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【巨人コラム・Gペン】投手王国再建へ、出でよ若武者

スポーツ報知 8月31日(水)16時1分配信

 あの日、尾花さんの姿は神宮のベンチになかった。

 06年10月15日。巨人のシーズン最終戦となる神宮でのヤクルト戦。尾花投手コーチはベンチ入りせず、遠く離れた宮崎のフェニックス・リーグで若手へ熱血指導を行っていた。1軍投手コーチが教育リーグに参加すること自体、異例だった。

 原さんが監督に2度目の就任となったシーズン。開幕ダッシュを決めたが、主力に故障者が相次ぎ、4位に失速した。若大将が「こんな弱いチームで野球をやったのは初めてだ」と嘆いた1年だった。巨人でのコーチは初年度だった尾花さんも、多くの課題が見つかったのだろう。投手力の底上げには、若手を鍛え抜くしかない。そのためには1分、1秒でも惜しい。公式戦の消化試合よりも教育リーグでの鍛錬を優先したのは、そんなメッセージに映った。

 巨人番で投手担当だった私も、宮崎へ飛んだ。仮設テント内で行われた試合後のミーティングは非公開だったが、こっそり耳をそばだてると尾花さんの熱き叫びが聞こえてきた。「気持ちで抑えるんだ。ボール以上に、気持ちで打者に向かうんだ。もっと覇気を出せ!」。理性派のイメージが濃いだけに、意外だった。

 試合後の尾花さんは自らユニホームを汚して、マンツーマンで猛特訓を行った。対象者の一人に山口がいた。育成での1年目を終えたばかり。指導を終えた尾花さんは言った。「ミットの声が変わってきたなあ。もうすぐ背番号も3ケタから2ケタになる。変えて当然やろ。シンデレラボーイ、ジャパニーズドリームや!」。尾花さん、そのネタいただいちゃって、いいっすか。翌日の紙面で「育成の山口鉄也を支配下登録へ」という本紙独自ダネを書けたのは、ささやかな喜びだった。

 山口だけじゃない。あの秋は西村や木佐貫、越智らが南国の地で汗にまみれ、飛躍の土台を築いた。原巨人は翌07年からリーグ3連覇を達成し、09年には日本一になる。生え抜きとして貢献したのが、彼らだった。

 今季も残りわずか。投手陣は健闘したが、先発ローテの頭数に“勝利の方程式”の再構築など、来季への宿題も浮き彫りになりつつある。そんな時、私はふと、10年前の秋に思いを致す。

 指導者が描く未来への明確なビジョンと、「こいつを何とかしたいんだ」という熱意。そしてこの世界で絶対に成功するんだというハングリーな情熱が融合した時、投手王国は再び現実になる。野心を胸に、いでよ若武者。新しい力の台頭に、俺たちは飢えている。(野球デスク・加藤 弘士)

最終更新:8月31日(水)23時32分

スポーツ報知

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昔は街の広場で、現代はYouTubeで。歴史を通じ、公開処刑には必ず人だかりがつきものでした。人が処刑というものを、恐ろしく不快に感じながらも、つい気になって見てしまうのはなぜか。フランシス・ラーソンが人間と公開処刑の歴史、中でも斬首刑に焦点を当てて解説したこのトークは、気分の良い内容ばかりではありませんが、同時に興味をそそること間違いないでしょう。