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アングル:英国の軟着陸的EU離脱、独の沈黙で視界不良に

ロイター 8月31日(水)18時7分配信

[ベルリン 29日 ロイター] - 英国に欧州連合(EU)離脱プロセスを始動させることは、飛行機のエンジンを切るようなものだ――ある欧州の上級外交官は言う。切るのは、滑走路が見えてからにしなさい。さもなければ、乗客乗員が悲惨な事態に陥る危険性がある、ということだ。

離脱手続きに必要なEU基本条約(リスボン条約)50条を英国が発動させるのは、2年後の離脱に向けて時計のアラームをセットすることだ。強行着陸を避けるため、英国とEU双方の高官らは進め方を慎重に模索している。

選択肢には、50条を発動しない「架空の楽園」を目指す方法も入っている。すなわち、裏ルートでの交渉を通じてどのシナリオが現実になり得るかを見極め、いったん仮の結論を出しておいて、もっと永続的な着地点へと飛び移るという綱渡りだ。

ただ、欧州で最も影響力のある指導者、ドイツのアンゲラ・メルケル首相にとって、この選択肢はまったくあり得ない。

メルケル首相に近い筋は、「こんな方法はEUには受け入れられない」と話す。

メルケル首相などEU指導者らは、英国が離脱プロセスを実際に発動させるまで、予想される結果について協議しない考えだ。そのため、英政府がブレグジットをいつ、どう着地させるのかという問題は複雑化している。

メルケル首相に近い筋は、匿名を条件として「われわれは事前協議はしない」と述べた。別の独政府高官も、同国では事前交渉は固く禁じられていると主張した。

事前協議ができない場合、英政府は第2の選択肢に取り組まざるを得ない。それは、EUの官僚主義のすき間をのぞき込みながら、ブレグジット後の「着地」オプションにどんなものがあるかを見極める、ということだ。

<特別な地位>

独政府高官らは、英国との取引をまとめるため譲歩する用意はあるとほのめかしている。ミヒャエル・ロート欧州担当相は、英国がEU離脱後、EUとの関係性において「特別な地位」を獲得する可能性があることを示唆した。

だが欧州の指導者らは、英国が第50条に基づいて離脱を宣言する前に離脱条件について駆け引きを行うことでEUを「人質に取る」ことは望んでいない。そのため、英政府高官が取引に関して神経を鋭敏にしたとしても、EUとの合意取り付けにはタイトなスケジュールに直面することになる。

水面下では、2年間という交渉期限は短すぎるとの認識が広がりつつある。これを受けて議論に上っているのが、第3の選択肢だ。EUの非加盟国でありながらEUと密接な関係を持つスイスやノルウェーのような既存の枠組みを、英国にも一時的に適用するというものだ。

50条が定めた2年の期間が終了した後については、協議の結果として別の着地点もあり得る。

メイ首相の広報官によると、英政府は国益を最大にするため、「英国流の取引」をするつもりだという。

最も微妙なのは、欧州の指導者らにとって聖域である市場アクセスと人の自由な移動の点で妥協しなければならないという部分だ。欧州の高官は「繁栄のために移動の自由を求めるのは高くつく」と話す。

英国にとって、人の移動を制限する選択肢の一つは、他のEU加盟国からの人々は安定した職業が確約されている人だけ英国での居住を許可するよう規則を厳しくすることだ。

メルケル首相は、英国に対しEUからの離脱手続きを「できるだけ早く」開始するよう求め、メイ首相が交渉の立場を考え出す猶予を与えなかった。

ある英政府高官は「メルケル氏は態度を軟化させ、『時間をかけてもいいですよ』と言っている」という。だが、メルケル氏の忍耐にも限界はある。同氏に近い関係筋は「明確にすることが、すべての人々の利益にかなう」と話した。

(Paul Carrel記者 翻訳:田頭淳子 編集:加藤京子)

最終更新:8月31日(水)22時22分

ロイター

TEDカンファレンスのプレゼンテーション動画

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