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エネルギー産業に巻き起こるゲームチェンジ、対応すべき4つのトレンド

スマートジャパン 9月2日(金)15時55分配信

 シーメンスは2016年9月1日、エネルギー産業の革新をテーマに記者説明会を開催した。同社では、世界におけるエネルギー産業の新たなトレンドとして「効率化」「複合的エネルギー」「デジタル化」「持続可能なエネルギー」の4つを挙げ、日本のエネルギー関連企業もこれらに対応していくことが、競争への勝ち残りにつながると説明した。

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●エネルギーバリューチェーンの課題は世界共通

 ドイツのSiemens 取締役風力発電や再生可能エネルギーなどを統括するリサ・デイビス(Lisa Davis)氏は「エネルギーバリューチェーンは世界中で同じような課題を抱えている。経営効率としてより高い効率が求められるようになる他、分散型システム化の進展、再生可能エネルギーの取り込み、クロスオーバー(複合的)エネルギーの活用、そしでデジタル化などである」と述べる。

 低炭素化や再生可能エネルギーの取り込みについては、COP21(気候変動枠組み条約第21回締約国会議)など地球温暖化対策の面からも導入を増やしていかなければならない状況であるのは明らかである。それぞれのコストも下がり続けており、従来の電源である火力発電や原子力発電、水力発電などに対し「電力会社にとっても再生可能エネルギーによる発電量を増やしていかなければならない状況になる」とデイビス氏は指摘する。

 こうした流れの中、エネルギーシステムそのものの分散化が進む。ただ、日本でも同様だが、変動幅の大きな再生可能エネルギーを多く導入しようとすると、系統の問題でエネルギーシステムそのものが不安定になる。そのため「再生可能エネルギーによる発電量を最大限活用し、エネルギーシステムそのものの安定性を確保するには、エネルギーを電力以外の形態で保持するクロスオーバー(複合)化が必要になる」とデイビス氏は述べる。具体的には電力を熱などに変換したり、水素などのガスに変換したり、運動エネルギーなどに変換したりすることである。

 一方で、こうした複雑化したエネルギーシステムを効率的に運用していくためにはICT(情報通信技術)の活用が欠かせない。スマートグリッドなどで示されるように、デマンドレスポンスやバーチャルパワープラント(仮想発電所)などへの取り組みが必須となる。こうしたICTによるエネルギーシステムの管理は、現在注目されているようなIoT(Internet of Things、モノのインターネット)、ビッグデータ分析などの技術と組み合わせ、新たなビジネスモデルやサービス構築へとつなげることができる。

 デイビス氏は「シーメンスでは、データ分析プラットフォーム『Sinalytics』によりガスタービンのデータを取得する遠隔監視を行い、最適な稼働を確保できるようにしている。同様に風力発電などでは最適にブレードごとの稼働を管理することで、出力拡大などにもつなげられている。デジタル化によりエネルギー産業としても新たな付加価値を生み出すことができる」と語る。

 さらに、デジタル化については、ICTベンダーなども積極的な提案を進めているが、シーメンスの強みとしては「グループ内でプロダクトシステム全体をカバーすることができる点が強みである。稼働状況の監視して見つけた不具合を設計や生産側にフィードバックして製品の競争力を高めることなどが可能だ」とデイビス氏は強調する。

 それでは、これらのトレンドが日本にどういう影響を及ぼすのだろうか。

●自由化で進む競争と淘汰の時代

 「効率化」「複合的エネルギー」「デジタル化」「持続可能なエネルギー」の4つの世界のトレンドに対し、日本の電力業界にとっては「効率優先型のグローバルな企業経営」「発電事業のパラダイムシフト」「デジタル技術を武器としたゲームチェンジャーの存在」「市場構造の変化による進化と淘汰」の4つの課題が生まれると、シーメンス 専務執行役員の藤田研一氏は指摘する。

 藤田氏は「グローバルの状況を見ても分かる通り、日本でも電力産業はパラダイムシフトを迎えている。大型の火力投資の8割が非電力会社であるなど、再生可能エネルギーも含めて従来の電力会社以外が発電する比率が増えてきている。さらにデジタル技術を武器としてICTベンダーなどの新たな事業者が電力産業に参入する動きなども増えてきている」と述べる。

●安定を追い求める業態から競争に勝つ効率的な企業へ

 国内の電力会社は従来、地域で寡占化されており、基本的には安定供給を主眼とした企業経営となっていたが、自由化が進むことで「企業間競争に勝つ効率的な企業経営が求められるようになる」と藤田氏は指摘する。

 藤田氏は「海外を見ると、再生可能エネルギーは収益性が高いといえる。再生可能エネルギーを50%以上扱う電力会社では、利益率が15%を超えるところもあるが、比率が10%以下の企業は10%以下のところばかりである。日本はこの中間程度の位置付けだが利益率は10%以下だ。発電セクターの利益構造が変化しているといえる。一方で、日本で収益力が高まらない理由として再生可能エネルギーの発電コストが海外に比べて高すぎるという点がある。従来型の電力がグローバル平均に対し約1.5~2倍なのに対し、再生可能エネルギーでは2.0~2.5倍になっている。まだまだコスト削減する余地があるといえる」と語る。

●デジタル技術を駆使した新たな管理

 さらにIoTなどのセンサーデータの取得と、データ分析基盤の活用により、従来は実現できなかったさまざまなサービス展開が可能となる。電力事業において、既にシーメンスでは、風力タービンで1万基、ガスタービンや蒸気タービンで700基の遠隔監視サービスを導入。これにより、故障やトラブルが起きた際も、85%は遠隔解析で問題解決ができるようになった他、98%の問題を未然に解決することができたという。

 藤田氏は「電力における産業用データ分析の流れは、遠隔診断、予知保全、最適化、バーチャル発電所の流れで進化していくと見られている。既に遠隔監視についてはスタンダード化しており、これらを基にした新たな参入事業者なども生まれつつある。こうしたトレンドに積極的に対応していくことが必要だ」と国内事業者への警鐘を鳴らしている。

最終更新:9月2日(金)15時55分

スマートジャパン