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老化に関与する物質AGEが虫歯の進行を抑制することを発見

MONOist 9月2日(金)8時55分配信

 大阪大学は2016年8月15日、蛍光によって象牙質内のAGE(糖化最終産物)を捉え、AGEが象牙質虫歯(齲蝕:うしょく)の進行に影響を与えることを世界で初めて明らかにしたと発表した。同大学歯学部附属病院の三浦治郎助教、基礎工学研究科の荒木勉名誉教授らの研究グループによるもので、成果は同日、国際学術誌「Journal of Dental Research」に公開された。

 組織の老化や糖尿病といった循環器系の疾患では、AGEが組織内に蓄積することが知られており、さまざまな医科領域で研究されている。同研究グループは、加齢によって歯も糖化し、AGEが象牙質に蓄積することによって歯のコラーゲンタンパク質が硬くなることを報告してきた。これまで、齲蝕象牙質にもAGEが含まれていることは知られていたが、象牙質のような石灰化組織内部に存在するコラーゲン線維では、試料があまりにも硬く、加工や検出手法に関してさまざまな問題があり、詳細なAGEの局在を調べることは極めて困難だった。

 今回の研究では、免疫組織化学的手法と蛍光寿命を指標にする光学的手法を用いるという、歯科学と工学の融合により、糖化と齲蝕の関係を初めて明らかにすることができた。

 具体的には、三浦助教らが、抗体反応を電子顕微鏡で観察する免疫電顕法を応用して、齲蝕内部におけるAGEの分布をナノメートルオーダーで観察することを可能にした。さらに、脱灰処理をせず酸を用いて効率的に象牙質内のコラーゲン線維を分解し、定量評価する手法を用いることで、AGEを安定して分析できるようにした。

 一方、荒木名誉教授らは、ナノ秒蛍光法の応用によって、コラーゲン分子間に架橋を作る架橋型AGEの存在によってコラーゲンの蛍光寿命が短くなることを発見。この、AGEの持つ蛍光現象を利用した蛍光寿命測定によって、齲蝕が進んでいる領域を選別することに成功した。

 これらにより、象牙質ではAGEが健常部に比べて齲蝕部に多く蓄積することを確認した。さらに、加齢により象牙質にAGEが蓄積することで、象牙質の耐酸性、耐酵素性が上がり、虫歯の進行を抑制していることが分かった。

 これらの知見は、歯科臨床において、AGEに関連した慢性齲蝕の進展メカニズムの解明や、新しい虫歯検出法ならびに治療法の開発に大きく貢献するという。また、全ての組織において、加齢や高血糖によって糖化が進行し、蛍光性のAGEが蓄積することが分かったことから、蛍光寿命の測定による糖尿病のスクリーニングや各部位の糖化状態から全身の疾患を評価するなどの応用が考えられるとしている。

最終更新:9月2日(金)8時55分

MONOist