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帝国書院2度目訂正 高校教科書、文科省が承認

琉球新報 9月1日(木)12時56分配信

 【東京】2017年度から使用される高校教科書の検定結果を巡り、帝国書院「新現代社会」のコラムに沖縄経済や米軍基地について事実誤認の記述があった問題で、帝国書院が内容について2回目の訂正を文部科学省に申請し、30日に同省が承認したことが分かった。訂正は沖縄関係予算について「振興資金」としていた部分を「振興予算」とした上で、注釈で沖縄関係予算が内閣府沖縄担当部局で一括計上されていることを説明するなど、数カ所を変更している。


 帝国書院は今年3月の教科書検定結果公表時は「県内の経済が基地に依存している度合いはきわめて高い」などと事実と異なる記述をしていた。

 沖縄関係予算を巡る記述について、訂正前は米軍が集中していることなど、さまざまな特殊事情を考慮して「毎年約3000億円の振興資金を沖縄県に支出」としていたが、訂正後は「毎年約3000億円の振興予算を沖縄に支出」と変更した。沖縄戦をめぐる記述では、訂正前に「1945年4月、アメリカ軍は沖縄本島に上陸」としていた部分を「1945年3月、アメリカ軍は沖縄に上陸」と改め、45年4月に米軍が沖縄本島に上陸したことが沖縄戦の始まりだと誤解される文を修正している。

 基地と経済の関係で「アメリカ軍がいることで、経済効果があるという意見もある」という記述については、「基地返還による経済効果が基地関連収入を上まわる試算もある」との注釈が付いた。米軍再編の文言では「沖縄の基地負担軽減に向けて」との文言が挿入された。

 文部科学省によると、教科書会社が2回の訂正申請をすることは異例で、22日に申請を受け、30日付で訂正を承認した。訂正前の教科書はすでに見本本が、全国の教育委員会などに送付されているが、帝国書院は教科書が供給される来年4月までに文言を修正する。

 帝国書院の担当者は琉球新報の取材に対し、訂正をした理由について「振興資金の部分などで、沖縄に隠れた資金があると捉えられ、誤解される可能性もあった。供給本に向けて分かりやすい説明をするために訂正申請を出すことを決めた」などと説明した。


「リンク論、なお誤解」/識者「修正不十分」と指摘

 沖縄経済や米軍基地について事実誤認の記述があった帝国書院「新現代社会」のコラムで、帝国書院が2回目の訂正申請したことに、県内の識者からは「(米軍基地と予算の)リンク論の誤解を与える恐れは修正されていない」などとの指摘が上がった。

 「9・29県民大会決議を実現させる会」の高嶋伸欣琉球大名誉教授は、沖縄戦開始時期が3月に訂正されたことに「当然の再訂正であり、今後も(帝国書院内で)語り継いでもらえると思う」とした。一方、基地経済に関する記述では「注釈を付け、ぎりぎり是正されることにはなると思うが、沖縄が優遇されているという誤った印象が本土社会に広がっているだけに、そうではないと(生徒に)気付かせる書き方には必ずしもなっていない。全面改定の際にはしっかり書き直してほしい」と、不十分さを指摘。2度の訂正となったが「1度目の訂正申請の、文科省の吟味が不十分だったことの表れだ」とした。

 沖縄振興政策の変遷に詳しい宮田裕沖縄大・沖縄国際大特別研究員は、「振興資金」の文言が「振興予算」に訂正され、注釈で一括計上について記述されたものの「米軍基地の集中と関連付けて振興予算を支出しているという記述は、リンク論の誤解を与える恐れが修正されていない」と指摘する。「沖縄振興の本質は、27年間の米統治で分断された沖縄に対し、国が責任を持って振興するという意味だ。注釈で記述してもその本質が反映されておらず、十分検証されていない」とした。また、米軍の存在で「経済効果があるという意見もある」との記述に「基地返還による経済効果が基地関連収入を上まわる試算もある」との注釈がついたことには「注釈で書くべきことではなく、本文では経済効果論を強調しており、施政権下での基地経済のイメージを与える」と批判した。

琉球新報社

最終更新:9月1日(木)12時56分

琉球新報