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[記者手帳]指導者を死に追いやる不条理な韓国スポーツ界の構造

ハンギョレ新聞 8/30(火) 18:33配信

 24日、江原道平昌(ピョンチャン)の合宿トレーニング場で首をつったレスリング・ジュニア代表チームのキム監督(50)の死は、韓国社会の総体的な不条理の一断面だ。

 キム監督は17年近く高等部の有望な選手を教えてきた。周りの同僚や後輩は「内省的で誠実な人だった」と話す。しかし6月、レスリング協会に対する司法当局の調査は無力なキム監督を死に追いやった。

 表面的に見れば、キム監督の死は自分も知らないうちにレスリング協会の会計帳簿に3000万ウォン(約273万円)ものマットが2回にわたり購入されていた虚偽事実にある。1回は正当に購入し使用したが、自分がサインした領収証まで添付された2回目の購入書類は晴天の霹靂だった。

 当局が12日にレスリング協会の元事務局長、経理担当、元協会会長を呼び出して対質尋問したことで、キム監督は濡れ衣を晴らした。責任者は捜査結果を通じて今後明らかにされる予定だ。だが、濡れ衣が晴れたとの通報を受けたキム監督は、ほどなくして首をつった。

 キム監督は数度に渡り調査を受け、精神的に疲弊していたという。実際、自分の無実が明らかになる前に作られた音声録音には、協会に対する不信と裏切られた気持ちだけでなく、警察の「誘導尋問に引っかかった」という部分がある。

 一般的に体育指導者たちの弱点はトレーニング費の横領にある。ところが内容を見ると無念な状況が大半だ。大韓体育会は、合宿トレーニング時は宿泊と食費をカードでサポートする。入浴代、交通費、会食費はサポートされない。若い選手たちに一度焼肉を食べさせる経費すらないということだ。そのため、指導者たちは、架空の宿泊費や食費をカードで決済し不法に現金を受け取ることによって必要経費をまかなう。キム監督も2010年から6年間、毎年2回行われる合宿で選手25人を教えながら、このようなやり方で会食費を捻出した。

 一次的には、規定よりも慣行に則って予算を執行するスポーツ関係者たちに問題がある。しかし、さらに根本的な原因は十分な予算をサポートしない韓国スポーツの構造にある。子どもたちを教える多くの指導者たちを犯罪者にしているのだ。

 1人当たり2万5000~3万ウォン(約2300~2700円)の宿泊費から別途にお金を捻出する指導者たちの心情はいかばかりか。あるスポーツ団体の職員は、「文化体育観光部の宿泊費の策定は、青少年の選手たちすらモーテルに宿泊させることを政府が容認しているということ」と話した。別の関係者は「スポーツ界も過去の慣行から脱するべきだが、追加経費まで含めて予算を現実化する必要がある」と指摘した。レスリング協会が最近6年間の予算項目の用途を変更して使用していたことも、協会の通帳でお金の管理をしていても規定に反するものであり、30億ウォン(約2億7000万円)横領の議論を呼んでいる。スポーツ界の慣行と協会関係者の書類操作、警察の弱点暴き調査、文化体育観光部などスポーツ政策当局の無関心まで、すべてキム監督の死に責任がある。

キム・チャングム記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr)

最終更新:8/30(火) 18:33

ハンギョレ新聞