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下水バイオガスの余剰分が2億円の収入に、400世帯分の電力を作る

スマートジャパン 9月1日(木)9時25分配信

 太平洋に面した仙台港の近くに、宮城県が運営する「仙塩(せんしお)浄化センター」がある。1978年に稼働した県内で最大の処理能力がある浄化センターで、1日に20万立方メートルにのぼる下水を処理している。

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 大量の下水を処理する工程で生まれるバイオガス(消化ガス)はセンター内の施設で燃料に利用しても余るため、従来は焼却してきた。この余剰バイオガスを使って新たに発電事業を開始する計画だ。公募で選ばれた新潟県の大原鉄工所がバイオガス発電設備を建設・運営する。大原鉄工所は新潟市の浄化センターなどにバイオガス発電設備を導入した実績がある。

 仙塩浄化センターでは1台あたり50kW(キロワット)の発電能力がある発電機7台を導入する。合計で350kWになり、年間の発電量は144万kWh(キロワット時)を見込んでいる。一般家庭の使用量(年間300kWh)に換算して400世帯分に相当する。2016年11月から設計・建設に着手して、2018年度内に運転を開始する予定だ。

 発電した電力は固定価格買取制度を通じて売電する。バイオガス(メタン発酵ガス)による電力の買取価格は1kWhあたり39円(税抜き)に設定されていて、年間に5600万円の売電収入を得られる見通しだ。買取期間の20年間の累計では11億円を超える。

 このうち宮城県はバイオガスを発電事業者に提供して約2億円の収入を想定している。従来は単に焼やして処分していたバイオガスが再生可能エネルギーに生まれ変わり、自治体に新たな収入をもたらしてくれる。

下水バイオガスから水素を製造する試みも

 仙塩浄化センターには仙台市をはじめ、周辺の市と町を含めて6つの自治体から下水が送られてくる。下水は水と汚泥に分けたうえで、水は塩素で殺菌して海や川に放流する一方、汚泥は発酵させて容量を減らしてから焼却する方法が一般的だ。この過程で発酵に伴って大量のバイオガスが発生する。

 仙塩浄化センターでは年間に245万立方メートルのバイオガスが発生する。そのうち7割を汚泥の焼却炉などの燃料に利用している。余った3割(約80万立方メートル)のバイオガスを発電用に供給する計画だ。

 宮城県は県内7カ所で浄化センターを運営している。バイオガス発電を実施するのは仙塩浄化センターが初めてで、今後は他の浄化センターにも広げていく可能性がある。その一方でバイオガスから水素を製造することにも取り組んでいく。

 国土交通省が推進する下水の汚泥から水素を製造する実証プロジェクトの一環で、7カ所の浄化センターを対象に実現可能性を調査する。燃料電池を利用した発電事業や水素ステーションを併設して燃料電池自動車に水素を供給する事業の採算性についても検証する予定だ。

 すでに福岡市の「中部水処理センター」では国土交通省の実証プロジェクトの第1号として、下水バイオガスから水素を製造して燃料電池自動車に供給する設備が2015年11月に稼働している。生物由来のバイオガスから作った水素は製造段階と利用段階を通して二酸化炭素(CO2)を排出しないクリーンなエネルギーになる。

最終更新:9月1日(木)9時25分

スマートジャパン