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青々した畑が・・・ 河川氾濫 産地直撃 台風10号

日本農業新聞 9/1(木) 7:00配信

 北海道と東北各地で記録的大雨をもたらした台風10号の上陸から一夜明けた31日、農地やトラクター、JA施設などが茶色の濁流にのみ込まれ、甚大な浸水被害が発生した。各地のJAは7、9、11号に加えて10号と異例の台風襲来で、被害の把握に追われている。岩手県岩泉町などでは死者も相次いだ。「もう、勘弁してくれ」。農家からは悲鳴が上がる。

テンサイ、ジャガイモ 収穫間近あぜん 北海道

 畑が川と化した北海道帯広市中島町。台風10号の豪雨で川が氾濫し、一夜にして農地の面影は消えた。畑には流木やがれきが散乱、畑の脇の道路には収穫を控えたテンサイやジャガイモが転がっていた。

 「川にしか見えないが、ここは確かに先祖から受け継いだ畑だった。もう、この畑で農業はできないが、それだけは覚えておいてほしい」と畑作農家の竹田建伸さん(67)。31日明け方、避難所で過ごしていた竹田さんは仲間と見回りに来て、この状況を目の当たりにした。1日前までは青々とテンサイやジャガイモの葉が生い茂っていただけに「言葉が出なかった」。

 農家の岸塚隆司さん(56)も「この地で生まれ、農業をしてきた。悪夢としか言えない」。2次災害の恐れがあり、近付くこともできない畑を見つめ「直視できない。収穫間近だったのに」とつぶやいた。あまりのむごさに涙を流す女性農業者の姿もあった。

 管内のJA帯広大正によるとテンサイ、スイートコーン、ジャガイモ、豆類の畑が少なくとも25ヘクタールは川の濁流にのみ込まれた。収穫できないどころか、営農再開さえ厳しい状況だ。それ以外の畑でも大半が水に漬かるなど、湿害が深刻。同JAの吉田伸行組合長は「被害の全容は計り知れない。JAで喫緊の対策は実施するが、この大惨事は政治の支援が欠かせない」と訴える。

 食料基地の北海道十勝地方を襲った10号は、各地に深い傷跡を残した。橋の崩落や川の氾濫が相次ぎ、被害状況は把握できない状況だ。農作物だけではなく物流にも影響が出ている。

 南富良野町では、空知川の氾濫により幾寅・岐阜地区などで住宅街が浸水した。同町北側にある橋の崩落や通行止めにより、同町は孤立状態となった。JAふらの管内では農地の浸水や冠水、農作物の流亡被害が相次いだ。

 同町下金山地区では、氾濫した河川の水が農地に流れ込む被害が発生した。60代の男性の畑では、タマネギ2アールが流失。ハウスやジャガイモ畑10アールも浸水被害に遭った。前日に避難し、31日昼すぎに畑の様子を見に来たこの男性は、「収穫目前だったのに残念」と苦渋の表情を浮かべた。

 畑のすぐ近くを流れる空知川は、これまでの台風では水位はぎりぎりまで上昇したが氾濫はしなかった。現場に居合わせた同町職員は「これまでの台風以上の雨だった」と語った。

水田、自宅までも 暮らし根こそぎ 岩手県

 岩手県岩泉町では、小本川が氾濫、田畑の冠水や道路の崩壊、住宅の損壊などが発生。同町中島地区では収穫を控えた水田が稲穂まで泥に漬かり、サイロも倒壊した。

 米20アール、野菜30アールを栽培する農家の千葉英助さん(88)は、水が引き始めた31日朝から、避難先の友人宅から戻り、片付けに追われた。川からの土砂が家に流れ込み自宅1階は畳が浮いて散乱、ドアも外れ流されてしまった。「家の中の片付けも終わりが見えない。車も水に漬かり、故障してしまい、避難所にも行くことができない」。暮らしが根こそぎ奪われ、言葉を詰まらせた。(尾原浩子、川崎勇、塩崎恵)

日本農業新聞

最終更新:9/1(木) 7:00

日本農業新聞