行にもしっかりとついていっている。もちろん、SNSのこともよく理解している。彼らは単純にSNSが嫌いなだけなのだ。

 10代とSNSの関係について研究をするノースカロライナ大学チャペルヒル校のジャケリーン・ネシ氏は、独自の調査と全国統計を根拠に「10代の5%から15%がSNSの利用を控えていると予測される」と話す。

 SNSと距離を置く10代は、自分の投稿に「いいね」がつくのを待たなければいけないことに魅力を感じないという。SNSの利用を控えることを選んだ若者たちは、フェイスブックやインスタグラムを通して友人や知人とやりとりするよりも、彼らと直接顔を合わせて交流する方が心地よいと話している。

 SNSの利用は「かなり時間を使うし、みんな没頭してしまう傾向がある」と話すのは、テキサス州ダラス近郊で育ち、アイオワ州にある大学に通い始めるというアニー・ファーマンさん(19)。「友達にツイートを送るぐらいなら、直接会う方がいい。1日中ずっと携帯を見て過ごすぐらいなら、現実世界を楽しみたい」とファーマンさん。

 バージニア州マクリーンで7歳から12歳まで4人の子供を育てるケイティ・カンクネルさんは、「携帯に熱中している子供たちが、携帯がない状況でも同じように何かを楽しんでいるのを見るとうれしい」と言う。彼女の4人の子供たちはSNSを利用していなく、夏になると外で遊んで楽しみを見いだす。「子供たちはグループを作って、山や川のなかで遊んだりふざけたりして、活発に楽しんでいる」と彼女は話す。

仲間の輪に入れないことはない

 SNSの利用を控える子供たちは、必ずしも仲間の輪から外れている感覚はないという。ブライアン君も友人の「ほぼ全員」が何かしらのSNSを使っているが、友人の間で何か大きな出来事があっても自分だけそれを知らないような状況は今までなかったと話す。「何かあったらみんな教えてくれるしね」とブライアン君。

 前出のアニー・ファーマンさんも「たまに友達が言っているジョークが分からなかったりすることもあるけど、ジョークが分からなくても9割以上はどうでもいいこと」と話す。

 14歳の子供を首都ワシントンで育てるマーニー・ケニーさんは、SNSの利用を控えることで「自分の子供が友達に溶け込めなくなることを恐れる親が多い」と指摘。その恐怖心を持った上で子供がどうすべきかを考えてしまっていると話す。しかし彼女の娘のラヤさはSNSとは距離を置くが、あえて輪に加わらない方がメリットがあると感じるという。「SNSなんてそのほとんどがゴシップ」と彼女。

 10代のSNS利用に関しては、「ネットいじめ」や不審者との接触などが問題視されることが多い。しかしより大きな問題は、SNSを利用する10代が他のユーザーと自分を常に比較して見てしまう点だ。そして比較対象は友人だけでなく、ジジ・ハディッドやカイリー・ジェナーといったモデルやセレブたちのインスタグラムなども含まれる、

 ワシントンで2人の娘を育てるスー・ローゼンは、自らの私生活を他のSNS利用者と比較するのは「健康的ではないと思う」と話す。「誰だってフェイスブックには完璧で幸せな一日を切り取って掲載する。でも自分をそれと比較しても意味がない。なのにSNSはそれを教えてくれない」

 SNSに寄せられた他者からのコメントに10代がどのような影響を受けるのか。今春サイコロジカル・サイエンス誌である研究が発表された。研究者らはインスタグラムと似たプログラムを利用し、それを使用するユーザーの反応を機能的磁気共鳴画像法(fMRI)を使って測定。

 その結果、10代のの多くは自らの画像に付けられた「いいね」の数など他者からの反応を元に、自らのネットでの行動を決めていることが明らかになった。ただし周りの意見からの影響が悪く作用する場合ももちろんある。10代の多くは、知り合いが気に入った写真ならば自分も「いいね」を積極的にに選択する傾向があると研究者は指摘。仮にそれが飲酒をしている写真やマリフアナを吸っているような写真であっても、周りと同じように支持を示してしまうという。

 周囲からの反応を圧力のように感じてしまうことは、何も新しいことではない。ただSNSの場合は、掲載した情報に対する反応のスピードが圧倒的に速く、なおかつ掲載する側もそういった素早いリアクションを期待している部分が違う。前出のマーニー・ケニーさんは自身の娘のことについて「SNSが10代に与える影響は極端だ」と話す。SNSを利用することで子供たちは常に周りから評価される身になり、公開した内容によって自分たちの価値が決まるような感覚になっていると彼女は言う。

 18歳のキャサリン・シルクさんは「インスタグラムでのやりとりに価値を見いだせない」と話す。「友達と食事をしていても、写真を撮ってインスタグラムに載せよう!っていう話になる。だったら、目の前にいる私や他の友達と話せばいい」と彼女は言う。その場にいない人間のために時間を割くことに意味を感じないと話すキャサリンさんは、SNSの利用者が「SNSをやるべきときとやるべきでないときの境目が分からなくなってきている」と話す。

 SNSと距離を置く10代は、SNSを利用しないことへの不安はあまりないとも話す。「もし何か大切なことを友達に伝えたいとしたら、私は電話をする。それで十分」とキャサリンさん。

 「正直、大人になってからも必要でない限りSNSを使うとは思えない」と話すのは、前出のブライアン君。「SNSには何か新しいこととか独創的なものはない。10年もすればSNSのブームはたぶん終わってると思う。その頃にはみんな違うもので暇つぶしをするようになっていると思う」

(筆者のクリスティーン・ローゼン氏はニュー・アトランティス誌のシニアエディターを務めるほほか、ニューアメリカ財団のフェロー)

By CHRISTINE ROSEN

最終更新:8月29日(月)13時37分

ウォール・ストリート・ジャーナル

TEDカンファレンスのプレゼンテーション動画

斬首動画が何百万回も再生されてしまう理由
昔は街の広場で、現代はYouTubeで。歴史を通じ、公開処刑には必ず人だかりがつきものでした。人が処刑というものを、恐ろしく不快に感じながらも、つい気になって見てしまうのはなぜか。フランシス・ラーソンが人間と公開処刑の歴史、中でも斬首刑に焦点を当てて解説したこのトークは、気分の良い内容ばかりではありませんが、同時に興味をそそること間違いないでしょう。