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IIJ、2017年度に“フルMVNO”サービスを提供――今までと何が変わる?

ITmedia Mobile 8月30日(火)19時35分配信

 インターネットイニシアティブ(以下、IIJ)は、NTTドコモに対して、8月29日に加入者管理機能である「HLR/HSS」の連携に関する申し込みを行い、同日に承諾されたことを発表した。IIJは国内初の「フルMVNO」となり、2017年度下期にデータ通信サービスを開始する予定。

【Apple SIMのようなことも可能に】

 IIJの鈴木幸一会長は「将来的には、ワイヤレス通信が将来のネットワーク社会の基本的なインフラとして、大きな役割を果たす。HLR/HSSの連携によって、私ども自身が新しいサービスを作れる第一歩となった」と語った。

●格安SIMのイノベーションは限界に来ている

 IIJは2008年にMVNOサービスを開始して以降、LTEサービスや音声サービスを提供するなどサービスを拡張させてきた。同時に、多くのプレーヤーがMVNOに新規参入し、特にドコモとの「レイヤー2接続」が可能になってから、MNOにはない独自色の強い料金プランが増えた。また、2014年頃から海外メーカーがSIMロックフリー市場に参入し、端末のバリエーションも増えた。IIJの島上純一CTOは、「レイヤー2接続によって、スマートフォンの市場でイノベーションが起きた」と評価する。

 一方で、最近はMVNOのサービスも同質化が進んでおり、同じような料金体系、端末などが並んでいる。「レイヤー2のイノベーションがそろそろ限界に来ている。MVNOがさらに発展するには、さらなるブレークスルーが必要」と島上氏が話すように、新たなブルーオーシャン(未開拓の市場)を見つけるべく、HLR/HSSの開放を求めてきた。

 IIJは2014年からHLR/HSSの機能開放に向けて、ドコモとの事業者間協議を実施しており、2年越しで了承を得た形となる。「29日の申込書の承諾は、あくまで形式的なもので、実際は2年間協議を続けてきた」(IIJ)

●1枚のSIMで複数の事業者と接続できる「マルチカントリーSIM」

 HLR/HSSとは「Home Location Register/Home Subscriber Server」の略で、SIMカードの情報を管理するデーターベースのこと。携帯電話がキャリアのネットワークに接続する際の認証と、端末がどの交換機の管轄下にあるかの位置情報を記録する。

 では、HLR/HSSをMVNOが保有することで、何が変わるのか?

 現在、MVNOが展開している「格安SIM」は、ドコモやKDDIなどのMNO(大手キャリア)からSIMカードを借りる形態となっており、SIMカードに書かれている情報をMVNOがコントロールすることはできない。

 しかしMVNOがHLR/HSSを保有することで、独自のSIMカードを発行でき、より多様なサービスを提供できるようになる。例えば、「Apple SIM」や「Google Project Fi」など、1枚のSIMカードで複数のキャリアを切り替えて利用できるようになる。

 IIJが想定しているのは、海外のMNO/MVNOと提携し、より安価なローミングサービスを提供すること。同社はこれを「マルチカントリーSIM」(仮称)と呼ぶ。独自のローミングサービスを提供するには現地のキャリアと交渉をする必要があるが、海外ではフルMVNOが提供するローミングサービスが既に存在するため、「ドコモよりは交渉のハードルは低い」(IIJ)という。

 また、IIJは10月1日からau回線を利用した「IIJmioモバイルサービス タイプA」を提供し、ドコモとauの2回線を利用できるが、フルMVNOでは、1枚のSIMカードでドコモとauの回線を切り替えることも技術的には可能だ。ただしその際には、ドコモだけでなくKDDIのHLR/HSSを保有する必要があるので、ハードルはさらに上がる。KDDIのHLR/HSS開放については「今のところ予定していない」(鈴木氏)とのこと。

●SIMカードの形状やデザインの自由度も増す

 法人向けの用途として、組み込み型のSIM(eSIM)や、耐振動性、耐候性を備えたSIMカードの開発も可能になる。「決められたSIMの形ではなく、基板の上に埋め込むこともできる。SIM自体もハードウェアで、振動、熱、過酷なところで使うにはいろいろ不都合なので、埋め込んだ方が便利なことがある」と島上氏は話す。

 もう1つ外観について、SIMカード台紙のデザインもより自由に変更しやすくなる。今まではドコモからSIMカードの情報が書き込まれた形でIIJに納品されていたため、印刷時にSIMの金属部分を傷つけるなどして通信不能になってしまった場合の損失が大きい。フルMVNOではSIMの情報を書き込む前に印刷できるため、失敗しても損失は少ない。IIJは「痛SIM」を発行したことがあるが、今後はこうした独自デザインのSIMが増えるかもしれない。

 機器の製造ラインでSIMを埋め込み、必要なときに接続サービスを利用できるように、後からSIMをアクティべーションすることも可能になる。現在は出荷先(国や地域)によって異なるSIMを入れる必要があるため、製造ラインでSIMを装着することはできない。

 このほか、NFCをSIMカードに組み込んで金融サービスの認証に使うことや、総務省が構想している、SIMカードとマイナンバーとの連携に生かすことも視野に入れている。

●音声サービスの拡張はこれから

 フルMVNOでIIJが独自に提供できるのは「データ通信」に限られる。個人向けの格安SIMが発展したのは音声SIMの普及が大きいが、MVNO音声サービスは現在、MNOの卸によって実現しているため、一部オプションを除いて30秒あたり20円という従量課金が中心になっている。

 加えて、HLR/HSSを開放したからといって、独自の音声サービス(音声定額など)が提供可能になるわけではなく、MNOの音声網との相互接続が必要になる。島上氏は「まずはデータ通信を先行させ、フルMVNOと音声をどう組み合わせるかは、ドコモと協議を進めていく」と述べるにとどめた。

●既存キャリアにはないサービスを作れる自信はある

 IIJはフルMVNOとなることで、IoTの分野をさらに開拓し、「ヒトと機械が、ネットワークに接続する世界」を目指す。「SIMのコントロールも含めて利便性を向上させていくことで、世界がもっと便利になる。IIJが主体となって推進していきたい。今のサービスはMNOに縛られている。(MNOと)最低限戦えるレベルに持っていきたい」と島上氏は意気込みを語った。

 IoTについては大手キャリアも推進しており、IIJがどこまで独自色を出せるのかは未知数だ。鈴木幸一会長は「IIJ(の固定通信サービス)を始めたときも、『インフラを持っていないIIJはどうするのか?』と言われてきた。僕らはインターネットの基本であるソフトウェアで、ここまで来られた。そういった蓄積した技術を生かして、新しいスキームを僕たち自身で作っていきたい。今のキャリアにないサービスを作っていける自信はあるし、多様なサービスが展開できる」と語気を強めた。

 IIJはMVNEとして多くのMVNOに設備やノウハウを提供しているが、フルMVNOにおいても、MVNEとしての取り組みは進め、パートナー企業にフルMVNOのプラットフォームを提供する。島上氏は「今までお付き合いなかったMVNOとも、ぜひ協業したい」とオープンな姿勢を示した。

 フルMVNOにまつわるコストは「数10億円以内」(鈴木氏)と大きな規模だが、同氏は「それぐらいの(コストをかける価値のある)ビジネスチャンスがあり、私たちが作るサービスで回収できる」と自信を見せた。

最終更新:8月31日(水)17時23分

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