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【米大統領選2016】メキシコ訪問のトランプ氏、国境の壁建設を主張

BBC News 9月1日(木)9時34分配信

メキシコを訪問した米大統領選の共和党候補ドナルド・トランプ氏は31日、エンリケ・ペニャニエト大統領との会談で、両国国境に壁を建設するという自らの公約をあらためて主張した。

トランプ氏は会談後、壁建設の費用負担については協議しなかったと述べた。しかしペニャニエト大統領はこれを否定し、「メキシコは払わないとはっきり伝えた」とツイートした。

しかしトランプ氏は会談後にアリゾナ州フィーニックスで開いた支援者集会で、メキシコが「100%」建設費用を負担すると強調した。集会でトランプ氏はさらに、1100万人の不法移民を強制送還するという公約について、「犯罪的な外国人」の送還が優先だと述べ「違法に米国に入国した人は誰でも送還の対象になる。法律があるというのはそういうことだ」と述べた。

不法移民対策としてメキシコ国境に壁を造る、費用はメキシコに負担させる――というのが、トランプ氏支持者が重視する主な選挙公約のひとつ。

メキシコシティで開いた共同記者会見で、ペニャニエト大統領はトランプ氏のこれまでの発言でメキシコの国民感情は傷ついたが、今ではトランプ氏が両国関係を築きたいと真に願っていると信じると述べた。

トランプ氏は、メキシコ人が「素晴らしい」「目覚ましい」人たちだと称賛した。トランプ氏は選挙戦序盤、メキシコ移民は「強姦犯」で「殺人者」だと公言していた。

11月の大統領選本選に向けて、トランプ氏の支持率は全国的にも主要激戦州でも、民主党候補のヒラリー・クリントン氏に後れをとっている。クリントン氏はかねてから、少数者の間で特に強く支持されている。

トランプ氏は、ペニャニエト大統領には率直に意見を伝えたと述べ、米国在住のメキシコ人は「素晴らしい貢献をしてきた」と称えるなど、自分のこれまでの発言から距離を置こうとした。

「私はメキシコ人にすごく良い感情を持っている。目覚ましい人たちだ」とトランプ氏は述べ、自分は多くのメキシコ人を採用してきた、「信仰とコミュニティをとても重視する素晴らしい人たちだ」と称賛した。

トランプ氏は、ペニャニエト大統領の会談で5つの点を取り上げたと説明した。5つの点は次の通り――。

・不法移民終結

・国境警備強化、柵や壁などを建設する権利

・麻薬カルテル解体、越境する現金と武器の流れ途絶

・北米自由貿易協定(NAFTA)改革

・製造業の富をアメリカ半球から流出させないこと

トランプ氏は「両国がすべての国境に物理的な障壁を建設する権利を、双方の国に認め、尊重する」と述べた。ただし、費用負担については協議しなかったと話した。

メキシコ訪問の前には、メキシコが壁建設費を負担しない限り、米国在住メキシコ人からの現金送金を停止させると圧力をかけていた。

会見の終わりにトランプ氏は、ペニャニエト大統領に招待されたことを誇りに思うと述べ、「あなたを友達と呼びます」と表明した。

ペニャニエト大統領は、国境は問題だと認めた上で、メキシコ人が米国に大きく貢献してきたと発言。米国では「メキシコへの輸出に600万人の雇用が依存している」と指摘した。

大統領は、各地のメキシコ人を守ることが自分の優先課題だと述べ、「米国にいるメキシコ人は正直で勤勉な人たちだ。家族とコミュニティーと法律を尊重している。誰からも尊敬されるに値する人たちだ」と強調した。

大統領はトランプ氏だけでなく、クリントン氏も招待している。しかしメキシコ国内ではトランプ氏への招待に批判もある。

フォックス元大統領はトランプ氏についてCNNに対して、「私たちはあの人が嫌いだ。来てほしくない。訪問を拒否する」と発言していた。

カルデロン前大統領夫人のマルガリータ・ザバラさんは「私たちメキシコ人には尊厳がある。あなたのヘイトスピーチを拒絶する」とツイートした。

○トランプ氏がメキシコについて

・「麻薬を持ち込んでる。犯罪を持ち込んでる。強姦犯だ」(2015年5月)

・メキシコは「ほとんどどの国よりも米国から金をだまし取ってる」(2015年2月)

・「メキシコは依然として米国が結んだひどい通商協定のおかげで、何十億ももうけている。そればかりか、米国内の違法移民が送金する数十億ドルに大きく依存している」(移民政策より)

○メキシコ人がトランプ氏について

ペニャニエト大統領は今年3月、トランプ氏の強硬発言を批判。「ああやってムッソリーニは政権を手にした。ああやってヒットラーは政権を手にした。連中は経済危機を経た当時の人類を取り巻く状況、あるいは問題を利用したんだ」と述べた。

カルデロン前大統領は、「メキシコ国民のみなさん、あんな馬鹿げた壁のために私たちは一銭たりとも払ったりしません」と強調した。

不法就労報酬の送金をすべて回収するというトランプ氏発言を受けて、フォックス元大統領はBBCに、「トランプは金を盗むつもりか?  そんなことを考えるなんて、いったいどういう人間なのか?  信じがたい」と強く批判していた。

<分析>アンソニー・ザーチャー、BBCニュース、ワシントン

ドナルド・トランプ氏はメキシコを米国の敵と呼んだ。しかし31日には、メキシコのペニャニエト大統領を友人と呼んだ。

いかにも対照的なこの発言は、「外交的なドナルド」と共和党予備選中のトランプ氏との違いを浮き彫りにしている。予備選中のトランプ氏は、不法移民と国境警備に弱腰だと対立候補を次々に攻撃して勝ち進む、火の玉のような存在だった。

そのトランプ氏にとって、メキシコシティ訪問のねらいは、自分は国際舞台で国の代表を立派に務められると示すことだったのかもしれない。ヒラリー・クリントン氏が警告するような、恥さらしなことにはならず物議もかもさないと。もしそれが狙いだったなら、いきなり決まったメキシコ訪問は成功だった。

しかし南の国境を越えての意表を突く訪問には、代償が伴うかもしれない。強硬な移民政策は穏健な有権者の間で不人気だが、今回のメキシコ訪問によってますます、強硬路線から中道へ歩み寄るのが難しくなるだろう。

一方で熱心なトランプ支持者にとっては、せっかくメキシコの大統領と対面したのに、壁の建設費負担の話題を避けて、「アメリカ半球での製造」保護を話題にしたというのが、むしろ神経を逆なでされるところかもしれない。

「外交的なドナルド」はトランプ支持者が期待した候補ではないかもしれないのだ。

(英語記事 US election 2016: Trump defends wall on Mexico visit)

(c) BBC News

最終更新:9月1日(木)22時16分

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