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やっぱり「ふんどし女子が増えている」はステマなのか

ITmedia ビジネスオンライン 8月30日(火)7時44分配信

 つい最近、『「ふんどし女子」密かに増殖!売り上げ年々増加「一度締めたら手放せない」その魅力とは?』(産経新聞 8月27日)というニュースが注目を集めた。

【なぜ「ふんどし女子推し」なの?】

 「へえ、ふんどしってそんなにいいものなんだ」と素直に驚く方もいる一方で、「どうせふんどしメーカーが仕掛けたステマでしょ」と疑い目を向ける方も少なくない。

 確かに、そのような疑念が生じても仕方がないふしもある。

 記事内では、女性用ふんどしの製造・販売を行う「プラスチャーミング」の経営者・中川ケイジさんが、ふんどし普及のために設立した「日本ふんどし協会」にフォーカスをあて、『女性たち10人以上』が集まったイベントの様子や、協会Webサイトで掲載されている『内蔵の働きが活発になって血行が良くなる』という医師のコメントを引用し、ふんどし着用のメリットを紹介している。

 市場拡大を目指す事業者が、ホニャララ協会みたいな団体を設立して、メディアなどに働きかけて「ブーム」を演出するという建て付けが、かなり手垢のついたPR手法だということは、もはや広告・PR業界以外の方でもよく知るところだ。「怪しい」と感じる人がいるのもよく分かる。

 さらに、この報道に対して疑惑の目が向けられる最大の理由は、一部の方から指摘された「ブラ男と同じで『この数年、よく増えている』とマスコミは言うけど、周りでそんな人見たことも聞いたこともない」というツッコミだ。

 これは一理あって、実はこの4年ほどマスコミは事あるごとに「ふんどし女子が増えている」と触れ回ってきた。

 例えば、これまでさまざまな「ブーム」をつくりだしてきたNHKの『あさイチ』では、2012年春に、「下着かぶれ」特集を行い、その中で締め付けのない「ふんどし」を愛好する女性を紹介している。この反響は大きく、2014年6月の「オンナの股関節スペシャル」の冒頭でも再び、『増加中!? ふんどし女子』を扱った。

 『あさイチ』だけではない。地方紙でも以下のように似たような切り口が定期的に出されているのだ。

『ふんどし女子 じわり増加』(2012年6月14日 北海道新聞)

『身も心も開放感 ふんどし女子増加』(2012年6月29日 産経新聞大阪版)

『ふんどしブーム来た!? 女性にも愛用者じわり』(2013年2月24日 熊本日日新聞)

『手放せなくなる心地よさ “ふんどし女子”増殖中』(2014年5月24日 下野新聞)

●「ふんどし女子推し」が始まった理由

 いくら「じわじわ」といえども4年も増え続けているのであれば、「私、今日ふんどしなんだ、テヘ」とかうれしそうに語っている女子がいてもいいはずだが、そういう話はほとんど耳にしたことがない。世の人々の「最近多いよね」という肌感覚と、報道にあまりに大きな「ズレ」が生じており、それが「ステマ」という疑念を生じさせているのだ。

 では、なぜ4年前から、一般人の体感を上まるほどの、「ふんどし女子推し」がメディアで始まったのか。

 これはやはり「ふんどし協会」の役割が大きい。プラスチャーミングがふんどしをおしゃれにアレンジした「SHAREFUN」を発売した2011年12月とほぼ同時期に協会は立ち上がっているのだが、先ほど紹介した報道でも、「ふんどし女子が増えている」という根拠としてちょいちょい取り上げられているのだ。

 そう聞くと、「じゃあやっぱり協会によるステマじゃないか」と思う方もいるかもしれないが、個人的にはそういう飛び道具的な話ではなく、これはあくまで協会の「地道なPR活動」の成果だと思っている。

 「ふんどし協会」は、ふんどし普及に貢献してくれた有名人を「ベストフンドシストアワード」として毎年、受賞式を開催しており、過去には壇蜜さんも受賞している。また、2月14日を「ふんどしの日」として認定。今年は江ノ電で、「愛のふんどし告白電車」というイベントも開催している。実際にこれが「ふんどし普及」にどれほど役立っているかはさておき、マスコミが食いつきそうなことをコツコツと積み上げてきているのだ。

 これが「ステマ」ではないと思う理由は他にもある。

 実は「ふんどし女子」という言葉が注目を集めたのは近年だが、「女性用ふんどし」というカテゴリー自体は20年近い歴史があるのだ。

 例えば、1996年8月の日経流通新聞には『大脳を刺激して人体エネルギーを高め、新陳代謝や血行を促す効果』があるという女性用ふんどしパンツ「幸福の赤いふんどし」が紹介されている。2006年には、通販会社「ミュー」が、「女性用ふんどし」を「パンドルショーツ」(パンドルは仏語で「垂れる」の意)として販売。百貨店でも扱われるようになり、健康志向が高い一部の女性たちから支持を得ていた。

●種をまいて、ようやく芽が出てきた

 「ふんどし女子」というあまりに狙った感のあるワードがゆえ、「これ、絶対にバズりますよ!」とドヤ顔でプレゼンをしている広告代理店のクリエイターの姿と結びつけてしまう方も多いだろうが、これまで経緯を踏まえると、以前から続く地道な「種まき」が、ここにきてようやく「芽」を出してきている、という見方の方がしっくりとくるのだ。

