ここから本文です

10年ぶりの来日、イザベル・ユペールが語る作品選びの条件

映画.com 9月2日(金)17時0分配信

 [映画.com ニュース] イザベル・ユペール主演作「アスファルト」が公開される。寂れた郊外の団地を舞台に、孤独を抱えた6人の男女の偶然の出会いを、オフビートなユーモアを交えて描く温かな作品だ。世界的な巨匠たちのミューズとして知られる一方で、若手やアジア圏の監督とも積極的に仕事をし、抜群の存在感でその作品の魅力を際立たせているユペール。映画史にその名を刻む、フランスの名女優が10年ぶりに来日し、出演作や作品選びの条件について語った。(取材・文/編集部 写真/間庭裕基)

 「長年女優をやっていても、それほど良いオファーがたくさん来るわけではないのです」と前置きし、出演作選びの条件を明かす。「私は監督で選びます。映画という建物を監督が作るとしたら、一番重要な柱になるから。そのほか、脚本や役柄、人物像などいろんな要素がありますが、まずは監督です」

 ジャン=リュック・ゴダール、クロード・シャブロル、マイケル・チミノ、ミヒャエル・ハネケらそうそうたる大御所ばかりでなく、年齢も国籍も越えた様々なタイプの監督の作品に出演。今作のサミュエル・ベンシェトリはフランスで作家、俳優としても活躍する40代の中堅監督で、「彼が書いた脚本の会話がすばらしく詩的で楽しく、簡潔明瞭だった」ことがオファーを受けた理由だ。「良い監督であれば、大体脚本も良いですし、その中で演じる人物像も良いのが普通ですが、とても良い役柄であったとしても、監督がそれほど信頼が置ける人物でない場合は、結果は良いものにはならないのです」

 1971年のデビュー以来、100本以上の作品に関わってきた。映画という媒体の魅力をこう語る。「映画を簡単に定義するのは難しいことですが、私が一番好きな部分は、柔軟性があるということ。つまり、5カ月かけて撮影することもあれば、ホン・サンスの作品のように9日で撮り上げることも可能なように、伸び縮みが自由です。ひとつの塊として、どのような方向にでも引っ張って形作ることができるのです。カンヌ映画祭の期間中に6日間で撮った作品もあります」

 今作「アスファルト」では、挫折を経験した女優を演じた。映画好きの10代の少年と交流し、女優人生を見つめなおすという設定だ。「これまで光の中にいた女優が、影の中に移動したということ。私に同じ経験はありませんが、人生の中で、何かをやめたり、変えるということは非常に興味深いと思います。この物語のシチュエーションはとても不思議で、若者を通して関係が成立していきます。ふたりの関係というのは、親子でもないし、男女の間の誘惑という形でもない。エロティシズムは感じられますが、それも定番のものとは違う。いろいろな素材で関係を作っていくけれど、未完のままに終わるというところが魅力的だと思います」

 強い芯を持ちつつ、どんな役柄であっても軽やかに登場人物になりきるのがユペールの演技のすごさだ。役作りについて「人物像を作り上げるのに、何か努力をするということは一切ありません」と言い切る。「まず、脚本がよくできていて、セリフも完璧に書けていれば、それだけで十分演じることができます。何も努力もせずに、役がやってくるのです。映画は私にとってとても自然なもので、しいて興味があることと言えば、本物の感情を表現すること。見ている人が、演技だということを忘れるような、本当の感情にいかに迫れるかということです」

 今回10年ぶりの来日となり、長年ファンだという是枝裕和監督と対面を果たした。「これまで2、3回お会いしていて、映画出演の具体的な話になったことはありませんが、私は是枝さんの作品が大好きなんです。日本の映画とフランスの映画はとても近い関係にあるので、本当にいつか日本映画に出てみたいです」とほほ笑んだ。

 「アスファルト」は9月3日から、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国公開。

最終更新:9月2日(金)17時0分

映画.com

TEDカンファレンスのプレゼンテーション動画

斬首動画が何百万回も再生されてしまう理由
昔は街の広場で、現代はYouTubeで。歴史を通じ、公開処刑には必ず人だかりがつきものでした。人が処刑というものを、恐ろしく不快に感じながらも、つい気になって見てしまうのはなぜか。フランシス・ラーソンが人間と公開処刑の歴史、中でも斬首刑に焦点を当てて解説したこのトークは、気分の良い内容ばかりではありませんが、同時に興味をそそること間違いないでしょう。