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<台風10号・ルポ>増える水かさに恐怖 久慈市街地一変、胸痛く

デーリー東北新聞社 9月1日(木)11時38分配信

 どんどん水かさが増してくる。冠水した道路を川のように流れる水に恐怖を感じた。

 「孤立してしまうかも」―。大型の台風10号に見舞われた30日夜、避難指示の発令もあり、久慈市川崎町の職場兼住居の久慈支局を空けて、取材先の市役所で一晩を明かした。

 午前中からの台風取材。これまで被害がなく終わることが多かったが、少し胸騒ぎがしていた。

 午後3時すぎに風雨が強くなり、久慈港では白い波が岸壁の漁船を大きく揺らした。夕方になると激しい雨で、運転中の視界は悪くなるばかり。支局周辺は真っ暗で、普段は飲食店のネオンがまぶしい川崎町が寂しい。

 「ゴー」。突然、大きな音が聞こえた。近くの排水溝から水があふれ、川崎町と本町を結ぶ地下道は濁流にのみ込まれた。水の勢いは衰えない。「支局が浸水するのではないか」と心配になった。

 選択肢は二つ。支局にとどまるか否か。経験値が高い近所の人によると、水かさはさらに増すという。取材に影響が出るかもしれないので、拠点を移すことを決断。雨と汗でずぶぬれだったため、着替えと食料をバッグに詰め込んだ。

 市役所駐車場に車を止めて2階の記者室へ。「市街地は水浸しだ」「川が氾濫したらしい」。次々と情報が舞い込んでくる。そのうち駐車場にも水が押し寄せ、車を動かせなくなった。

 ようやく原稿に着手したのは午後10時すぎ。一人で立ち回っていたため情報収集に手間取り、うまく取材できなかったのが悔やまれる。それでも近所の居酒屋のマスターやスナックのママからの情報提供は貴重で、励みになった。

 日付が変わった翌31日。市災害対策本部の内容を確認した後、記者室の床で眠りに就いた。硬くて冷たかった。外はまだ消防車のサイレンが鳴り響いていた。

 まさか自分が避難することになるとは。家(支局)に戻れない点では、東日本大震災より不安な夜だった。

 2時間ほど仮眠して午前5時に起床。水が引いたので支局に戻ると、駐車場には津波の後のように泥がたまっていたが、玄関のわずか5センチ手前で浸水は回避できた。不幸中の幸いとはいえ、近くの住宅や店舗が被害を受けている様子を見て、胸が痛んだ。

デーリー東北新聞社

最終更新:9月1日(木)12時37分

デーリー東北新聞社

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