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工藤阿須加、『家売るオンナ』で“ダメ男”キャラ開花

オリコン 9月4日(日)8時40分配信

 今期ドラマのなかでも好調なドラマ『家売るオンナ』(日本テレビ系)。主演の北川景子の笑顔を封印した無表情キャラクターの好演のほか、ラブストーリーでもなければ社会派シリアス系でもない一風変わったストーリーのなかで、仲村トオルや千葉雄大、イモトアヤコらがそれぞれ演じる役柄も絶妙にキャストとマッチングしており、一話完結のストーリーに奥行きを与えている。そんなバラエティに富んだキャストのなかで、2番手の好位置にいる、味のあるキャラクターを好演しているのが工藤阿須加。気が弱くてちょっと頼りないが少しずつ成長していくサラリーマン役は、工藤自身の実直で素朴な人柄とも重なり、好感度が急上昇しているようだ。

【写真】この先の行方は?女上司に恋心を抱く庭野と三軒家の2ショット

◆2世タレントデビューから自力で評価を上げた俳優業

 元プロ野球選手で福岡ソフトバンクホークス・工藤公康監督の息子であり、2世タレントデビューした工藤阿須加。父の知名度こそ高く、世間の好奇心の目は向けられたものの、それがそのまますぐに仕事につながるほど芸能界は甘くはなく、2012年のデビュー当初は、シーンもあまり多くない端役での出演で経験を積んでいった。

 その後、2014年に放送された『ルーズヴェルト・ゲーム』や映画『アゲイン 28年目の甲子園』などでメインキャストのグループのなかのひとりを演じ、徐々に俳優として知名度をあげるものの、作品も役柄も野球絡み。当然のことながら本人は自力で奮闘しているものの、逆に父の影がつきまとう印象がより濃くなる結果になっていた。

 しかし工藤は、そんな状況のなかでもポジティブだった。当時を振り返ってもらったインタビューでは「僕は七光りや二世と言われるのが嫌ではないんです。否定することでもないですし、そう思われるのは当然かなと。僕が少しでも多く注目していただけたのは父のおかげもあったと思うので、とても感謝していますし尊敬もしています。なので“七光り”と言われても“はい!そうです”と返せてしまう自分がいて(笑)。ただ、そこに甘えるつもりはなくて、父とは畑が違いますし、僕には役者という仕事に対する強い想いがある。プロ意識を持ってしっかり結果を出していけば、いずれはそういったことも関係なくなるんじゃないかなと思います」。

 演技の経験を積み重ねるとともに、そんな人柄が周囲を惹きつけるのか、次第に大きな作品で重要な役どころを任されるようになっていく。昨年放送された『アルジャーノンに花束を』(TBS系)では主人公の友人役、ドラマ『レッドクロス~女たちの赤紙~』(TBS系)では主人公の息子役にキャスティングされた。『アルジャーノンに花束を』では知的障がい者の青年との心に染み入るような友情を、肩の力を抜きながらも誠実さがにじむ真っすぐな演技で熱演。『レッドクロス~女たちの赤紙~』やNHK大河ドラマ『八重の桜』でも役そのものが工藤の素なのではないかと思えるような自然な姿が好評を得ていた。もちろん繊細な演技があっての評価であり、物語にリアリティと説得力を与える俳優としてしっかりとつめ跡を残すとともに、自身の役の幅を大きく広げた。

 そこからは、『偽装の夫婦』(日本テレビ系)、朝ドラ『あさが来た』、映画『夏美のホタル』のほか、来年公開映画でも『恋妻家宮本』『ちょっと今から仕事やめてくる』など話題作に立て続けに出演。主演作こそまだ多くはないものの、すっかり出演作が途切れることのない売れっ子俳優の仲間入りを果たしている。

◆女子たちの萌えポイント満載のダメ男キャラがハマり役に

 そんな工藤が新たな一面を見せて注目を集めているのが『家売るオンナ』。家を買いたい人、売りたい人、その家族や関係者など、人生の一大イベントにまつわる市井の人々の人間ドラマをユーモラスな演出を盛り込みながら描く。工藤は、北川演じる上司・三軒家の冷徹な仕事ぶりにときに反発を覚えながらも、厳しい指示に一生懸命応えようとして空回りしてしまう部下・庭野を演じているのだが、その頼りなくて弱気なダメ男キャラが意外に工藤のビジュアルも含めた雰囲気とマッチしていて、いい方向にこれまでのイメージを覆している。

 これまで演じてきた役柄では、もの静かで硬派なタイプの青年役などが多かった工藤だが、このドラマでは少し気の抜けたやわらかい表情やハツラツとした明るい笑顔で憎めない可愛らしさを表現している。庭野は、三軒家に振り回されながらもほんのりと恋心を抱いたり、酔っ払うと普段の気弱さがふっとんで上司の屋代に嫌な絡み方をしたり、仕事で対応した客の相談につい親身になってしまったりと、女子たちの萌えポイントが満載のチャーミングかつコミカルな癒しキャラなのだ。

 そんな庭野に癒されている女性は多く、仕事での上司との人間関係に自身を重ね合わせるサラリーマンなど、幅広い視聴者に親近感を与えているようだ。いつもは弱気で頼りない庭野だが、三軒家の客を横取りする形で家を販売したときは、「あの三軒家を出し抜いた!」と思わず興奮した人も多かったことだろう(結局、三軒家のほうが上手だったのだが)。そのようについ応援したくなったり部下にしたいと思わせるのは、工藤が自然体でイマドキの若者を演じているから。ゴールデンの連ドラで、主人公に次ぐ2番手という大役であり、ドラマの展開を大きく動かしていく重要なキャラクターにして、多くの視聴者の好感を得そうなおいしいポジション。工藤自身も新たな魅力を存分に発揮しており、役者としての需要も今後さらに高まっていきそうだ。

 工藤をこれまでにも知るファンは、実直で硬い好青年という役のイメージが強かったことだろう。しかし、今回の『家売るオンナ』での好演は、より幅広い層へ彼の顔を売り知名度を上げるとともに、人間らしいダメ男役までうまく表現できる俳優としての新たなイメージを獲得した。工藤は以前、「いつか自分にとっての大きなターニングポイントがくる気がするので、そのときまでにあらゆる準備をしておこうと思っています」と語っていた。つねにそんなスタンスでいる彼だからこそ、良い作品と良い役に出会うことができたのだろう。ネクストステージへの階段に足をかけた工藤のさらなる飛躍を期待したい。
(文:奥村百恵)

最終更新:9月4日(日)8時40分

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