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AV業界30年の男優・辻丸さん「次に検挙されるのは僕かも」撮影現場の実態語る

弁護士ドットコム 9/1(木) 9:50配信

アダルトビデオ(AV)への出演強要問題をめぐっては、多くの業界関係者がネットを使って意見を表明している。しかし、女性に比べて、AV男優や監督が名前を出して情報発信していることは少ない。

一体、業界の男性たちはこの問題をどう捉えているのだろうか。ブログやツイッターで積極的に意見を発信している業界歴約30年の現役AV男優「辻丸」(つじまる)さんに話を聞いた。

前編となるこの記事では、辻丸さんが見聞きした強要の実態、後編では健全化に向けた業界内外の動きについての意見をまとめる。

●無理やりAV女優にすることは減った

−−AVへの出演強要を見聞きしたことはありますか?

僕は女の子が「AVなんて聞いていません」と言うのを脅したり、なだめたりという現場に出くわしたことはないんです。ただ、その手の話は昔よく聞きました。

たとえば、僕がデビューした頃に聞いた、有名AV監督の手口。その人はPVの撮影と称して女の子を無人島に連れて行くんです。昼間は確かにPVの撮影。それで夜になると「じゃあAV撮らせて」と。女の子が嫌がると、目の前に札束を積んでにらめっこです。監督の方はお金さえ受け取ってもらえれば、「納得」したことになるから「合法」なんだ、って…。

−−最近もそういう話を聞きますか?

「なくはない」くらいです。メイクさんから「AVだって知らずに現場に来ていた子がいた」という話を聞いたことがあります。

この30年で噂自体はかなり減りました。僕がデビューした頃の女優さんは、それこそ借金があってお金のためにイヤイヤやっているような子が多かったのですが、2000年前後ぐらいから、スカウトではなく応募とか、自ら志願してAV女優になる子が増えてきたんです。今はほとんどが自発的なAV女優じゃないかな。

−−なぜ進んでAV女優になるのでしょうか?

ひとつはお金。一時に比べて報酬が下がったとは言え、今もそれなりの額は出ています。もうひとつは精神面でしょう。撮影では現場が自分中心で動くから、大切にされて承認欲求が満たされる。今はイベントやネットでファンとつながって「プチ芸能界」も味わえますから。

学生やフリーターだけでなく、シングルマザーからAV女優になる人もいます。そういう方は特に経済的な面が大きいようです。熟女系の女優さんの場合は「性的好奇心」という理由が多いですね。今まで性的に満足したことがないから非日常を経験してみたい、若い頃にできなかったことをやってみたいという人が少なくありません。AVは経済的、精神的、性的なセーフティーネットになっている部分があると思います。

−−進んで女優になる人が多いのに、どうして強要被害が出るのでしょうか?

はっきりとしたことは僕にも分かりません。ただ、昔と比べて、今は作品の数が多いし、女優さんの回転も速い。常に売れる子を探しているのではないかと思います。

●女優が現場で「リスカ」

−−撮影内容が事前の説明と違うという被害例も報告されていますが…

僕の仕事の3~4割ぐらいが女の子を拷問、レイプしたり、言葉責めで罵倒したりする役。人権侵害的な撮影がなかったかというと否定はできません。

ある撮影では、女優さんが「レイプとは聞いていたけど、ここまでやることはないでしょう」と話していた。ハードな内容に怒って、途中でボイコットする子も。仕事とはいえ、「あそこまでやって良かったのか」と女優さんに申し訳なく思うことはあります。

「ドッキリ物」と呼ばれるジャンルには問題が多いと思います。台本には「インタビュー」としか書いていないのに、女優が罵声を浴びせられたり、レイプされたりする内容です。もちろん演技で返してくる子もいるけど、そうじゃない子もいる。こうした「多少の騙し」はAV業界の一部で伝統的に続けられています。

ついこの間の撮影では、相手の女優が精神的に不安定になってしまって、現場でリストカットする出来事がありました。無理やり出演させているわけじゃなくて、同意があってもそういうことは起こり得る。ただし、トラブルがあっても監督から「箝口令」が敷かれるので表には出てきません。

−−拷問物ではもっと酷い撮影が行われているのでは?

拷問物の場合は、ちゃんと安全に配慮していて、事前にリハーサルをやって、危なかったら撮影を止めるようにしているんです。もちろん、ケガすれすれのところまでやる撮影もあります。ですが、女優さんがハードな撮影を嫌っているかというと、好んでやる女優さんもいるし、多くの場合、撮影後はあっけらかんとしています。

とはいえ、警察は「挙げよう」と思えば、いつでもできる。キャンプ場でAVを撮ったということで、52人が書類送検される出来事がありましたが、次に書類送検されるのは僕なんじゃないかなと考えることもあります。

でも、僕の立場では、監督からやってくれと言われたら、その通りにやるのが仕事。男優は現場を信頼してやるしかない。ただ、現場によっては、やらせるだけやらせておいて、女優の事務所ともめたら僕に責任をおっ被せてくるところもある。そういうところも含め、AV業界はまだまだ「グレー」だと思います。

−−それでもAV男優を続けるのはなぜですか?

僕は人権侵害をかなりやってきてしまった方なので、AV男優という仕事に誇りは持っていません。でも、30年間、これだけで食ってきたので、もはや「是非もない」んですよ。いつ「挙げられる」か分かりませんが、これからも仕事は続けます。

僕はこのグレーな業界でも、体を張ってリスクを引き受けているAV女優だけは尊敬しています。今回も出演強要の問題に意見を発信しているのは、ほとんどが女優さんです。矛盾していると思われるかも知れないし、贖罪というと偽善的ですけど、僕は今回の強要問題をきっかけにAVが「女性問題」であるということを考えてもらえればと思っているんです。

(後編は近日公開予定)

弁護士ドットコムニュース編集部

最終更新:9/1(木) 14:43

弁護士ドットコム

北朝鮮からの脱出
北朝鮮での幼少時代、『ここは地球上最高の国』と信じていたイ・ヒョンソだったが、90年代の大飢饉に接してその考えに疑問を抱き始める。14歳で脱北、その後中国で素性を隠しながらの生活が始まる。 これは、必死で毎日を生き延びてきた彼女の悲惨な日々とその先に見えた希望の物語。そして、北朝鮮から遠く離れても、なお常に危険に脅かされ続ける同朋達への力強いメッセージが込められている。