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【LINE上場のなぞ(上)】親会社が議決権多い株を東証に働きかけ

ニュースソクラ 8/31(水) 12:00配信

支配権にこだわった韓国のネイバー

 スマートフォンのメッセージングアプリとして知られるLINE(本社、東京・渋谷)が7月半ば、東京証券取引所市場第一部に上場した。前日には米ニューヨーク証券取引所にも上場し、大型の日米同時上場としてマスコミは大いにもてはやした。しかし、子細に見ると、その上場の仕方には問題がある。

 LINEの初値は公開価格3300円を48%も上回る4900円だったが、新規上場のご祝儀相場は上場初日の一瞬にして終わり、7月中の株価は4000円前後を軟調に推移した。8月に一時4800円まで上げたが、いまは4400円程度。意外に冴えない展開になっている背景にあるのが、LINEという会社のわかりにくさだ。

 「そもそも業績が赤字基調のうえ、ガバナンスがわかりにくい。そこに警戒感をもつ個人投資家は少なくない」と大手証券会社の営業担当者は言う。

 「ガバナンスのわかりにくさ」――。それは同社の上場の経緯を振り返っただけでも首肯できる。「こんな上場を許していいんですかね」。大手証券会社のIPO担当者は首をかしげる。

 LINEが初めて上場申請に乗り出したのは2014年。このときまでLINEは、日本の若者たちが開発にかかわってきたとする麗しきストーリーを盛んに喧伝し、親会社の韓国ネイバーの存在と韓国人幹部やスタッフの関与をつとめて目立たないようにしているようだったが、その親会社のネイバーが2014年7月、完全子会社であるLINEの東証への上場申請を現地、韓国で発表したのである。

 このことからうかがえるように、東証への上場を主導してきたのは日本のLINE本社というよりも、韓国のネイバーであることが明白であった。そしてこの当時からネイバーはLINEの上場にあたって、結局は見送ることになる議決権種類株の採用を強く東証に働きかけていたのである。

 議決権種類株とは議決権が一般の普通株とは異なる株式のことで、米国では2004年に上場したグーグルや12年に上場したフェイスブックなどが導入している。創業者に多めの議決権の種類株が発行され、一般の株主に公開される普通株式との間に議決権の差を大きく設けるという特徴がある。

 仮に市場で出回る株を買い占められたとしても創業者が議決権を握ったままなので、株を買い占めた側が会社を自由にすることはできない。資金調達で新株を大量に発行したとしても、創業者の議決権はさほど低減しないため、自身の意思をほぼ永続的に経営に反映させることができる。

 こうした米国流のベンチャー育成手法を日本でも採用しようと、東証が議決権種類株を制度化したのは意外に早く2008年だった。とはいえ、その後、導入事例は一向になく、初めて採用したのは、LINEが上場申請した直前の2014年3月に東証マザーズに上場したロボットベンチャーのサイバーダインである。

 ロボットスーツの研究開発の第一人者である筑波大の山海嘉之教授が創業したサイバーダインは、これまで欧州や米国の国防当局や軍需産業などから再三再四、共同開発や資金支援の申し出を受けてきたが、そのつど山海氏が「あくまでも平和目的に資することに限定したい」と断ってきた経緯がある。そのため、上場にあたっても、株を買い占められて軍事転用に利用されることを恐れた山海氏は、自身に議決権を集中させる議決権種類株の発行を思い立った。

 東証は当時の斉藤惇社長をはじめ幹部クラスや担当者は、この議決権種類株を後押ししたが、意外に固かったのが「株主平等原則がゆがめられる」と原則論を唱える金融庁だった。結局さまざまな注文がつき、議決権種類株は山海氏が存命の間に限り、亡くなったらスキームの解消がありうる「一代限り」のものとする規制(「サンセット条項」という)を採り入れて認められた。かくして山海氏は普通株の10倍の議決権をもつ議決権種類株を持つことになり、上場後も38%の持ち分比率で86%の議決権を有している。

 これと同じことを「自分たちにも認めてほしい」というのが韓国のネイバーとその100%子会社であるLINEだった。見送りまでの経緯は記事の(下)で詳報する。

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 ニュースソクラの「上場時の東証との交渉の際に普通株とは議決権数が実質的に異なる種類株の発行を認めるよう求められましたが、結局見送られたのはなぜですか」との問い合わせに対し、LINE広報は「株式の種類を含め多様な検討を重ねてまいりましたが、弊社内で種類株の導入はしないことに決定し、今回の普通株式の発行という形となりました」と答えた。

ニュースソクラ編集部

最終更新:8/31(水) 12:00

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