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差別の理不尽、感覚で学ぶ 同和問題啓発強調月間インタビュー

佐賀新聞 8月31日(水)18時50分配信

佐賀県人権・同和教育研究協議会 松本英将・前研究局次長に聞く

 インターネット上には今、被差別部落の人たちや在日外国人、障害者らに対する差別的な言葉があふれている。ヘイトスピーチ(憎悪表現)やヘイトクライム(憎悪犯罪)という深刻な人権侵害を生む土壌にもなっており、教育で差別の芽を摘むことは社会の重要課題になっている。8月は同和問題啓発強調月間。佐賀県人権・同和教育研究協議会(佐同教)の松本英将さん(47)に、現状と今後の人権教育のあり方について聞いた。

 -松本さんは小学校教諭として20年間、人権教育に尽力してきた。同和問題をめぐる現状と課題は。

ネットにあふれる悪意

 部落差別の解消を目指し、国が同和対策事業に取り組んで50年近くになる。結婚差別や就職差別は依然としてあるが、随分減った。「寝た子を起こすな」というか、これ以上、同和問題に取り組まなくても差別は自然と解消されるという意見も聞こえてくるが、ネット上には被差別部落に対する間違った情報や悪意に満ちた言葉があふれており、子どもたちがそれをうのみにする危険性がある。

 県内でも10年ほど前、県立高校を卒業した大学生が、部落差別に関わる賤称(せんしょう)語を使った中傷の手紙を母校や教師に送った。前年度は中学校で、生徒が同級生に賤称語を使っている。これらはネットだけが要因ではないが、「寝た子を起こすな」という考え方はますます成り立たなくなっている。

-正しい知識こそが差別を防止するというのは人権教育の基本だが、松本さんはそれだけでは不十分という考えに至った。

 長い間、県内では「部落問題の歴史を正しく教えれば、子どもたちの心は差別解消に向かう」という認識のもと、知識教育に力が注がれてきた。同時に「差別を受けた人はこんなつらい思いをしているから、差別をなくそう」という「同情」や「思いやり」の学習が行われた。これでは、子どもたちが部落問題を「昔のこと」「かわいそうだけど自分には関係ないこと」と捉えてしまう恐れがある。

 克服するには「差別はいけません」的な学習から脱却し、現代の部落問題を学ぶことを通して、「差別とは何か」「なぜ起きるのか」「どうすれば乗り越えられるか」という学習に転換しなければならない。

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最終更新:8月31日(水)18時50分

佐賀新聞