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なぜ? 「ギックリ腰なら安静に」は“百害あって一利”なし

日刊ゲンダイDIGITAL 8月30日(火)9時26分配信

 ギックリ腰を起こしたのでコルセットを着けて安静に――。腰痛対策の“あるある”だが、実はこれが腰痛をさらに悪化させている。

「近年、腰痛の研究が飛躍的に進み、これまで常識とされていたことが当てはまらなくなってきた」

 こう話すのは、「腰痛は『動かして』治しなさい」(講談社新書+α)の著者で、東京大学医学部付属病院特任教授の松平浩医師。ギックリ腰に関しては、ベッドなどで横になるのは長くても2日間まで。西欧諸国の多くの腰痛診療ガイドラインでは「2日を超えるベッド上での安静は支持すべきでない」という記載があるという。

 松平医師らの研究では、ギックリ腰で医療施設を受診した勤労者のうち、「安静を指導された群」は、「活動してよいと指導された群」の3倍以上再発リスクが高く、再発回数が多く、慢性腰痛に陥りやすいという結果だった。つまり、安静はNG。むしろ、「百害あって一利なし」ともいえる。

「安静がよくないのは、腰を支える筋肉が衰え、脊椎や背筋を含む運動器の柔軟性が落ち、血流が悪くなって疲労を促進させる発痛物質が増えるから。さらには、腰痛を常に意識して動くため、かえって腰痛への不安や恐怖が強くなり、脳の機能に不具合を生じ、脳が持つ痛みを和らげる働きが妨げられるのです」

 ギックリ腰は、発症直後は激痛が走るが、まったく動けないのは数分。落ち着けば電話口まで這ったりする程度はできる。その段階で、「ギックリ腰は基本的に心配する必要がない青信号の腰痛! だけど大事にし過ぎると治りにくい黄信号に変わりやすいという。私は大丈夫」と自分に言い聞かせることが重要だ。

「痛み止めの薬を嫌がる日本人は多いですが、短期間だけきちんと使い、できそうなことは普段通りする。活動的であるほど、腰痛は気にならなくなります」

 ギックリ腰や慢性腰痛は、ほとんどが原因となる明確な病気がない。椎間板や腰の関節のちょっとしたズレや傷、炎症や血流不足が関係している。これを「非特異的腰痛」といって、通常は遅くとも3カ月以内によくなる。だから安心して、体を動かすべきなのだ。

■「恐怖回避思考」が痛みを長引かせる

 しかし、3カ月経っても腰痛が消えず、悩んでいる人も少なくない。

「先に挙げた脳の機能の不具合から痛みが長引いている可能性が高い。私は『恐怖回避思考』と呼んでいます。痛みの体験が痛みへの恐怖を引き起こし、過剰な警戒心から腰を過度に大事にする回避行動を取らせ、体を動かさなくなる。恐怖回避思考が持続している限りは、腰痛から解放されず、再発を繰り返すのです」

 役立つのが松平医師考案の「これだけ体操」だ。

「最初はできる範囲で。回数を重ねるごとに骨盤への押し込みを強くし、反らす角度を少しずつ大きくしていくとより効果的。『痛いかも』という気持ちから『意外にできる』『痛くない』と、いい方向に循環し、恐怖が薄れていきます」

 つまり、正しい情報で恐怖心をなくす。楽観的に痛みと向き合えるようになり、痛みは軽快し、やがては回復に向かう。

「これだけ体操」は非常に簡単だ。

①足を肩幅より広めに平行に開き、膝を伸ばし、リラックスして立つ
②両手をなるべく近づけてお尻に当て、指は下向きにそろえる
③息を吐きながら上体をゆっくりしっかり反らす。3秒キープし、元に戻す。腰痛持ちなら、治療として3秒キープを10回、予防のためなら3秒キープを1~2回が目安

 病院へ行く前に、まずは自分でやってみよう。

最終更新:8月30日(火)9時26分

日刊ゲンダイDIGITAL