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高齢者避難の課題浮き彫り 台風10号被害、静岡県内も危機感

@S[アットエス] by 静岡新聞 9月2日(金)7時32分配信

 東北から北海道に大雨を降らせた台風10号の影響で岩手県岩泉町の高齢者グループホームで9人が亡くなったことを受け、静岡県内の高齢者施設管理者や行政担当者らは危機意識を強めている。災害時要配慮者の避難の難しさは、全国共通の課題。台風シーズンがまだ続く中、関係者は危機管理態勢の再確認を迫られている。

 「木が足元の川を流れていくのを見て、危険を察知した」。静岡市葵区の高齢者施設「アンビエスタ」の水鳥武蔵施設長(31)は2年前の秋に台風が県内を直撃した際、グループホームの利用者ら約10人を近隣の施設まで避難させた経験を持つ。

 同施設の前を山沿いに流れる安倍川の支流は川幅5メートルほどで、避難勧告が出る前に、水位が急激に上昇した。雨が激しさを増す中、認知症を抱えた利用者の避難誘導には、職員5人の協力が必要だった。

 死者が出た岩泉町のグループホームでは被害発生時、施設内にいた職員は1人だけ。水鳥施設長は「認知症のお年寄りは状況が理解できないと、パニックを起こす。職員1人では何もできなかったはず」と指摘した上で、「高齢者施設はどこも採算面でギリギリ。経営者の理解がないと、防災上の理由で人員を増やすことは難しい」と苦境を打ち明ける。

 今回の台風で岩泉町は被害状況の把握に追われ、避難勧告の発令が遅れた。台風接近の時期や河川水位の変化などから段階ごとに取るべき行動を整理するために有効なのが、事前防災行動計画(タイムライン)。袋井市は県と一緒に本年度から、太田川と原野谷川の洪水に対応する同計画の運用を始めた。磯部剛同市防災課長(55)は「関係機関の連携を深め、危機意識を共有できる」と効果を強調する。

 同計画の策定には福祉施設事業者も加わった。被害が予想される施設は避難準備情報が出る前に、協定を結んだ避難先施設に受け入れを要請し、台風最接近が夜になる場合は夕方までに避難を完了する段取り。磯部課長は「早めの行動が非常に大切。計画で定めた段階で施設から要請がなければ、行政側から声を掛けたい」と今後の運用を見据えた。



 ■住民自らの判断も大切 静岡大防災総合センター・牛山素行教授(災害情報学)

 今回の台風で人的被害が出たグループホームがある地域には避難勧告の発令はなかったが、避難準備情報は出ていた。同情報は災害時要配慮者らへの避難呼び掛けも目的の一つで、対応できたのではと悔やまれる。川の近くで自分が住んでいる場所が河川と同じ高さなら、洪水の可能性がある。平時に災害の危険性をイメージすることが重要。下流の住宅密集地で降水量が少なくても、上流域で集中豪雨があれば、水害は起きる。台風は先読みが可能。行政頼みでなく、住民自ら降雨量や河川水位などの情報をチェックし、避難判断を行う意識も必要だと考える。

静岡新聞社

最終更新:9月2日(金)13時57分

@S[アットエス] by 静岡新聞