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焦点:韓国住宅ブームに供給過剰の影、家計債務の膨張懸念も

ロイター 9月1日(木)17時37分配信

Cynthia Kim

[龍仁(韓国) 29日 ロイター] - ソウル南方の衛星都市・龍仁では、オレンジ色の建設用クレーンが立ち並び、光り輝く高層ビルの建設を競い合うように進めている。だが、不動産仲介業者のKim Woong-jib氏は、マンション購入予定者には既存の物件を勧めているという。

政府のデータによれば、100万人都市の龍仁では5301戸の新築物件が売れ残っているという。これは韓国でも最高水準であり、政策当局が警戒している住宅供給過剰の兆候だ。

過去に類を見ない超低金利に刺激された不動産デベロッパーは、記録的なペースでマンション建設を進めており、停滞する同国経済における1つの明るい要素となっている。

しかし、この住宅建設ブームは同時に借入れの増大を招いている。韓国の家計債務は、すでに新興市場国のなかでも最高レベルに達しており、消費者支出を圧迫しかねない。政府も、悪影響をもたらすブーム崩壊を回避するための措置に着手している。

龍仁のような都市では、新築マンションの建設ラッシュによって、中古価格にも悪影響が出る可能性がある。

10年前から龍仁で不動産仲介業を営むKim氏は、「建設し過ぎており、無責任だ」と憤慨する。「損失が見込まれるので、とても自分の顧客に、こうした新築物件を勧めることはできない」

今年上半期に韓国で発売された住宅総数は、3.7%増の29万9000戸だった。政府のデータによれば、2015年の新規住宅着工件数は過去最高の72万戸だった。

だが、経済の停滞と、OECD加盟国の中でも最も速いペースで進行する人口の高齢化が、住宅需要を圧迫し続けている。

また、香港やシンガポール、シドニーといった市場とは異なり、韓国では移民の流入が少なく、販売と価格に刺激を与える外国人購入者もほとんどいない。

迫り来る供給過剰状態は、一貫した低金利と2014年にモーゲージローン資産価値比率の上限が緩和されたことの残存効果である。いずれも、景気刺激を意図した措置だった。

これらの措置によって住宅購入が増加し、今年1月には、家計債務の急増を抑えるための融資ルールの厳格化へと至った。

今年4ー6月期には、韓国の家計債務は前年同期比11.1%増加し、過去最高の1257兆3000億ウォン(約115兆8000億円)に達した。

国際決済銀行のデータによれば、韓国の家計債務は2015年のGDP比で88.4%に達しており、これは米国や日本の水準さえ上回っている。

政府は25日、家計債務の抑制に向けた追加措置を発表。一部の手数料を削減することにより、利子だけの返済が一時期可能となるインタレスト・オンリーローンではなく、固定金利ローンを利用するよう家計に促すと述べた。併せて、銀行融資基準の厳格化指針と新規住宅供給の抑制策を発表した。

<値崩れの気配も>

富裕層の多いソウル市江南区などの地域では、新築マンションは発売されると同時に飛ぶように売れているが、龍仁などでは過剰供給となる地区もすでに現れている。

建設ブームに火がついた1つの要因は、現代建設<006360.KS>やGS建設<006360.KS>など大手建設会社が、中東など海外における受注の落ち込みを相殺しようとしたためだ。

格付け会社ムーディーズの予想では、建設大手10社は今年下半期に約17万戸の建設プロジェクトを発売する見込みであり、これは上半期に対し57%増加となる。「(これにより)今後12カ月から18カ月にわたって、売れ残り在庫が大幅に増大する可能性がある」と同社は18日のメモで指摘している。

デベロッパーのソヒ建設<035890.KQ>の広報担当者は、不動産市場に供給過剰が生じているかという質問に対して、「最近では明らかに広く議論されているが、何とも言いにくい」と語る。

住宅バブルが崩壊した場合、住宅供給過剰と債務負担が金融市場の動揺を招くのではないかと政策担当者は懸念している、とユージーン・インベストメント&セキュリティーズのエコノミスト、Lee Sang-jae氏は指摘する。

また、高水準の債務により実質家計支出にも悪影響が出ている。韓国統計局によれば、実質家計支出は4─6月に年率0.8%減少した。

「住宅ブームは、雇用と企業取引を増大させることで成長を支えているが、家計の消費支出を圧迫している」とLee氏は語る。

これまでのところ、マンション価格指数が7月に過去最高を記録するなど、全国的な価格は上昇している。

しかし龍仁を走るバスには、「特別値引き」をうたうマンション広告が掲示されており、購入客は供給過剰による値崩れを懸念している。

龍仁でコンビニエンスストアを経営するJi Soon-jaさんは、昨年、近隣でこれから建設されるマンション購入のため5600万ウォンの頭金を払った。だが、新築マンションが増え、購入予定者が減っているのを見て、彼女は気を揉むようになった。

ソヒ建設は韓国で11件のプロジェクトを着工しており、計画段階のプロジェクトが9件あるが、広報担当者によれば、龍仁市内の開発については発売される住戸の80%がすでに売約済みであるという。

ローンの次回返済分がまもなく期日を迎えるが、Jiさんは払い込むべきか、決めかねているという。

「明らかに供給過剰だ。やたらに多くのマンションを建てて、売るべきでない住宅を売っているから、私のような愚かな人間がそれを買ってしまうのだ」と彼女は語った。

(翻訳:エァクレーレン)

最終更新:9月1日(木)17時37分

ロイター

TEDカンファレンスのプレゼンテーション動画

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昔は街の広場で、現代はYouTubeで。歴史を通じ、公開処刑には必ず人だかりがつきものでした。人が処刑というものを、恐ろしく不快に感じながらも、つい気になって見てしまうのはなぜか。フランシス・ラーソンが人間と公開処刑の歴史、中でも斬首刑に焦点を当てて解説したこのトークは、気分の良い内容ばかりではありませんが、同時に興味をそそること間違いないでしょう。