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ヘッジファンドが銀行を救う?「ドリームチーム」の破綻を忘れてはならない

ZUU online 8/31(水) 17:10配信

ことの真偽はともかくとして、世の中には多くの人を納得させてしまう不思議な言葉がある。投資の世界でいえば「外国人投資家」「ヘッジファンド」だ。

なぜ今日の相場は上昇したのか。なぜ今日の相場は下落したのか。多くの人はその答えを求めている。そして多くの市場参加者は「外国人投資家が買っている」「ヘッジファンドが売っている」という言葉に納得してしまう。

お客様だけではない。
私が携わる銀行の金融商品販売の現場でも「ヘッジファンド」を盲信するムードが広がっている。まるでヘッジファンドが銀行を救うとでも言わんばかりだ。

■そもそも「ヘッジファンド」とは何か?

ヘッジファンドとは、さまざまな取引手法を駆使し、マーケットが上がっても下がっても利益を追求することを目的としたファンドである。

ヘッジ(hedge)とは本来「避ける」という意味で、相場が下がったときの資産の目減りを避けることに由来する。

一般的な投資信託は、相場が一方向に動いたときのみ利益が出る仕組みのものが多い。だが、ヘッジファンドは先物取引や信用取引などを積極的に活用することで相場の「上げ下げに関係なく」利益を追求する。本来のヘッジ(避ける)という意味よりも、むしろ積極的に利益を求める姿勢を基本としているものが多い。

私の顧客の中にも「ブリッジウォーターに出資している」と誇らしげに自慢する人がいる。ブリッジウォーターとは、リーマンショックを予測したとされる、レイ・ダリオ氏率いる世界最大級のヘッジファンドだ。あなたもこの名前は聞いたことがあるかもしれない。

ここで明かすことはできないが、その顧客はかなりの額の手数料を支払っていることは確かだ。

■「銀行の投資信託はクズみたいなものだ」

相場の「上げ下げに関係なく」利益を追求するヘッジファンド。彼らは、常にマーケットの勝者たり得るのだろうか。

当然ながら答えはノーだ。ブルームバーグが報じるところでは、ロンドンを拠点とするヘッジファンド「パルス・ファンド」の7月の運用成績は1.9%減、年初来の運用成績は13.9%減まで落ち込んでいるという。ヘッジファンドは必ずしも万能ではないことを示す事例だ。

にもかかわらず、多くの人は幻想を抱いている。「ヘッジファンドは優秀である」と。私の周りでは「銀行で販売する投資信託はクズみたいなものだ」と毒づく人さえおられるが、そんな彼らに限ってヘッジファンドを盲信する傾向にある。

■だから日本人はカモにされるのだ!

「投資信託は儲かっても損しても、手数料を払わなければならない」「それに比べてヘッジファンドは儲かった場合にだけ高い報酬を払うのだから、フェアだ」そう主張するお客様もいる。本当にそうなのだろうか?

ヘッジファンドの値上がり益の20%が成功報酬だとしよう。1000億円のヘッジファンドが10%値上がりしたなら、成功報酬は20億円だ。もし、そのヘッジファンドが値下がりした場合は、成功報酬はゼロである。この仕組みを「フェア」と評価する感覚が私には理解できない。だから日本人はカモにされるのだ。

ヘッジファンドが損失を負担してくれるのであれば、悪い話ではないだろう。しかし、現実に損失を被るのは投資家自身である。一方で、投資家は値上がり益の相当部分を「莫大な成功報酬」として差し出さなければならない。それをフェアと呼べるのだろうか。

さらに酷いのは、ヘッジファンドは「リスクの大きさ」を自分たちに都合良く変えてしまうことだ。運用者の独断でレバレッジをかけることだってお構いなしである。先物や信用取引、外国為替証拠金取引……彼らは簡単にレバレッジをかけることができる。

「特別な情報に基づいてリスクを取った」「最新の金融工学に基づき」「ビッグデータに基づいて」「独自のトレーリングシステムに基づいて運用を行う」などと専門的な言葉を並べられると、銀行員でさえ反論できなくなる。そのようなモノを個人投資家に販売して良いのだろうか。

■「運用のドリームチーム」でさえ破綻する

最近では嘆かわしいことに銀行員までもが「絶対収益追求型」のファンドを導入すべきであると息巻いている。個人投資家の関心も高いので、手数料を稼ぐには良いツールとなるだろう。

しかし、あえて言いたい。手数料を稼げばそれでいいのかと。ヘッジファンドは万能ではない。投資の世界に「絶対」という言葉は存在しない。

1998年、米国のヘッジファンド「LTCM(ロングターム・キャピタル・マネジメント)」の破綻を覚えておられるだろうか。

LTCMの幹部には、FRB元副議長のデビッド・マリンズ、ブラック-ショールズ方程式を完成させ、共に97年にノーベル経済学賞を受賞したマイロン・ショールズとロバート・マートンといった著名人が加わっていた。「運用のドリームチーム」と呼ばれた彼らでさえ破綻するのだ。

その事実を人々は忘れてしまったのだろうか。ヘッジファンドを盲信しがちな最近の風潮に、私は大きな危機感を禁じ得ない。(或る銀行員)

最終更新:8/31(水) 17:10

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