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【元ピクサー】世界で受賞相次ぐ『ムーム』監督・堤大介インタビュー「心地よい場所を捨て、自分の奥底と向き合う」

dmenu映画 8月30日(火)12時0分配信

文=ホリキリコハル、写真=伊藤さゆ/Avanti Press

持ち主を失ったモノたちが集まる湖のほとり。そこに住むムームの、切なくも幸せな1日を描いた3DCG短編アニメーション映画『ムーム』が、今月17個目の受賞を果たした。アメリカ・ロードアイランド州で行われたアカデミー賞公認映画祭「Rhode Island International Film Festival」で「子供審査員:ベスト・アニメーション賞」を獲得したのだ。

『ムーム』の原作は、『モテキ』『悪人』などで知られる映画プロデューサー、川村元気。ピクサーでアートディレクターを務めていた堤大介とロバート・コンドウが監督し、日本のアニメーションスタッフが制作した。日米のコラボレーションで作られたこの短編は、世界各国の映画祭で高い評価を得ている。高評価のポイントはどこなのか。堤大介監督に伺った。

“パーソナルな部分”をシェアしていく

「世界で受け入れてもらえるかどうかは、実際にはリリースしてみるまでわかりません。しかし、ネガティブな部分や心にある闇も含めて、人間の根本にあるものなら、きっと世界中の人たちに理解してもらえるはずだと思っています。こういう色彩、あるいは、こういうデザインならうけるだろう、といった表面的なものだけを追えば失敗してしまうでしょう。でも、例えば 『ムーム』でいえば、愛や喪失感、蓋をして気づかないふりをしてしまうほど深く負ってしまった傷など、パーソナルな感情は絶対万国共通で、言葉に関係なくシェアすることができます。それをどのように表現するかは考えなければなりませんが、そこを核にすれば、必ず分かってもらえると思いました」

個々の人間が持っている気持ちや感情……。堤とコンドウは、この“パーソナルな部分”にこだわりを持っている。

「実はピクサーが一番大事にしていることも、“個々の体験に基づくパーソナルな感情”です。自分たちが伝えたいことを伝える。すなわち、作り手の“パーソナルな部分”がアニメーションを制作する際にもっとも大切なことなんです」

だから『ムーム』を映画化する話が持ち込まれたとき、堤らは最初、引き受けるのを断ったという。モノに宿る思い出をキャラクター化した原作の発想はとても面白いと思ったが、それはあくまでも原作者のものであり、堤とコンドウの個人的な体験や感情とは結びつかなかったからだ。

「僕とロバート(・コンドウ)は何度も議論を重ねました。その中で、ある時ロバートが、4歳の時にひいおばあちゃんが事故で亡くなった時のことを話してくれました。大好きなひいおばあちゃんが突然いなくなってしまった喪失感、しかしそれを理解するにはあまりに幼すぎたロバート少年。それって『ムーム』と重なるのではないか! そこに気づいたとき、『ムーム』を僕らの物語として捉え直すことができました。ロバートの、その「自分の傷にすら気づいていなかった感情」は、ロバート個人のことのようにみえますが、誰もが理解できる感情だと思います。これを核にし、常にここに立ち戻ることができれば、長い制作の過程でどんなアイディアを付け加えていっても、軸がブレることはありません」

その結果、出来上がった作品には、生と死、そして再生に関するメッセージ性が強く打ち出されている。

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最終更新:8月30日(火)12時0分

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