ここから本文です

【米雇用統計】9月利上げは実現するか?「低空飛行の米経済」に不安感も

ZUU online 9/2(金) 17:10配信

8月の米雇用統計が間もなく発表される。
米雇用者数が7月まで2カ月連続で事前予想を大きく上回ったことから、FRB(米連邦準備理事会)は労働市場に対する自信を深めており、8月も好調な数字が示されれば、9月のFOMC(米連邦公開市場委員会)での利上げも視野に入れる必要がありそうだ。

とはいえ、ウォール街では「11月に大統領選挙を控えたこの時期に、利上げはありえないのではないか」との見方も少なくない。8月の雇用統計が想定内の結果となった場合には、ウォール街を悩ますことになりそうだ。

■FRBの責務は「物価の安定」と「雇用の最大化」

FRBでは「物価の安定」と「雇用の最大化」の2つの責務が連銀法により定められており、デュアル・マンデートと呼ばれている。具体的には、2%のインフレ率と完全失業率が目標に置かれている。

現在、FRBが想定している失業率は4.8%である。一般に、インフレ率とはCPI(消費者物価指数)を指し、基調判断には食品やエネルギーといった変動の激しい項目を除いたコア指数が重視される。

CPIのコア指数の前年同月比は、昨年11月以降は2%以上の伸び率で推移しており、7月現在も2.2%上昇となっている。また、FRBがインフレ指標として重視しているとされるPCE(個人消費支出)物価指数をみても、7月は前年同月比で1.6%上昇と目標をやや下回っている程度に過ぎない。

一方、7月の失業率は4.9%と昨年の10月以降は5.0%以下で安定的に推移している。デュアル・マンデートの観点に立てば、9月に利上げをしても問題がない状況にあることが理解できるだろう。

■数字は利上げの可能性を示唆している

雇用統計との関連でみると、最も注目される非農業部門の雇用数は、昨年12月の利上げ開始時点の3カ月間で72.4万人(昨年9~11月、月平均で24.1万人)増加していた。

今回は7月までの2カ月間で既に54.7万人(月平均で27.4万人)増加しており、8月に17.7万人増加すれば昨年12月の利上げの時の数字に並ぶ。事前予想では18万人程度の増加が見込まれており、ハードルは高くない。よほど大きく下振れない限り、9月の利上げをサポートする可能性が高い。

物価の先行きを占うバロメータとして注目度の高い、単位時間当たりの賃金の伸びについても、7月は前年同月比2.6%上昇と昨年11月の2.4%を上回っている。このことを考えると、8月も7月の水準さえ維持できれば、利上げを後押しする材料になりそうである。

■低空飛行続く米経済が心配?

しかし、それでもウォール街では利上げに懐疑的な向きが少なくない。懸念されるのは、米GDP(国内総生産)成長率の低空飛行が続いている点だ。

米実質GDPは昨年10~12月期が前期比年率0.9%増、1~3月期で同0.8%増、4~6月期1.1%増と3四半期連続で1.0%前後の低い伸びが続いている。

米GDPの見通しについては温度差がある。
たとえばアトランタ連銀が公表しているGDPナウは、7~9月期のGDPを3.5%増と予想している(8月29日現在)。一方、フィラデルフィア連銀が40の予想機関からのアンケートを集計したフォーキャスター調査(8月12日公表)によると、2016年のGDP成長率は1.5%にとどまる見通しで、これが実現すると2010年以降で最も低い数字となる。

昨年12月の利上げが「低成長を長期化させた一因」との見方もある。ウォール街の市場関係者からは「まだ低成長からの持ち直しが確認できていない現状で追加利上げを議論するのは時期尚早ではないか」と指摘する声も上がっている。

■ジャクソンホール後に高まった利上げ確度、ウォール街からは悲鳴も

イエレンFRB議長は8月26日のジャクソンホールでの講演で、「雇用と物価の目標達成に近づいている」と発言しており、FRBがデュアル・マンデートを果たしていることが確認された。イエレン議長は「利上げの根拠がここ数カ月で強まった」とも発言しており、いつ利上げをしても問題ないことを示唆している。

こうした発言を受けて、シカゴ・マーカンタイル取引所が公表しているFOMCでの利上げ確度も上昇した。6月の英EU離脱決定後には10%以下だった9月の利上げ確度が、8月下旬には30%前後まで上昇している。また、同様に6月下旬には1桁台だった12月の利上げ確度も60%近辺まで上昇した。

11月に大統領選挙を控えて株価の先行き不透明感もあることから、ウォール街では「いくら8月の雇用統計の数字が良くても9月の利上げだけは勘弁してほしい」という悲鳴も聞こえるが、ジャクソンホールでの発言は、こうした声への配慮が感じられない。

8月の雇用統計の内容が大方の事前予想の範囲内となった場合、大統領選を見据えて投資家が手控えムードとなるなかで、利上げ観測の高まりを受けて株式市場が混乱する場面も見られるかも知れない。(NY在住ジャーナリスト スーザン・グリーン)

最終更新:9/2(金) 17:10

ZUU online