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『リップヴァンウィンクルの花嫁』は自宅鑑賞でも映画館クオリティ!?

Movie Walker 8月31日(水)16時30分配信

映画館で作品を鑑賞する時の魅力の1つは、ハイクオリティなサウンド。最近では、映画館の視聴環境を自宅でも再現できるような優秀な機器が増えている。しかし、そういったものは軒並み高額で、こだわろうとすればするほど、なかなか手を出しづらいことだろう。

【写真を見る】3000円のスピーカーで映画館のようなサウンド!?

しかし、そんな我々を救う、まさに救世主とも言えるような技術が存在するのをご存知だろうか?それは上下左右、多方面から音に包まれる感覚に陥る“3Dサウンド”を展開できるエンコード・制作技術、「KISSonix(キスソニックス) 3D SYSTEM」だ。

通常、立体的な音を聞くためには、複数のスピーカーを自分の周りに設置しなければならない。しかしこの技術のすごい所は、そのような機材を必要としないこと。普段使用しているステレオスピーカーでも、映画館のような圧倒的クオリティのサウンドを再生することが可能となる。

そんな、にわかには信じがたい技術を生み出したのが、キスソニックス株式会社の伊藤カズユキ氏だ。自ら音楽家として活動している傍ら、音に強いこだわりを持ち続け、この技術が実を結んだのだという。

――KISSonix 3Dは、イヤホンやヘッドホンでも立体効果が得られるのでしょうか?

「はい、得られますよ。と言うより、KISSonix 3D以前から、イヤホンやヘッドホンの立体サウンドは『バイノーラル』という別の技術で確立していました。ちょっと話がズレてしまいましたが、KISSonix 3D SYSTEMでエンコードすれば、イヤホンやヘッドホンでも3Dサウンドを聞くことができます」。

――では、敢えて“スピーカーからの立体音響”にこだわった理由はなんなのでしょうか?

「ヘッドホンの場合は1人でしか楽しめないじゃないですか。これが僕、ちょっとネックだなと思っていて。その点、スピーカーはみんなで聞ける。僕自身は、最初にこの技術を考え始めたときから、『ヘッドホンとスピーカー、どちらかを選ぶのならスピーカーがいいな』と決めていたんです。“同時にたくさんの人達が楽しめる”っていう要素、音楽からは外せないと思ったんですよね」。

――スピーカー、とは言っても様々ですよね。一般的な家庭用スピーカーからでも良質な音を楽しめるというのは、すごくメリットです。

「みなさんがどのようなスピーカーを使うか分かりませんからね。大きいスピーカーなのか小さいスピーカーなのか、本当に千差万別。視聴する部屋の広さも違うし。イヤホンとかは、そういうのにはあまり左右されないんですけど。どのスピーカーから聞いても、良質な音が“飛び出して”聞こえるように、こちらで音の配置をするんです」。

――配置というのは?

「これはステレオスピーカーのイメージなんですけど…例えば、綺麗な音でも積み重ねていくとゴチャゴチャしてしまいますよね。あれは、横一列に音が並んでしまって、ギュウギュウ詰めになってしまうような感じです。3Dサウンドは、横だけでなく前後、つまり奥行きのスペースも作ってあげる感じなんです。そうすると、音の位置にゆとりが生まれて、結果、音同士が喧嘩せずに綺麗に聞こえます」。

――なるほど。その調整は伊藤さんが?

「その配置は、5.1chサラウンドのトラックが収録されているDVDなどを取り込むだけで行えます。僕はそこから、クライアントの要望などにお応えしつつさらに調整。そのこだわりで、より良いものができますよ」。

――DVDといえば、岩井俊二監督作品『リップヴァンウィンクルの花嫁』(16)のDVD化に伴って、KISSonix 3D SYSTEMが採用されたんですよね。

「そうです。監督は音にこだわりのある方で、映画の放映時も『ドルビーアトモス』という、天井スピーカーのある音響システムを設置する映画館で上映していました。もちろん未設置の映画館でも上映していましたが、『ドルビーアトモス』がある所では、雷や雨の音などが頭上から聞こえるんですよね。それを、『DVDやブルーレイでも同じことできます?』って聞かれて(笑)。僕の方も、『できます』と即答しちゃいましたけど」。

――即答ですか(笑)

「弊社のシステムは、スピーカーとスピーカーの間で起こる“音圧のばらつき”を埋めて、さらに高さを表現できるんですよ。普通の5.1chだったら横の表現がどうしてもメインになってしまうんですけど、僕達のシステムではそこに高さが加わる。岩井監督の求める“空間”が再現できると分かっていたので、二つ返事でしたね」。

――この技術、VR(バーチャルリアリティ)と非常に相性が良さそうだなと思っているのですが。

「そうですね。実は、去年からちょっとやっていたプロジェクトがあります。今後は他にも、色んなジャンルの業界と接点を持って、チャレンジを続けていきたいです」。

取材中、サウンドの奥深さや今後の可能性を話してくれた伊藤氏。そこで、記者は浮かんだ疑問を投げかけてみた。

――ここまでのお話を聞いて、高価なスピーカーでなくとも映画館のようなサウンドを楽しめると分かったのですが、これってオーディオ業界を揺るがしたりしませんか?

「それは良く聞かれますね。競合になってしまうんじゃないかと。でも全然そんなことはなくて、良いオーディオ機器で聞けば、もっと良いサウンドを楽しめるんです。だから競合ではなく、底上げといった感じでしょうか。今まで興味がなかった人でもこれを聞くことで、『普通のスピーカーでも良質な音だけど、これがもっと良いスピーカーだったらどうなっていくんだろう?』と興味を持って、オーディオ業界に触れてくれるかもしれない。そういった、音楽に対するきっかけになることを目標にしていきたいなと思います」。

「チャレンジで言えば、東京オリンピック・パラリンピックにも何かしら関わっていきたいですね」と伊藤氏は笑顔で締めくくった。

9月2日(金)にDVD&ブルーレイがリリースされる映画『リップヴァンウィンクルの花嫁』は、主演を務める黒木華と岩井俊二監督が出会ったのがきっかけで生まれた作品。人生の苦境に立たされた主人公・七海が出会う、奇妙なアルバイト先での人々との交流、そして彼女自身の変化を描く物語だ。

家庭で劇場クオリティの音を楽しめる3Dサウンド。“音に包まれる”感覚を、あなた自身で体感してほしい。【取材・文/友ことみ】

最終更新:9月1日(木)10時5分

Movie Walker

TEDカンファレンスのプレゼンテーション動画

斬首動画が何百万回も再生されてしまう理由
昔は街の広場で、現代はYouTubeで。歴史を通じ、公開処刑には必ず人だかりがつきものでした。人が処刑というものを、恐ろしく不快に感じながらも、つい気になって見てしまうのはなぜか。フランシス・ラーソンが人間と公開処刑の歴史、中でも斬首刑に焦点を当てて解説したこのトークは、気分の良い内容ばかりではありませんが、同時に興味をそそること間違いないでしょう。