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世界史ブームが意味するもの グローバル化や資本主義の終焉?

ニュースソクラ 8/31(水) 18:01配信

歴史から教訓やヒントを引き出したい切実なニーズがそこにある

 「世界史」ブームだ。単に教養のため、ではない。激動する世界で活動するビジネスマンたちの、歴史から教訓や先読みのヒントを引き出したい、という切実なニーズが根っ子にある。その証拠に、経済誌が競って世界史特集を組んでいる。

 週刊東洋経済の8/13-20合併号は、紙数の半分近くを費やし「ビジネスマンのための世界史」を特集。(1)世界史がわかれば世界がわかる(2)世界史と現代を結ぶ視点(3)世界を動かす3大宗教―の3部構成で、世界史本100冊のブックガイドもつく。歴史専門誌のようだ。

 他誌のバックナンバーにも「混沌を読み解く経済史」「世界史と地図で学ぶ国際情勢・地政学超入門」(週刊ダイヤモンド)。「世界史に学ぶ金融政策」(週刊エコノミスト)などなど。今なぜ、世界史なのか?
 
 何と言っても、グローバリゼーション。人、モノ、カネ、情報が国境を越え、世界が1つの市場に向かう動きが加速し、数百年に一度の変化が起きている。

 英国の経済史家アンガス・マディソンによる過去2000年の推計では、人口でも、実質GDPでも、中国とインドの合計が、世界の半分か、それ以上を占めるのが常だった。ところが産業革命で、欧米がGDPで他をぶっちぎる。米国の歴史家ケネス・ポメランツは「大分岐」と呼んだ。20世紀半ばには、中印合わせたシェアが、世界の10%を割るにいたった。

 21世紀のグローバル化で起きているのは、その巻き戻し、「大収束」とも呼ぶべき状況だ。中国の台頭に代表される、西洋から東洋へのパワーシフトの行方は、世界史的な視点で読み解くしかない。

 足下で、そのグロ―バル化が変調をきたす。リーマン危機以降、先進国も新興国も経済がなかなか復調しない。格差拡大や移民増加などを理由にグローバル化への反発が高まる。英国のEU離脱や、欧州のポピュリスト政党の台頭、米国の“トランプ現象”が並走する。一方で、イスラム過激派のテロが世界に拡散する。

 グローバル化の行き詰まりや、長期停滞論の先に、「資本主義の終焉」を見る人もいる。よく引かれるのがS・ホーマーらの著書「金利の歴史」。1619年にイタリア・ジェノバでつけた年1.125%の史上最低金利を、平成の日本が、ほぼ400年ぶりに下回り、主要先進国が軒並み追随して超低金利に張り付いた。

 証券会社のエコノミスト出身の水野和夫法政大教授は早くからここ着眼し、金利は利潤率にほぼ等しく、超低金利=超低利潤率は、資本主義の行き詰まりを示唆する、と指摘している。

 さらには、人工知能(AI)が人間を超える日が近づいた、といった人類文明の新たな段階への不安も、世界史への興味をかきたてるのかもしれない。

 歴史学界も変わった。米国の歴史家イマニュエル・ウォーラーステインが提起した、世界を1つのシステムと見る「世界システム論」が脚光を浴び、「グローバル・ヒストリー」構築の試みもある。世界史というより、グローバル史ブームと呼ぶべきか。

■土谷 英夫(ジャーナリスト、元日経新聞論説副主幹)
1948年和歌山市生まれ。上智大学経済学部卒業。日本経済新聞社で編集委員、論説委員、論説副主幹、コラムニストなどを歴任。
著書に『1971年 市場化とネット化の紀元』(2014年/NTT出版)

最終更新:8/31(水) 18:01

ニュースソクラ