 実際、歴史を振り返れば、「ふんどし協会」以外にも繊維業者、芸大生などなさまざまな人たちが「女性用ふんどし」を普及してきた。中でも、現在の「ふんどし女子」ブームの礎を築いたと言っても過言ではないのが、先ごろの参院選にも出馬された女優・高樹沙耶さんだ。

 2008年2月、日本テレビの『メレンゲの気持ち』に出演された高樹さんは「ふんどし」を愛用していることを告白。これは反響がすさまじかった。先ほどの「パンドルショーツ」も発売当初は月30枚ほどしか売れなかったが、高樹さんの発言を受けて、『多い月で3000枚が売れるまでに』(2009年4月23日 北海道新聞)なったという。

 そう聞くと、またまた「ステマだ!」とか騒ぐ人がいるかもしれないが、高樹さんが身に着けているのは、どこかの商品などではなく、自らの「手作りふんどし」だ。当時のブログにも商売っ気のかけらもない「動機」が語られている。

 『フリーダイビングやハワイに住むことで地球の素晴らしさと奇跡を悟り、地球人として品性品格のある生き方をしたいという思いで、ふんどしをしめなおしたというのが私のふんどしのいきさつです』

 「いや、そうだとしても、あの人にそんなに影響力はないでしょ」と思う方もいるかもしれないが、これには当時の世相も関係している。もはや忘れている方も多いだろうが、2007年に公開された映画『不都合な真実』の影響もあって08年ごろは「エコ」が大ブーム。地球に優しいというだけで企業も消費者も飛びついたものだ。

●「女性用ふんどし」の歴史を振り返る

 日経消費マイニングによれば、「買い物にマイバッグを持っていく」と答えた女性は2005年には36.6%だったが、2008年になると63.8%と大きく増加しており、中でもガラッと意識が変わったのが、高樹沙耶さんと同世代である40代女性。05年にはわずか22.2%だったのが、08年には63%と3倍近い伸びをみせているのだ。

 こういう女性たちの一部が、千葉・南房総でエコな生活を実践する44歳の美人女優が愛用する「エコな下着」に注目をしたとしてもおかしくはない。

 『メレンゲ』後もバラエティ番組などで取り上げられた高樹さんの「ふんどしカミングアウト」は市場の活性化にもつながった。08年12月にはワコールの子会社「ウンナナクール」でも「ななふん」という女性用ふんどしの発売を開始するのだ。

 もちろん、同社では「高樹さんのふんどし発言にのっかりました」などということは言っておらず、あくまで締め付けのないブラジャーの開発中、セットとなるショーツをどうすべきか悩んでいるとき、「ふんどし」が思い浮かんだ、としているのだが、タイミング的にもまったくの無関係とは言えないだろう。

 このように「女性用ふんどし」の歴史を振り返ると、10年近い歳月をかけながら地道に愛用者を広げてきたことが分かる。そういう「土壌」ができたところに、各メーカーの好調さや、「ふんどし協会」のユニークなイベントが積み上がって、メディアの「ふんどし女子推し」につながった可能性が高いのだ。

 ただ、その一方で個人的には「ふんどしステマ」を仕掛ける勢力がいたとしても不思議ではないとも思う。

 実は国内女性下着市場は人口減もあって縮小傾向にある。ワコールも苦戦が続き、08年に客層を広げるために買収したピーチ・ジョンも一時期、大きく落ち込んだ。現在は回復基調にあるが、かつてほどの勢いを取り戻せない。

 市場が縮小していく中で、企業が成長を続けていくには、ユニクロの「ブラトップ」のように新たなカテゴリーを生み出すこととされる。いわゆる、「カテゴリー・イノベーション」だ。消費者に対して、これまでの常識にはないないような新しい価値観、スタイルを提案していくのだ。

 いまではイロモノ扱いされる「女性用ふんどし」もそのひとつになりえる。

 「それはないわー」と笑う女性も多いかもしれないが、実は「ふんどし女子」と歩調を合わせるように、近年になって注目されている概念がある。

 「ノーパン睡眠」だ。

●これからも続々と出てくる

 90年代に一世風靡(いっせいふうび)した「ノーパン健康法」の焼き直しみたいなもので、下半身を締め付けないことで、美容にも健康にもいいらしい。テレビ番組では、タレントのマギーさん、ダレノガレ明美さん、中村アンさん、大島優子さん、浅田舞さんなどが実践していると発言しているという。

 少し前、東洋経済オンラインでも『意外?「ノーパン睡眠」が理想的な3つの理由/下半身の締め付けは、男にも女にも悪影響』(7月4日)という記事が配信され、「パンツの締め付け」が体に及ぼす悪影響が説かれていた。ちなみに、これは大手繊維メーカー・帝人の提供記事だ。

 日本の女性たちがノーパンで寝ても誰も得はしないが、「睡眠中に下半身の締め付けを行わない下着」というカテゴリーが創出されれば、潤う人々が大勢いる。

 「ステマ」かどうかはさておき、「ふんどし女子が増殖中」というニュースがこれからも続々と出てくるのは間違いなさそうだ。

(窪田順生)

最終更新:8月30日(火)7時44分

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