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「宇宙条約」に落とし穴あり。月の土地をめぐる競争激化が起こる理由

ギズモード・ジャパン 8月31日(水)22時10分配信

領土争いは人間の歴史の常。

2013年には月面探査機「嫦娥(じょうが)3号」によって中国は月へ行った3番目の国となり、ロシアの私企業は月面に調査基地を作る計画の発表をしたりと多くの国や企業が月面着陸に取り組んでいます。現時点で計画されているものが全て成功した場合、2020年までに様々な国や企業によって6回、月面着陸が行なわれることになります。

なんだか競争しているように見えますが、別に早くついたからって月の土地を領有できるわけではないんですね。

宇宙空間での争いを避けるために1966年に採択されたのが、「月その他の天体を含む宇宙空間の探査及び利用における国家活動を律する原則に関する条約」、通称「宇宙条約」。ここでは「天体を含む宇宙空間に対しては、いずれの国家も領有権を主張することはできない」と規定されています。

しかしこの条約があるからといって全ての国が平等に月面探索の機会を得られるかというとそうでもなさそうです。ハーバード・スミソニアン天体物理学センターのMartin Elvisさんと研究チームが指摘する条約の落とし穴をMIT Technology Reviewが解説しています。

Elvisさんたちがまず最初に指摘しているのはこの条約が「月面はどの場所もほぼ均質であるため、誰かが一部の地域を占拠しても他の団体が重要な月の資源を得る機会を奪うことにはならない」という前提に立っていることです。

ようするに、「こっからここまでちょっと探査用の機械を設置しますね」とある企業が月面の一部を占有したとしても、他にもたっぷり月面は残ってるんだから他の団体にとって損にはならない、という考えです。

しかし近年、月面の高解像度の画像が届くようになってこの前提が間違っていることが分かってきました。月面も、場所によって価値がある場所とそうでない場所が偏在しているそうなんです。早くついた企業や機関は、おそらくそういう場所から占有していくだろうとElvisさんは予測しています。

太陽の光がほぼ常にあたる地域というのは月の両極に少しずつしか存在しません。月面にで利用されるどのようなマシンも、太陽光をエネルギー源として発電するとなるとこの限られた場所を得ることが決定的に重要となります。また気温調節もこの地域の方が簡単です。有人の施設が作られるとしたらこれは非常に重要です。

もう一つの貴重な資源は凍った水です。これは南極の近くの、常に暗闇の中に存在しているクレーターの中にあると考えられています。なので月面で最も価値があると考えられるのはこのクレーターの近くで、かつ太陽光があたる南極近くのスポットとなります。月面を開発するとしたらここを多くの企業・団体が欲しがるはずです。水を発掘できて、そして太陽光でエネルギーも得られる。「この両方の組み合わせは月面では極めて珍しく、2つのうち特にエネルギー源の方が乏しくなっています」とElvisさんのチームは述べています。

それだけ珍しいため、たった一つの国、もしくはたった一つの企業がこういったスポットを全て占有してしまうことは難しくないと指摘しているんですね。占有してしまうことで、他の団体が資源を得ることを効果的に防ぐことができると。

これによって「急いで月面に行ってそこを占有しろ!!」と国家間、企業間の競争を引き起こす可能性があると言っています。そしてこれが国家間の緊張を生むことは想像に難くありません。そうなってしまう前に、何らかのポリシーを共有する必要があるとElvisさんは提言しています。

source: MIT Technology Review

(塚本 紺)

最終更新:8月31日(水)22時10分

ギズモード・ジャパン