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桜井日銀審議委員インタビューの一問一答

ロイター 9月2日(金)13時27分配信

[東京 2日 ロイター] - 日銀の桜井真審議委員はロイターとの単独インタビューで、9月の金融政策決定会合で議論するマイナス金利付き量的・質的金融緩和(QQE)の総括的な検証に関し、現行のマネタリーベース目標を含めた量・質・金利の3つの次元による金融緩和政策に限界はないと述べ、今後も現行の枠組みのもとで緩和政策を継続していく考えを示した。3次元の緩和手段の技術的な工夫や、経済状況に応じた比重の変更が必要になる可能性に触れた。

マイナス金利政策導入以降の利回り曲線の急速な平たん化は、予想以上だったと指摘。政策検証で議論すると述べるとともに、利回り曲線の形状を変化させることも政策の選択肢と語った。インタビューは1日に行った。

━━量的・質的金融緩和(QQE)の導入から3年余りが経過した。この間、QQE拡大やマイナス金利の導入にもかかわらず、2%の物価安定目標は達成できていない。

「2014年夏場以降に原油価格が大きく下落し、今年に入って世界経済の不透明感の強まりを背景に、日本の企業、消費者のマインドが慎重化した。現実の物価がほぼ横ばいとなる中で、過去の物価に影響され、予想インフレ率が下がってしまったことが一番大きな原因だ。物価情勢は現在、その評価が非常に難しい状態にあると認識している」

「エネルギーと生鮮食品を除いた消費者物価はプラスであり、日本経済をデフレではない状態にした成果は大きいと思う。ただ、2%目標には道半ばという状況だ」

━━4月の就任会見で金融政策は乱発すべきでないと発言。7月会合で追加緩和に賛成した理由は。

「金融政策は実体経済への波及が間接的であり、慎重に効果を見極めることが必要だ。緊急なことがない限り、政策効果を見極めながらじっくり判断していくべきとの考えは変わっていない。7月の追加緩和に賛成したのは、英国のEU(欧州連合)離脱決定後でリスクが長引きそうだということで緊急的に対応した方が良いと判断した」

━━7月に決めたETF増額は株式市場の価格形成を歪めるなどの批判がある。

「いろいろなリスクを伴うため、十分考慮して対応した。今のところ特段大きな問題はないと判断している。ETF買い入れは株価上昇圧力になるが、今の程度であれば、(株価上昇圧力は)それほど大きくないのではないか」

━━9月会合で行う金融政策の総括的な検証のポイントと、3つの次元の金融緩和策の効果と影響。

「2%の物価目標はそのまま維持すべきと考えている。一番大切なのは、この3年半のレビュー。目標をなぜ実現できていないかを予断を持たず分析し、3つの次元の緩和策が、どのような効果をもたらしてきたのか、情報の分析を含めて政策委員が共有する。3つの手段を一つひとつ丁寧に検証したうえで、せっかく揃っている手段を維持して、どのように有効に活用していくかを考える。それが次の政策展開につながっていく」

━━自身の検証の方向性を踏まえ、マネタリーベース目標を含めた3次元の金融緩和策の枠組みを見直す可能性は。

「マネタリーベース目標に現段階で限界がある、問題があるとは感じておらず、目標を取り下げる必要はない。国債買い入れが限界に近づいているとも思っていない。緩和手段も量・質・金利の3つの次元の緩和策を今後も続けていく。少なくとも金融緩和政策が後退することはあり得ない。マイナス金利は導入したばかりであり、まだ深掘りできる」

「ただ、技術的な面では、さまざまな工夫があるかもしれないし、3つの手段のウエートを変えることはあり得る。経済の状況に応じてバランス良く使っていくということだと思う」

━━マイナス金利政策導入後の急速な利回り曲線の平たん化の効果と影響。

「国債だけでなく貸出金利も下がり、住宅投資が増えるなど実体経済への効果も出ている。長期の起債もかなり増えている。金融機関の収益などに影響があり、さまざまな意見があるのは承知しているが、現時点で特段、金融仲介機能に問題が生じているとは思っていない」

「イールドカーブの形状をどう変えていくかも、可能性としては政策の選択肢に入る。検証作業の中でいろいろな議論が出てくるだろう。イールドカーブが予想を超えて下がったのは事実である。それによって効果はあったが、いろいろなコストも出てきた。それも踏まえて今後の政策の組み合わせを考えていきたい」

「イールドカーブのフラット化についても、本来、教科書的なイールドカーブの姿はあるわけであり、それを含めていろいろなことを考えていくということだと思う」

━━検証を踏まえた9月会合での追加緩和の可能性は。

「9月会合以降、マイナス金利政策の効果が出てきているかは、政策判断の1つの基準になる。手段については量・質・金利がそろっており、最適と思われる組み合わせ、あるいはいずれを選択するか考える」

━━政府が大規模な経済対策を打ち出す中で、日銀は7月に追加緩和に踏み切った。政府と日銀の連携のあり方をどう考えるか。

「金融が十分に緩和されている状態で財政を拡大すれば、財政の効果は最大になるので相乗効果は非常に大きい。その意味では、今回は双方の方向性が一致しており、十分に効果が期待できる」

━━財政と金融を一体的に運営するヘリコプターマネーの是非について。

「日本では法律上不可能であり、先進国で実施している国はない。財政も金融も独立した手段を持っており、それぞれに活用すべき局面がある。ヘリコプターマネーは常に同体で同一方向に動くことになり、それはむしろ危険だ」

━━円高が経済・物価に与える影響と下振れた場合の政策対応の必要性は。

「円高になれば輸入価格が下がるので、他の条件が変わらなければ、当然、物価にマイナスの影響が出る。さまざまな事情で2%の物価目標が実現できないということになれば政策対応をとるが、少なくとも為替を目的にした金融政策はできない、ということははっきりとさせておきたい」

━━新たな緩和手段としての外債購入の是非について。

「今の状況だとやるべきではないし、外債という選択肢はない。外債購入も為替介入と同じ効果を持つと見られ、それは財務省の担当であり、われわれの独自の判断ではできない」

(伊藤純夫 木原麗花 竹本能文 編集:田巻一彦)

最終更新:9月2日(金)13時27分

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